頭の中身が知りたくて
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お嬢様が急に、焼肉を食べに行きたいといい出した。
お嬢様は普段あまり肉を食べない。だから焼肉店など行ってもつまらないのではないか、と思いそう答えた。
「川島がお肉食べてるとこ見たいの。私もちゃんと食べるから。1、2枚くらいは。」
それではほとんどオレが肉を食べることになるんじゃ……。
ああ、お嬢様はそれが見たいのか。
でも、なぜ?――理由がわからない。
「店でなく、この家で焼肉をしたらよろしいのでは?そうすればお嬢様のおすきな、お野菜もお魚もいろいろとご用意できますし」
店へ行けば食べるものが限定される。おそらく焼肉店では牛肉以外のメニューはさほど充実していないだろう。
お嬢様の栄養が偏ってしまう。それは絶対にダメだ。
お嬢様の目的はオレが肉を食べるのを見ることなのだから、わざわざ店に行く必要はない。
それに家の方がゆっくりできるし、お嬢様も楽しめるのではないかと思い、そう提案した。
お嬢様がうつむきながらいう。
「うん……いいよ、それでも。だけど一度してみたかったの、川島と焼肉デート。私が普段お肉食べないから、川島が気を遣って今までそういうお店に行ったことなかったでしょ?だから」
そうだったのか。お嬢様はオレとデートしたかったのか。
顔が勝手にニヤけてしまう。
気づかれる前にお嬢様を抱きしめて誤魔化した。
「別に気を遣っていたわけではないんですが……ではこうしましょう。屋上のテラスでバーベキューするんです。いつもの食事と違ってデートっぽくなりませんか?」
お嬢様が顔を上げる。
「うん、なんか楽しそう。用意するの手伝わせてくれる?」
子供みたいに目を輝かせるお嬢様に軽くうなずいた。
力が要ること、危ない作業はもちろんさせない。
さっそく頭の中で段取りを考えると準備に取りかかった。
ふたりで車に乗り込み食材の買い出しをする。
ついでにアウトドア専門店に寄り、道具をそろえた。
オレもお嬢様もインドア派なので、こうした店に立ち寄ることはあまりない。だから目に入るものが新鮮で面白かった。
「これってなにに使うのかな。川島わかる?」
「見当もつきませんね」
ふたりで道具をいろいろ見て回って楽しんだ。
*
家に戻り、集中して作業したせいか支度はすぐに整った。
お嬢様もオレが出す指示にテキパキと動いてくれた。
さすがオレのお嬢様だ。
余計なお喋りもせず動きに無駄がない。
オレは女性のお喋りが苦手だった。
かしましいその談笑を聞いていると頭が痛くなってくる。
特にいつでもどこでも開かれる、井戸端会議というやつの意味がわからない。もちろん、すべての女性がお喋りだと思っているわけではないが。
以前、お嬢様にそれを話してみたことがある。
すると、女性は一日に二万語以上を話さないとストレスが溜まる生き物なのだ、と教えてくれた。
だが、その女性にしては珍しくお嬢様は口数が少ない。
そんな寡黙なところも、オレにとってはお嬢様の数ある魅力のひとつだった。
かいがいしく手伝う姿を眺めながら、考えにふけっていると声をかけられた。
「ねえ、ちょっと休憩しない?」
「そうですね。なにかお飲み物でもお持ちしましょうか」
「ありがとう。私は川島と同じのでいいから」
ということはコーヒーでいいらしい。
テラスに置いてあるカフェテーブルにつき、ふたりで淹れたてのコーヒーを飲んだ。
「なんかね、用意してたら気分だけでお腹いっぱいになってきちゃった。でも川島がお肉食べてるとこ見たいしね」
そうだった。
お嬢様は、なぜそんなにもオレが肉を食べる姿を見たがるのだろう。なんとなく今訊いても答えてくれない気がした。
理由はなんにせよ、お嬢様がそれで満足してくれるなら、どんなことにでもオレは応える。
自分の存在はお嬢様のためだけにあるのだから。
それ以外にはなにもない。
いい感じに空が夕暮れてきた。
キャンドルライトに灯を入れて食材を焼く準備に入る。
お嬢様に手伝うといわれたが断った。
火の側へは近づかせない。
