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露わけ衣

 結婚話が出たのもこの時期だった。

修学旅行ですら関西を出たことが無い彼女を見初めたのは、東京育ちで横須賀の海軍航空隊に所属するパイロット、人呼んで『空の宮様』だった。

二人は再従兄妹はとこ同士で、相手は彼女の兄と親しかった。

尤も中学校入学と同時に上京した兄と異なり、彼女は女学校卒業後の4月まで京都育ちで、関西を出たことはただの1度も無かった。

明朗快活な青年だった。

航空機だけでなく、映画に写真、レコード鑑賞と趣味が豊富で話も合った。

度々手紙でやり取りを交わすようになった。

直接顔を合わせることは、海軍水雷学校から砲術学校に通い、航空術の学生として横須賀に勤めている彼と京都の女学生だった彼女では難しいことだった。

いずれにしても、当時では珍しい完全自由恋愛だ。
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