こんなはずじゃなかったのに
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お嬢様のバスタイムは長い。最低でも1時間は出てこない。
オレはキッチンで本を片手に、お嬢様が出てくるのを今か今かと待っていた。
冷蔵庫にはお嬢様がすきな天然の炭酸水が、ほどよく冷えている。風呂から上がったお嬢様は、水分を補給するためにここへくるはずだった。
微かな物音。
お嬢様が風呂からあがったらしい。
きっと今頃タオルでざっと身体を拭いたあと、バスローブを羽織ろうというところだろう。
お嬢様がバスローブがないことに気がつく。
畳んである下着とパジャマに気がつく。
少し考え、オレの仕業だと気がつく。
いぶかしみながら下着をつける。
サイズがピッタリなことに驚くお嬢様。
次いでパジャマを身につける。
その顔には疑問の念が浮かんでいる――。
一連の流れのお嬢様が容易に想像でき、オレはまた声に出して笑いそうになった。
そこへパウダールームのドアが開く音がした。
お嬢様がそのままオレのいるキッチンへ向かってくる……と思いきや、足音は反対の方へ向かった。
階段を上がる音。
予想外の展開にオレは取り乱した。
急いで冷蔵庫から炭酸水の瓶を取り出し、栓抜きとグラスをトレーにのせる。
それを片手に、お嬢様の髪を乾かすための道具たちを抱え、オレは後を追った。
まったくスマートじゃない。
お嬢様の予想外の行動に少し慌てたが、まだ計画の範囲内だ。
なにより一刻も早くパジャマ姿を見たかった。
脇に抱えたドライヤーを取りおとしそうになりながら、お嬢様の部屋をノックする。
「お嬢様、御髪 を乾かしましょうか?」
少し間があき、お願いという声が返ってきた。
期待に胸が躍る。
ドアをゆっくり開けると、ベッドの上にちょこんと腰かけたお嬢様が見えた。
オレとおそろいのパジャマを着て、湯上りの顔をほんのり赤く上気させている。
――可愛い。可愛い!可愛い!!可愛い!!!
ああ、もうダメだ。
風呂にも入っていないのに、なぜオレはこんなにのぼせているのだろう。頭がクラクラして倒れそうだ。
「川島、危ない!」
気づくとお嬢様がオレに駆けよりトレーを支えていた。
「もーなにしてるの。グラスが倒れるところだったよ」
いいながら、オレの体からトレーやらドライヤーやらを次々に剥ぎとっていく。
「すみません……」
お嬢様から目が離せず、ぼんやりとそれを見守っていた。
そして、お嬢様は炭酸水の入った瓶のフタを小気味よい音をさせながら開けた。
なにか礼をいわれた気がしたが、オレの頭はまだぼうっとしたままだ。細かい泡のついたグラスをお嬢様が傾ける。
白い喉が上下に動くのを眺めていると、ようやく意識がはっきりしてきた。
「あー美味しい!」
「お嬢様、その寝間着よくお似合いですね。とても、お可愛らしい……」
「え?ああ、そうだ。これって川島が用意したの?私のバスローブは?」
キレイな所作でグラスを置くお嬢様に、オレはあらかじめ用意していた答えを放った。
「ほつれていたので、まとめて直そうと思いまして。代わりにご用意いたしました」
「そうだったんだ」
白々しくなっていないか緊張したが、お嬢様は気にしていないようだった。
「でも下着まで新しいし……これ、どうしたの」
一気に心臓が跳ねる。
「そっ……それは。その寝間着にはその下着が一番合うと思い、新しくご用意させていただいたまでです」
納得いかないといった様子で、お嬢様がオレの目を覗きこんでくる。腕を組み、下からオレを見上げるその姿。
それだけでも可愛すぎるのに、今はおそろいのパジャマを着ている。思わず口角が上がりそうになり、唇を軽く噛んでこらえた。
お嬢様の視線をかわし、髪を乾かす準備に入る。手慣れているのですぐに乾かし終えた。
「川島は本当に手ぎわがいいね。プロの美容師さんみたい」
当然だ。
お嬢様の髪に、いかに負担をかけず素早く乾かし、美しくまとめるか。オレはこの邸 にきた当初に特訓を重ね、すでに修得済みだった。
お嬢様はその事実を知らない。
オレもあえていうつもりはない。
「ありがとうございます。あの、お嬢様――」
「なに?」