お嬢様が万一、やけどなんかしたらオレの精神がもたない。
以前、お嬢様がスライサーで指を切ったときも卒倒しそうになったほどだ。
「川島の頑固者」
調理に関しては小さい子に頼むくらいの手伝いしかさせないオレを、お嬢様が非難する。
その顔も仕草もオレの目にはたまらなく可愛く映る。
もしかすると、そんな姿が見たくて手伝いを断っている部分もあるかもしれない。
焼き網に肉と野菜をバランスよく並べながら思った。
少し焦げた香ばしい匂いがしてきたところで皿に盛る。
今日は特に、新鮮でいい肉や野菜が手に入った。
その素材の旨味を味わうために濃いタレはつけない。
代わりにレモン汁と岩塩を用意した。
それに、ごま油で和えた白ネギの細切りも。
箸を割ろうとするお嬢様より先にオレはすかさず動いた。
「はい、お嬢様。アーンしてください」
ネギをくるんだ肉をお嬢様の口へ運ぶ。
一瞬、恥ずかしそうにしてからお嬢様が口をあける。
ああ、可愛らしい。ひな鳥みたいだ。
肉を口に入れると、お嬢様の目が輝いた。
なにかいいたそうだったが、そのままきちんと咀嚼 し、口の中が空になるのを待ってからいった。
「美味しい!全然お肉の臭みがない。あと柔らかい。レモンとネギのおかげでさっぱりしてる。美味しい」
美味しいを繰りかえすお嬢様に微笑むと、今食べた肉はなんだと問われた。
「レバーですね。お嬢様には鉄分が必要ですので。ぜひ食べていただきたくて、新鮮なものを選びました。もっと召し上がりますか?」
うなずくお嬢様が自分で箸を動かす前に、オレはまた先に動いた。
「はい、お嬢様。アーン」
吹き出すお嬢様。
「もー、なんなの今日は。私にお箸使わせないつもり?」
「お嬢様、早く熱いうちに!ほら、アーンしてください」
お嬢様が苦笑しながら箸を置き口をあける。
肉が舌の上にのる。美味しいと顔をほころばせる。
オレは驚いた。
お嬢様がこんなに美味しそうに肉を食べるのは初めてだ。
オレの手から獣肉を食べるお嬢様。
笑顔で肉をほおばるお嬢様。
新鮮すぎるその光景に、オレの脳味噌はよからぬ妄想を紡ぎはじめた――。
お嬢様は普段あまり肉を食べない。だから焼肉店など行ってもつまらないのではないか、と思いそう答えた。
「川島がお肉食べてるとこ見たいの。私もちゃんと食べるから。1、2枚くらいは。」
それではほとんどオレが肉を食べることになるんじゃ……。
ああ、お嬢様はそれが見たいのか。
でも、なぜ?――理由がわからない。
「店でなく、この家で焼肉をしたらよろしいのでは?そうすればお嬢様のおすきな、お野菜もお魚もいろいろとご用意できますし」
店へ行けば食べるものが限定される。おそらく焼肉店では牛肉以外のメニューはさほど充実していないだろう。
お嬢様の栄養が偏ってしまう。それは絶対にダメだ。
お嬢様の目的はオレが肉を食べるのを見ることなのだから、わざわざ店に行く必要はない。
それに家の方がゆっくりできるし、お嬢様も楽しめるのではないかと思い、そう提案した。
お嬢様がうつむきながらいう。
「うん……いいよ、それでも。だけど一度してみたかったの、川島と焼肉デート。私が普段お肉食べないから、川島が気を遣って今までそういうお店に行ったことなかったでしょ?だから」
そうだったのか。お嬢様はオレとデートしたかったのか。
顔が勝手にニヤけてしまう。
気づかれる前にお嬢様を抱きしめて誤魔化した。
「別に気を遣っていたわけではないんですが……ではこうしましょう。屋上のテラスでバーベキューするんです。いつもの食事と違ってデートっぽくなりませんか?」
お嬢様が顔を上げる。
「うん、なんか楽しそう。用意するの手伝わせてくれる?」
子供みたいに目を輝かせるお嬢様に軽くうなずいた。
力が要ること、危ない作業はもちろんさせない。
さっそく頭の中で段取りを考えると準備に取りかかった。
ふたりで車に乗り込み食材の買い出しをする。
ついでにアウトドア専門店に寄り、道具をそろえた。
オレもお嬢様もインドア派なので、こうした店に立ち寄ることはあまりない。だから目に入るものが新鮮で面白かった。
