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セレスティナとエミ

 それから1ヶ月半の間、僕はどのように娘と暮らしていたか覚えていない。

職場の託児所の利用が可能になると、すぐにそちらに入れて、日中は面倒を見て貰った。

自然と、『ゆき』からも足が遠退いた。

決して良いとはいえない環境だろうに、エミは我が道を歩んでいた。

生後半年の頃、裁判所に彼女の姓の変更を申し立て、僕の戸籍に入籍した。

この手続きの際に、僕は強制認知という制度を知った。

子どもの認知を拒む父親や、死亡した父親に裁判によって認知を認めさせる制度だ。

この話をするつもりで、退社後にエミを連れて高田馬場に向かった。

季節は冬になっていた。

「今認知してもろうても…戸籍にマキさんの名前が書かれるだけで、いいことなかろうもん」

「何を言っているんだ、福井さん。確かに養育費は期待できないけれど、遺産は…」

「もう相続しちょーと?」

 それに、と福井さんは続けた。

「手続きするのも、人に頼むだけの余裕ば無かけん、自分でやる体力も…」

 彼女はこの時、酸素ボンベを背負って店に立っていた。

店番の時間も減り、寝たり起きたりの暮らしだというのは見てとれた。

「近いうちに、ここ、出るつもり」

「行く当てはあるのか?」

「従姉が駒込におるけん…。ほら、前、文化祭で会ったやろ。山手線で近いし、たまに会ってるの」

 その言葉通り、福井さんは年明けに麻由美と共に駒込に引越し、従姉の小橋さん夫妻の下に身を寄せていた。

『ゆき』は再びセレスティナ1人で切り盛りされるようになると思いきや、福井さんは週1回、通いの店員として働き続けていた。
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