露わけ衣
「だいぶ大きくなったようだな。まだ動かないのか?」
東京の騎兵第1連隊付で、この8月に陸軍中尉に昇進した兄は東北旅行の帰路、友人を連れて別邸を訪ねてきた。
年齢が近い兄妹とあって、京都にいた幼少期は喧嘩をすることもあったが、すっかり穏やかになった。
「今か今かと気を揉んで、わたくしばかり焦っているところですわ」
「そうなのか。産まれたらうちの娘のよい遊び相手になるだろうなあ」
「そうですわね、もし女の子だったら同級生、男の子だったら、美智子 ちゃんが将来うちのお嫁さんにおなりになるかも…」
「いや! 絶対に美智子はやらん。だいいち血が近すぎる」
「まあ、お兄さまったら気の早いこと」
「気が早いのはさあさんも同じだろう」
東京の騎兵第1連隊付で、この8月に陸軍中尉に昇進した兄は東北旅行の帰路、友人を連れて別邸を訪ねてきた。
年齢が近い兄妹とあって、京都にいた幼少期は喧嘩をすることもあったが、すっかり穏やかになった。
「今か今かと気を揉んで、わたくしばかり焦っているところですわ」
「そうなのか。産まれたらうちの娘のよい遊び相手になるだろうなあ」
「そうですわね、もし女の子だったら同級生、男の子だったら、
「いや! 絶対に美智子はやらん。だいいち血が近すぎる」
「まあ、お兄さまったら気の早いこと」
「気が早いのはさあさんも同じだろう」