オレのお嬢様は寝相が悪い
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オレのお嬢様は寝相があまり……いや、相当よくない。
普段はお嬢様もオレも、それぞれの部屋でダブルベッドを使っている。
オレはダブルで充分、ひとり悠々と眠れる。
一方、お嬢様は頻繁に寝返りを打つので、ダブルでちょうどいいのだといっていた。
寝返りも2回転は当たり前らしい。
だからオレは、いつもお嬢様を起こしに行くとき、ベッドから落ちてやしないかと心配になる。
ふたりでひとつのベッドに眠るとき―今夜がちょうどそうだ―初めのうちお嬢様は大人しく、オレの腕の中に収まっている。
そしてお嬢様を撫でていると、やがて静かな寝息が聞こえてくる。そのまま朝まで大人しく抱かれていてほしいが、そうはいかない。
オレが寝ているあいだに、お嬢様はいつのまにか離れて行ってしまう。
この前、途中で目を覚ましたときには、ベッドの端ぎりぎりのところで横向き寝の体勢になっていた。
もう少しで完全に落ちてしまう。慌ててオレの方へ引き戻した。
それからもう一度抱き直しても、眠るとまたいつの間にかいなくなっている。
いっそのことオレとお嬢様の手首に手錠をかけて繋いでしまいたい。そうすればお嬢様はすぐ傍に、ずっと離れずいてくれるのに。
そして今夜もいつものようにお嬢様が先に眠りにおち、オレも目を閉じた。
*
眠りが浅かったようで途中で目が覚めた。
今は何時だろう。部屋はまだ暗い。
お嬢様は――めずらしくすぐ横で仰向けになっている。
よかった。
ホッとしたのも束の間、オレの胸が今まで受けたことのない衝撃に襲われた。
「ッ……!?」
胸にドスンと振り下ろされたそれは、お嬢様の腕だった。
肘がもろに入り息が一瞬とまったのが自分でもわかった。
腕をそっと元に戻す。やれやれ。
オレの気も知らずキレイな寝顔ですやすや眠っている。
また肘をくらったらどうしようか、と少し不安になりながらもう一度目を閉じる。
眠りはすぐに訪れた。
……が、また途中で目が覚めてしまった。
なにやら今度は脚が重いものに圧迫されている。
目をあけて確かめる。
お嬢様の体がほぼ真横に近いほど斜めになり、オレの脚はお嬢様の下半身の下敷きになっていた。
どうすればこうなるんだ?
オレが寝ている間になにがおこってるんだ!?
今度カメラでもつけてみようか、と本気で考えながら、
よいしょ……とお嬢様の両脚を降ろした。
脇と膝の裏に腕を差し入れ、お姫様抱っこの形で身体を真っすぐに戻す。
「川島……」
お嬢様がオレの首に腕を回してきた。
起きたのだろうか。
と思いきや、オレの頭を抱えたまま止まってしまった。
お嬢様の胸の鼓動が聞こえる。
規則正しい寝息も耳元で聴こえる。
お嬢様が眠っている間でさえ翻弄されてしまう自分に苦笑しながら、同時に言葉にならない底なしの幸せを感じた。
「んー……川島~」
甘えるような可愛い声がまた聞こえる。
寝言でもオレの名前を口にするお嬢様が愛しかった。体勢はつらいが、しばらくこのまま首を抱かれていることにした。
朝。目覚めるとお嬢様から寝相のことを訊かれた。
本人も気にしているようだ。
「まあ、いろいろありましたけど、気にされるほどではありませんよ」
「いろいろあったの?ごめんね。もう川島と一緒に寝ない方がいいのかな」
それは論外なので即座に却下する。
「わたしは大丈夫です。それに眠る前クタクタにお疲れになれば、お嬢様は朝まで身じろぎもせず、ぐっすり眠ってくださいますから」
わざと直喩を避けていってみる。
「そんな疲れることなんて……」
少し考える顔をしてからお嬢様がふいに目を伏せた。
恥ずかしそうな表情でそのまま黙ってしまう。
ああ、なんて可愛いんだオレのお嬢様は。
朝からやめてくれ、と思う。
「お嬢様、なにを恥ずかしがっているんです?」
「べ、べつに!川島が変なこというから……」
「変なことって?わたしは事実をいったまでですよ」
お嬢様の目が軽くオレを睨んでいった。
「……嫌い!」
嫌われてしまった。お嬢様が逃げるようにベッドを飛び降り部屋から出て行ってしまう。
少し調子にのりすぎたか、と反省しながら困らせたことをあとで謝ろうと思った。
早くお嬢様にゆるされたい。
オレはオレの存在ごと、お嬢様にゆるされたい。
永遠にオレがお嬢様の傍にいることを。
