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鈴原と福井さん

 俺は地域の2番手の高校から早稲田大学政治経済学部政治学科に進学し、中学校の社会科と高校の地歴公民の教員免許を取り、卒業後は横浜市の公立中学校の教員をしている。

 社会人3年目の5月というのは中学校卒業後10年目で、成人式以来のクラス会が催された。

急用でのキャンセルと留学中、遠方に住んでいる元クラスメイトを除いた30人が集まった。

36人クラスだったから、なかなかの出席率である。

「あれ? 福井と福本の間、なんで空いているんだ?」

「福井さん、子ども連れてくるんだって」

「へー、福井、結婚したのか」

 結婚式の招待状は届かなかったよなあ、と元クラスメイトは口々に言う。

そりゃあ、招待客は多いだろうから、中学校関連の友人で呼ばれるとしたら、百合子と特に仲が良かった浦野さんと高尾さん、それに留学中で欠席している井筒さんくらいだろう。

 このクラス会は担任の結婚を祝うもので、男子は背広を着こなし、女子は華麗にドレスアップしていた。

百合子は青地にハスの花が刺繍されたチャイナドレス、麻由美ちゃんはピンクの詰襟のワンピースを着ていた。

「マミのこれ、私が20年以上前にお姉ちゃんのお下がりで着ていたの」

 聞けば福井家は曾祖父の代で日本に帰化したようで、その流れで現在でも正装といえば中国の服装らしい。

クラス会には韓国人の同級生が着ていたが、彼女はチマチョゴリではなく着なれない振袖だった。

出席者が全員集まると、新婚ほやほやの担任によって出席確認と、生徒の近況報告が始まった。

福井百合子、と呼ばれると、彼女は返事をしてこう言った。

「大学生の頃から高田馬場に住んでいて、今はホステスをしながら娘を育てています」
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