マイブームというより一種の遊びに近い。
朝、目覚めてお嬢様の部屋のカーテンを開ける。

差し込んでくる光に、まぶしそうな顔で「うぅーん」と呟くお嬢様の目が完全に覚めるまでのあいだ……。

何回キスできるか、
という遊びがオレの中で流行っている。

あとで叱られないために
極めて軽いキスに留めておく。

触れるか触れないか程度のものを
頭に顔に、手にもする。今朝は17回できた。


回数は、天気によって
または前日のお嬢様の疲労具合による。

天気がグズついている日は、
光が弱いためお嬢様の目もなかなか覚めない。

疲れているときは、さらに目覚めが遅い。

だからオレにとっては天気が悪く、かつお嬢様の疲労が蓄積されている日が狙い目だ。

この遊びを何度か繰り返していたら、さすがにおかしいと気づいたのか、お嬢様から指摘された。

答えはもちろん無表情でとぼけてかわした。


だが、どんなに取り繕ってもおそらくお嬢様には、オレの胸の内などお見通しなのだろう。

少しの沈黙と微笑みのあと、オレの髪を撫でるお嬢様。

その姿はまさにイタズラっ子に「すべてわかっていますよ」と、頭を撫でる母親のようであったから。

いや、マリア様と言ってもいい。

観音様、菩薩様……いずれにしても
オレにとって彼女は女神だ。

お嬢様が黙認してくれるなら、
この遊びをもっと極めていきたい。

明日の朝は、何回キスできるだろう？