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 奕が手習いに熱心に取り組むようになったのは、病に倒れた妻と顔を合わせる時間が少なくなり、竹簡に用件を書くようになったからだそうだ。

妻はそれを見るたび「じょうずねえ」と言って手離さず、飽きずに眺めていた。

私には反応していることが分かったが、幼子には分からず、肩を落として自分の居室へ戻ってしまった。

「父上、今日は僕の部屋で寝ます」

 日が暮れて、私が許に戻って2、3日の間、屋敷の1番奥に詰めていた使用人が奕の居室の近くに戻った。

文字通り、室内には私と妻の2人が残された。

美帆は目を開いたり瞑ったりを繰り返していた。

私は、目が開いている時を見計らって話しかけていた。

「今度の子は大層な暴れん坊らしい。やんちゃな子なんだろうね。一体誰に似たんだか…ねえ、美帆?」

 腹の子は勢い余って手足の形が浮き出る程に動き回っていた。

時折頷いたり、口を動かしていたが、それが声になることは無かった。

満月の夜だった。

目を瞑って半刻は経っていたから、既に眠ったものと判断して、妻の衣の上に私の衣も被せ、戸を開けた。

月明かりが射し込んできて、幻想的な景色だった。

「月がきれいだね」
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