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執事の手記

小さな同志

2023/08/16 11:00
朝から、お嬢様が可愛らしくオレに泣きついてきた。

眠っているあいだに蚊に刺されてしまったらしい。
痒みがひどいとの訴えに、刺された箇所を確認した。

内ももの柔らかいところが何ヶ所にもわたり
広範囲で腫れていた。しかも両側に。

一瞬、怒りと嫉妬で目が眩みそうになった。

オレが一番お気に入りの場所を勝手に喰い荒らされた怒り。

勝手にお嬢様の内部に侵入し血液を奪っていった不届きものが、オレが絶対にできないことを難なくやってのけたという嫉妬。

オレだってお嬢様の柔らかくすべすべな肌から血を啜りたい。

きっと美味しい違いない。お嬢様の血液が美味しすぎるから、
蚊はたらふく飲んでいったのだ。


オレには普段から、お嬢様の内ももに挟まれて窒息死したい、という願望があった。

だから桃色に腫れあがった無数の痕を見て許せないと思った。

許さないし、見つけ次第この手で容赦なく罰を下してやる。
オレだけのお嬢様なのに……!!

よほど怖い顔をしていたのか、お嬢様が眉間のあたりに手を触れてきた。我に返り、痒み止めを丁寧に塗って処置した。


お嬢様が外出し邸を掃除していると壁にとまっている蚊を
発見した。案の定、馬鹿でかいやつだった。

あんなに血を飲むやつなのだから、普通の大きさではないだろうと予測していた。

どうしてやろうかと睨んでいるうちに、オレの中で奇妙な想いが湧きあがってきた。

もしかするとこいつは同志なのではないか?

お嬢様の柔らかな内ももを愛し、しこたま血液を飲みたいという同じ気持ちを持った者。

そう考えると憐れになってきた。
どのみちこいつは近いうちに死ぬ。
おそらくもう二度とお嬢様の肌に触れることすらできない。

結局オレは、窓からそいつを逃した。

お嬢様の内ももを愛でるたびに、この小さな同志のことを
思い出すのだろう。

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