「あの……これから、わたしの部屋にいらっしゃいませんか?」
オレの言葉を聞き終える前に、お嬢様の明るい笑い声が弾けた。
なにがどうしたというのか。
オレはキッチンで本を片手に、お嬢様が出てくるのを今か今かと待っていた。
冷蔵庫にはお嬢様がすきな天然の炭酸水が、ほどよく冷えている。風呂から上がったお嬢様は、水分を補給するためにここへくるはずだった。
微かな物音。
お嬢様が風呂からあがったらしい。
きっと今頃タオルでざっと身体を拭いたあと、バスローブを羽織ろうというところだろう。
お嬢様がバスローブがないことに気がつく。
畳んである下着とパジャマに気がつく。
少し考え、オレの仕業だと気がつく。
いぶかしみながら下着をつける。
サイズがピッタリなことに驚くお嬢様。
次いでパジャマを身につける。
その顔には疑問の念が浮かんでいる――。
一連の流れのお嬢様が容易に想像でき、オレはまた声に出して笑いそうになった。
そこへパウダールームのドアが開く音がした。
お嬢様がそのままオレのいるキッチンへ向かってくる……と思いきや、足音は反対の方へ向かった。
階段を上がる音。
予想外の展開にオレは取り乱した。
急いで冷蔵庫から炭酸水の瓶を取り出し、栓抜きとグラスをトレーにのせる。
それを片手に、お嬢様の髪を乾かすための道具たちを抱え、オレは後を追った。
まったくスマートじゃない。
お嬢様の予想外の行動に少し慌てたが、まだ計画の範囲内だ。
なにより一刻も早くパジャマ姿を見たかった。
脇に抱えたドライヤーを取りおとしそうになりながら、お嬢様の部屋をノックする。
「お嬢様、
少し間があき、お願いという声が返ってきた。
期待に胸が躍る。
ドアをゆっくり開けると、ベッドの上にちょこんと腰かけたお嬢様が見えた。
オレとおそろいのパジャマを着て、湯上りの顔をほんのり赤く上気させている。
――可愛い。可愛い!可愛い!!可愛い!!!
ああ、もうダメだ。
風呂にも入っていないのに、なぜオレはこんなにのぼせているのだろう。頭がクラクラして倒れそうだ。
「川島、危ない!」
気づくとお嬢様がオレに駆けよりトレーを支えていた。
「もーなにしてるの。グラスが倒れるところだったよ」
いいながら、オレの体からトレーやらドライヤーやらを次々に剥ぎとっていく。
「すみません……」
お嬢様から目が離せず、ぼんやりとそれを見守っていた。
そして、お嬢様は炭酸水の入った瓶のフタを小気味よい音をさせながら開けた。
なにか礼をいわれた気がしたが、オレの頭はまだぼうっとしたままだ。細かい泡のついたグラスをお嬢様が傾ける。
白い喉が上下に動くのを眺めていると、ようやく意識がはっきりしてきた。
「あー美味しい!」
「お嬢様、その寝間着よくお似合いですね。とても、お可愛らしい……」
「え?ああ、そうだ。これって川島が用意したの?私のバスローブは?」
キレイな所作でグラスを置くお嬢様に、オレはあらかじめ用意していた答えを放った。
「ほつれていたので、まとめて直そうと思いまして。代わりにご用意いたしました」
「そうだったんだ」
白々しくなっていないか緊張したが、お嬢様は気にしていないようだった。
「でも下着まで新しいし……これ、どうしたの」
一気に心臓が跳ねる。
「そっ……それは。その寝間着にはその下着が一番合うと思い、新しくご用意させていただいたまでです」
納得いかないといった様子で、お嬢様がオレの目を覗きこんでくる。腕を組み、下からオレを見上げるその姿。
それだけでも可愛すぎるのに、今はおそろいのパジャマを着ている。思わず口角が上がりそうになり、唇を軽く噛んでこらえた。
お嬢様の視線をかわし、髪を乾かす準備に入る。手慣れているのですぐに乾かし終えた。
「川島は本当に手ぎわがいいね。プロの美容師さんみたい」
当然だ。
お嬢様の髪に、いかに負担をかけず素早く乾かし、美しくまとめるか。オレはこの
お嬢様はその事実を知らない。
オレもあえていうつもりはない。
「ありがとうございます。あの、お嬢様――」
「なに?」
「あの……これから、わたしの部屋にいらっしゃいませんか?」
オレの言葉を聞き終える前に、お嬢様の明るい笑い声が弾けた。
なにがどうしたというのか。