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セレスティナとエミ

「…マミの従妹だけん、面倒見たい思うばってん、これから入院するいう時に…ごめん、二つ返事で、いう訳にはいかんわ」

 確かに急にハイあなたの子どもです、育ててくださいと言われても無茶なことだ──福井さんはそう言いながら、押し入れの奥から紙おむつを取り出した。

麻由美の時に買い込みすぎた分がまだ残っていたということで、新生児用の物だった。

泣き出したエミのそれを手際よく換える様子は、僕も見習わねばならないと感じた。

そして彼女は台所に行き、粉ミルクが入った缶を取り出した。

「期限は…切れちょらんな」

 福井さんは手早くミルクを作ったと思うと、哺乳瓶を僕に手渡した。

「こんな見ず知らずのおばさんより、お父さんのほうがまだよかやろ」

 福井さんはまたグラス1杯の水を飲みながら、ソファーの背に凭れかかった。

哺乳瓶を受け取った時に触れた指先は、初夏とは名ばかりの暑苦しい日だというのに氷のように冷たかった。

「託児所…多分、2ヶ月になったら使えるけん…。あと、エミちゃん、半月じゃ外に出しすぎたらいけんよ。普通は床上げも済んどらんもん」

「…分かった」

 マリちゃんの葬儀はこの2日後のことだった。

福井さんからは香典を手渡され、参列者は喪主の従兄と僕と娘のわずか3人だった。

兄の葬儀よりもしめやかに執り行われた。
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