どうして静かに観れないの?
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どうやら、初めて利用する客のためのウエルカムサービスらしい。川島が再びお礼をいって受け取った。
お嬢様もお礼をいうと、コアラはまた親指をグッと立てた。
さらに両手でハートの形をつくると走り去っていった。
あのハートマークはなんだったのだろう。
自分と川島がいい感じの恋人同士に見えたのだろうか。
そうなら嬉しい、とお嬢様は考えた。
映画はもうオープニングに入っていた。
さっきコアラが一緒にもってきた、貸し出し用のスピーカーから音が聞こえてくる。
ワイヤレスで小型ながら迫力のある重低音が鳴っている。お嬢様がぼんやりスクリーンを見ていると、川島が声をかけてきた。
「お嬢様、アーン」
やさしい目でポテトチップスを摘まんで差し出してくる。
可愛い、と思いながら首を横に振った。
「今ポテチ食べるの怖い」
なぜ?といった顔で川島が見てくる。
「もう夕食済んだあとだし、これ以上食べたら太るから。身体のラインが崩れて川島に嫌われたくない。せっかくいただいたものなのに悪いけど……」
うつむきがちにいうと、川島がスピーカーの音量を下げた。身体ごとお嬢様の方へと向ける。
両手でお嬢様の手を取った。
宝物を扱うみたいな仕草だった。
「お嬢様、わたしはいつでも今のお嬢様を一番に愛しています。もし、お嬢様が太っていたとしても、それが今のお嬢様ならやはり一番に愛します」
川島の手に力が込められる。
「ですから、お嬢様も今のご自分を慈しみ愛してあげてください。オレのためじゃなく、今のお嬢様のお心を大切にしてください」
ね?と諭すように目で訴えてきた。
自分のことを、オレといってしまったことに気づいていない。
目が真剣だった。
お嬢様は、なにか忘れかけていたものを川島に気づかせてもらえたようで、不思議な気持ちになった。
川島に愛されたくて、褒めてもらいたくて、いつの間にか自分を律しすぎていたのかもしれない。
そのせいで自分の本心にフタをして、コアラと川島の心尽くしも無にするところだった。
お嬢様は思い直した。
「うん、わかった。ありがとう川島。じゃあ、もう一回食べさせてくれる?」
いうと、川島が限りなくやさしい顔をした。
慈愛に満ちた目だった。
「はい、お嬢様。アーン」
差し出されたポテトチップスを、パクっと口に入れようとした。瞬間、川島が手を引っ込めた。
お嬢様が空気を食べるのを見て、川島がいたずらっ子みたいにニヤリと笑った。
「もー!なにすんの。ちゃんと食べさせてよ、川島の馬鹿」
頬をふくらませるお嬢様を、茶目っ気たっぷりの目で見つめている。口元に手をやりながらクックッと笑う川島。
お嬢様はその笑顔に感謝した。
淡々と過ぎていく日々の生活の中で、いつのまにか抜け落ちてしまった大切なことを、川島はいつも気づかせてくれる。
決して頭から押し付けたりせず、心からの愛情をもって気づかせてくれる。
お嬢様は怒ったふりをしながら、心の中で何度も川島にありがとうと大すきをいった。
それから引きつづきゾンビ映画を見たけれど、川島が邪魔をしてくるので少しも集中できなかった。
「オレがゾンビになったらどうしますか。殺しますか?」
「お嬢様がゾンビになったら、オレの部屋に閉じ込めて一生お世話しますね」
「一度、ゾンビのお嬢様にバリバリ喰われてみたいです」
ひっきりなしに話しかけてくるわ、隙あらば手を握ったり頭を撫でたりしてくる。
最後の方は調子にのって、ポテトチップスを口移しで食べさせようとしてきた。
家で映画を観ているときはこんな風じゃないのに、今日はどうしたのだろう。
やはり明日はずっと一緒にいられるから、川島なりにはしゃいでいるのかもしれない。
そんな川島が可愛い。
お嬢様は、もう映画に集中するのを諦めて川島に付き合った。
映画が終わると夜はすっかり更けていた。
帰りの車の中でウトウトとしていたら、いつの間にか川島がゆっくり走ってくれているのに気がついた。
いつブレーキを踏んでいるのかわからないほど、やさしく丁寧な運転の仕方に、いつもの穏やかな川島を感じる。
