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執事の手記

フルーツに嫉妬

2023/05/17 12:30
今朝はモーニングとして、
オレンジジュースとフルーツを用意した。

お嬢様が果物を欲しがるときは、
ビタミン不足の可能性がある。

新鮮な果物を市場で買い求めた。

オレンジジュースはオレンジに加え
みかんとレモンもブレンドし、
甘さと酸味がバランスよくなるよう仕上げた。

フルーツは、イチゴとキウイと
パイナップルを彩りよく盛りつける。

オレも相席するよう命じられ
テーブルを共にできた。


オレンジジュースを美味しそうに飲むお嬢様の喉。

ゴクゴクと動くさまを見つめていると、
よくわからない感情に囚われた。

今すぐオレンジジュースになり、
お嬢様のなめらかな喉を滑り落ちたい。

体内に入り、吸収され、お嬢様の一部になりたい。
そして肌や髪の艶を担いたい。


イチゴを食べているときも、
唇に釘づけになってしまった。

もちろん、オレがフォークで
お嬢様にアーンして食べさせた。

ゆっくり近づけていくと、同じくイチゴのような
みずみずしい唇がうすく開いた。

イチゴと唇が触れ合った瞬間、オレ自身がお嬢様とキスしているような錯覚に陥った。

それから、可愛らしく咀嚼し飲み込むのを見て……。

今すぐイチゴになり、お嬢様にキスされ
噛み砕かれ飲み込まれたい、と思った。

彼女の一部になりたいと強く願った。

そんな想いも知らずに、
お嬢様はフルーツを堪能し満足したようだった。


今度はリンゴを焼き、シナモンをかけて出してみよう。

リンゴならば咀嚼に時間がかかる。
その間に妄想を膨らませる。

オレがリンゴになりお嬢様の唾液にまみれ
溶かされ、やがて融合し一体化する。

一体化し、お嬢様の内部を駆けめぐる。
まあフルーツでなくともよいのだが。

肉体を持ってしまったがゆえの、
愛する人との物理的分離がもどかしい。

そんなわけで、今朝お嬢様を見送るときに
いつもより深く長くキスしてしまった。

時間に遅れると困っていたようだが離さなかった。

きっと、帰宅後に叱られるのだろう。

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