最近、お嬢様の夢見が悪いらしい。

グロテスクな内容や、
リアルに悲しみや恐怖を伴うものまで。

まさに悪夢と言っていい。

想像力が豊かな方なので、
夢も生々しいものになるのだろう。

嫌な夢を見た、とオレの胸に飛び込んでくる姿は愛らしくて
たまらないが、お嬢様にはいつでも健やかに休んで欲しい。


悪夢を見る原因としては、身体の一部に圧迫があること。

たとえば、頭まで布団をかぶっている。

手が身体の下敷きになっている、または身体の上に乗っている
など。手は以外に重たいものだ。

枕と頭がフィットしていないなど、寝具の問題である場合も。

お嬢様は寝相が悪いので、眠っている間に枕から頭がズレることもしょっちゅうだ。

オレが添い寝をしていない時は、身体がベッドの上でおかしな
体勢になっているのかもしれない。

この前、起こしに行ったときなどは特にひどかった。

頭と足が逆になっていたのだ。
つまり180℃回転していたと……。

掛け布団はベッドから完全にズリ落ちていた。
驚きを通り越して笑ってしまった。


体外的な原因以外に、心理的なものでも悪夢は見るようだ。

無意識下でのストレス、抑圧。
眠る前に嫌なことを考えたり、見たり聞いたりする。

過去世の記憶が再生されている、記憶を整理するためなどの興味深い説もある。

さっそく色々な対処法を考えたので、お嬢様に提案してみよう。


まず今夜からしばらくの間、お嬢様にはオレの腕の中で休んで
もらう。これだけは譲れない。

そして、お嬢様がおかしな体勢にならないよう一晩中チェック
する。呼吸の乱れがないかどうかなど。

気づかれないよう、こっそりキスもする。

リラックスできるアロマを焚き、
ダウンライトの位置や明るさも変えてみる。

ベッドの中で脚を浮かすなど軽い筋トレをする。


オレの指示で筋トレをがんばるお嬢様……
想像するだけでもう可愛いに決まっている。

ほんの少し身体を動かすだけでも、呼吸が深くなる。

良い睡眠のためだから、
お嬢様には面倒でも耐えてもらうしかない。

オレとしては、悪夢に対処するためという大義名分のもと、
しばらくふたりで朝を迎えられるのが嬉しい。