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福井さんとマリちゃん

 あれよあれよと粘液を採取され、保育器の中で眠る子どもからもDNAを得て鑑定にかけられている間、従兄は睨み付けるような表情で問いかけてきた。

「どうしてお前のDNAを調べるんだ」

「…心当たりがあって」

「は…?」

 僕より4~5センチ身長が低い彼は、下から覗き込むように睨み付けてきた。

陳腐な少女漫画では小柄な女子の上目遣いにぐらつく男子が描かれるが、四十男の上目遣いはちっともときめかない。

「今月の半ばに生まれたなら、要するにセッ──関係があったのは去年の夏ごろですよね」

「まあ、そうだな」

「僕、その頃ロンドンに出張していて、ウィンザーに泊めてもらったんです。その時の子だったら──」

 どうして僕らは何も知らなかったのだろう。

もし僕の子どもだとはっきりしていれば、連絡の一つでもあっただろうに。

本人はまさか産後2週間も経たずに迎えが来るなど想定していなかっただろうが、それでも「実は子どもがいる」となれば僕らが俄に騒然としたに違いない。
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