お嬢様は安心して目を閉じると、明日も一日中川島のやさしさに触れていたい、と思った。
お嬢様もお礼をいうと、コアラはまた親指をグッと立てた。
さらに両手でハートの形をつくると走り去っていった。
あのハートマークはなんだったのだろう。
自分と川島がいい感じの恋人同士に見えたのだろうか。
そうなら嬉しい、とお嬢様は考えた。
映画はもうオープニングに入っていた。
さっきコアラが一緒にもってきた、貸し出し用のスピーカーから音が聞こえてくる。
ワイヤレスで小型ながら迫力のある重低音が鳴っている。お嬢様がぼんやりスクリーンを見ていると、川島が声をかけてきた。
「お嬢様、アーン」
やさしい目でポテトチップスを摘まんで差し出してくる。
可愛い、と思いながら首を横に振った。
「今ポテチ食べるの怖い」
なぜ?といった顔で川島が見てくる。
「もう夕食済んだあとだし、これ以上食べたら太るから。身体のラインが崩れて川島に嫌われたくない。せっかくいただいたものなのに悪いけど……」
うつむきがちにいうと、川島がスピーカーの音量を下げた。身体ごとお嬢様の方へと向ける。
両手でお嬢様の手を取った。
宝物を扱うみたいな仕草だった。
「お嬢様、わたしはいつでも今のお嬢様を一番に愛しています。もし、お嬢様が太っていたとしても、それが今のお嬢様ならやはり一番に愛します」
川島の手に力が込められる。
「ですから、お嬢様も今のご自分を慈しみ愛してあげてください。オレのためじゃなく、今のお嬢様のお心を大切にしてください」
ね?と諭すように目で訴えてきた。
自分のことを、オレといってしまったことに気づいていない。
目が真剣だった。
お嬢様は、なにか忘れかけていたものを川島に気づかせてもらえたようで、不思議な気持ちになった。
川島に愛されたくて、褒めてもらいたくて、いつの間にか自分を律しすぎていたのかもしれない。
そのせいで自分の本心にフタをして、コアラと川島の心尽くしも無にするところだった。
お嬢様は思い直した。
「うん、わかった。ありがとう川島。じゃあ、もう一回食べさせてくれる?」
いうと、川島が限りなくやさしい顔をした。
慈愛に満ちた目だった。
「はい、お嬢様。アーン」
差し出されたポテトチップスを、パクっと口に入れようとした。瞬間、川島が手を引っ込めた。
お嬢様が空気を食べるのを見て、川島がいたずらっ子みたいにニヤリと笑った。
「もー!なにすんの。ちゃんと食べさせてよ、川島の馬鹿」
頬をふくらませるお嬢様を、茶目っ気たっぷりの目で見つめている。口元に手をやりながらクックッと笑う川島。
お嬢様はその笑顔に感謝した。
淡々と過ぎていく日々の生活の中で、いつのまにか抜け落ちてしまった大切なことを、川島はいつも気づかせてくれる。
決して頭から押し付けたりせず、心からの愛情をもって気づかせてくれる。
お嬢様は怒ったふりをしながら、心の中で何度も川島にありがとうと大すきをいった。
それから引きつづきゾンビ映画を見たけれど、川島が邪魔をしてくるので少しも集中できなかった。
「オレがゾンビになったらどうしますか。殺しますか?」
「お嬢様がゾンビになったら、オレの部屋に閉じ込めて一生お世話しますね」
「一度、ゾンビのお嬢様にバリバリ喰われてみたいです」
ひっきりなしに話しかけてくるわ、隙あらば手を握ったり頭を撫でたりしてくる。
最後の方は調子にのって、ポテトチップスを口移しで食べさせようとしてきた。
家で映画を観ているときはこんな風じゃないのに、今日はどうしたのだろう。
やはり明日はずっと一緒にいられるから、川島なりにはしゃいでいるのかもしれない。
そんな川島が可愛い。
お嬢様は、もう映画に集中するのを諦めて川島に付き合った。
映画が終わると夜はすっかり更けていた。
帰りの車の中でウトウトとしていたら、いつの間にか川島がゆっくり走ってくれているのに気がついた。
いつブレーキを踏んでいるのかわからないほど、やさしく丁寧な運転の仕方に、いつもの穏やかな川島を感じる。
お嬢様は安心して目を閉じると、明日も一日中川島のやさしさに触れていたい、と思った。
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