「これってなにに使うのかな。川島わかる?」
「見当もつきませんね」
ふたりで道具をいろいろ見て回って楽しんだ。
*
家に戻り、集中して作業したせいか支度はすぐに整った。
お嬢様もオレが出す指示にテキパキと動いてくれた。
さすがオレのお嬢様だ。
余計なお喋りもせず動きに無駄がない。
オレは女性のお喋りが苦手だった。
かしましいその談笑を聞いていると頭が痛くなってくる。
特にいつでもどこでも開かれる、井戸端会議というやつの意味がわからない。もちろん、すべての女性がお喋りだと思っているわけではないが。
以前、お嬢様にそれを話してみたことがある。
すると、女性は一日に二万語以上を話さないとストレスが溜まる生き物なのだ、と教えてくれた。
だが、その女性にしては珍しくお嬢様は口数が少ない。
そんな寡黙なところも、オレにとってはお嬢様の数ある魅力のひとつだった。
かいがいしく手伝う姿を眺めながら、考えにふけっていると声をかけられた。
「ねえ、ちょっと休憩しない?」
「そうですね。なにかお飲み物でもお持ちしましょうか」
「ありがとう。私は川島と同じのでいいから」
ということはコーヒーでいいらしい。
テラスに置いてあるカフェテーブルにつき、ふたりで淹れたてのコーヒーを飲んだ。
「なんかね、用意してたら気分だけでお腹いっぱいになってきちゃった。でも川島がお肉食べてるとこ見たいしね」
そうだった。
お嬢様は、なぜそんなにもオレが肉を食べる姿を見たがるのだろう。なんとなく今訊いても答えてくれない気がした。
理由はなんにせよ、お嬢様がそれで満足してくれるなら、どんなことにでもオレは応える。
自分の存在はお嬢様のためだけにあるのだから。
それ以外にはなにもない。
いい感じに空が夕暮れてきた。
キャンドルライトに灯を入れて食材を焼く準備に入る。
お嬢様に手伝うといわれたが断った。
火の側へは近づかせない。
お嬢様が万一、やけどなんかしたらオレの精神がもたない。
以前、お嬢様がスライサーで指を切ったときも卒倒しそうになったほどだ。
「川島の頑固者」
調理に関しては小さい子に頼むくらいの手伝いしかさせないオレを、お嬢様が非難する。
その顔も仕草もオレの目にはたまらなく可愛く映る。
もしかすると、そんな姿が見たくて手伝いを断っている部分もあるかもしれない。
焼き網に肉と野菜をバランスよく並べながら思った。
少し焦げた香ばしい匂いがしてきたところで皿に盛る。
今日は特に、新鮮でいい肉や野菜が手に入った。
その素材の旨味を味わうために濃いタレはつけない。
代わりにレモン汁と岩塩を用意した。
それに、ごま油で和えた白ネギの細切りも。
箸を割ろうとするお嬢様より先にオレはすかさず動いた。
「はい、お嬢様。アーンしてください」
ネギをくるんだ肉をお嬢様の口へ運ぶ。
一瞬、恥ずかしそうにしてからお嬢様が口をあける。
ああ、可愛らしい。ひな鳥みたいだ。
肉を口に入れると、お嬢様の目が輝いた。
なにかいいたそうだったが、そのままきちんと
「美味しい!全然お肉の臭みがない。あと柔らかい。レモンとネギのおかげでさっぱりしてる。美味しい」
美味しいを繰りかえすお嬢様に微笑むと、今食べた肉はなんだと問われた。
「レバーですね。お嬢様には鉄分が必要ですので。ぜひ食べていただきたくて、新鮮なものを選びました。もっと召し上がりますか?」
うなずくお嬢様が自分で箸を動かす前に、オレはまた先に動いた。
「はい、お嬢様。アーン」
吹き出すお嬢様。
「もー、なんなの今日は。私にお箸使わせないつもり?」
「お嬢様、早く熱いうちに!ほら、アーンしてください」
お嬢様が苦笑しながら箸を置き口をあける。
肉が舌の上にのる。美味しいと顔をほころばせる。
オレは驚いた。
お嬢様がこんなに美味しそうに肉を食べるのは初めてだ。
オレの手から獣肉を食べるお嬢様。
笑顔で肉をほおばるお嬢様。
新鮮すぎるその光景に、オレの脳味噌はよからぬ妄想を紡ぎはじめた――。
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