切実な想いとともに、朝の時間はゆっくりと過ぎて行った。
普段はお嬢様もオレも、それぞれの部屋でダブルベッドを使っている。
オレはダブルで充分、ひとり悠々と眠れる。
一方、お嬢様は頻繁に寝返りを打つので、ダブルでちょうどいいのだといっていた。
寝返りも2回転は当たり前らしい。
だからオレは、いつもお嬢様を起こしに行くとき、ベッドから落ちてやしないかと心配になる。
ふたりでひとつのベッドに眠るとき―今夜がちょうどそうだ―初めのうちお嬢様は大人しく、オレの腕の中に収まっている。
そしてお嬢様を撫でていると、やがて静かな寝息が聞こえてくる。そのまま朝まで大人しく抱かれていてほしいが、そうはいかない。
オレが寝ているあいだに、お嬢様はいつのまにか離れて行ってしまう。
この前、途中で目を覚ましたときには、ベッドの端ぎりぎりのところで横向き寝の体勢になっていた。
もう少しで完全に落ちてしまう。慌ててオレの方へ引き戻した。
それからもう一度抱き直しても、眠るとまたいつの間にかいなくなっている。
いっそのことオレとお嬢様の手首に手錠をかけて繋いでしまいたい。そうすればお嬢様はすぐ傍に、ずっと離れずいてくれるのに。
そして今夜もいつものようにお嬢様が先に眠りにおち、オレも目を閉じた。
*
眠りが浅かったようで途中で目が覚めた。
今は何時だろう。部屋はまだ暗い。
お嬢様は――めずらしくすぐ横で仰向けになっている。
よかった。
ホッとしたのも束の間、オレの胸が今まで受けたことのない衝撃に襲われた。
「ッ……!?」
胸にドスンと振り下ろされたそれは、お嬢様の腕だった。
肘がもろに入り息が一瞬とまったのが自分でもわかった。
腕をそっと元に戻す。やれやれ。
オレの気も知らずキレイな寝顔ですやすや眠っている。
また肘をくらったらどうしようか、と少し不安になりながらもう一度目を閉じる。
眠りはすぐに訪れた。
……が、また途中で目が覚めてしまった。
なにやら今度は脚が重いものに圧迫されている。
目をあけて確かめる。
お嬢様の体がほぼ真横に近いほど斜めになり、オレの脚はお嬢様の下半身の下敷きになっていた。
どうすればこうなるんだ?
オレが寝ている間になにがおこってるんだ!?
今度カメラでもつけてみようか、と本気で考えながら、
よいしょ……とお嬢様の両脚を降ろした。
脇と膝の裏に腕を差し入れ、お姫様抱っこの形で身体を真っすぐに戻す。
「川島……」
お嬢様がオレの首に腕を回してきた。
起きたのだろうか。
と思いきや、オレの頭を抱えたまま止まってしまった。
お嬢様の胸の鼓動が聞こえる。
規則正しい寝息も耳元で聴こえる。
お嬢様が眠っている間でさえ翻弄されてしまう自分に苦笑しながら、同時に言葉にならない底なしの幸せを感じた。
「んー……川島~」
甘えるような可愛い声がまた聞こえる。
寝言でもオレの名前を口にするお嬢様が愛しかった。体勢はつらいが、しばらくこのまま首を抱かれていることにした。
朝。目覚めるとお嬢様から寝相のことを訊かれた。
本人も気にしているようだ。
「まあ、いろいろありましたけど、気にされるほどではありませんよ」
「いろいろあったの?ごめんね。もう川島と一緒に寝ない方がいいのかな」
それは論外なので即座に却下する。
「わたしは大丈夫です。それに眠る前クタクタにお疲れになれば、お嬢様は朝まで身じろぎもせず、ぐっすり眠ってくださいますから」
わざと直喩を避けていってみる。
「そんな疲れることなんて……」
少し考える顔をしてからお嬢様がふいに目を伏せた。
恥ずかしそうな表情でそのまま黙ってしまう。
ああ、なんて可愛いんだオレのお嬢様は。
朝からやめてくれ、と思う。
「お嬢様、なにを恥ずかしがっているんです?」
「べ、べつに!川島が変なこというから……」
「変なことって?わたしは事実をいったまでですよ」
お嬢様の目が軽くオレを睨んでいった。
「……嫌い!」
嫌われてしまった。お嬢様が逃げるようにベッドを飛び降り部屋から出て行ってしまう。
少し調子にのりすぎたか、と反省しながら困らせたことをあとで謝ろうと思った。
早くお嬢様にゆるされたい。
オレはオレの存在ごと、お嬢様にゆるされたい。
永遠にオレがお嬢様の傍にいることを。
切実な想いとともに、朝の時間はゆっくりと過ぎて行った。
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