どこまでも交わらない姉妹の話。

姉視点

「あんたなんて姉とも思いたくない。私は一人で野垂れ死ぬからあんたもせいぜい好きにいればいい」

 妹からの言葉に涙で視界が歪む。気付けば親戚のお兄ちゃんのお嫁さんに背中を撫でられて今度こそ私は声に出して泣いた。泣きながら既に姿が見えなくなった
 久しぶりに会った妹と他愛のない話をしていただけだった。すっかり疎遠になってしまった理由は忘れてしまったけれど、私が子どもを連れて実家に戻ってしばらくしてからのことなのは薄ら思い出すことができた。あのとき慣れない環境に変化した子どもたちと両親からの言葉で追い詰められて、一人暮らしをしていた妹に連絡したら、まるで私が何も考えていないような女のように扱ってきて腹が立って思ったままを吐き出したら、妹からも距離を置くと言われてしまい、その日泣いて夜を過ごしたわ。
 
 ただ愚痴を吐き出して仕方がなかったから連絡をしただけなのに、変に意見をされても無性に腹が立つだけだったから。妹だって夫からの仕打ちに支えると言ってくれたのに。どうしてあんなことを言うのかわかんなかった。今まで頑張ってきたのだから少しぐらい私のことを優先してほしかった。すっかり疎遠になって……6年経って、今もあのときのことを思い出すとむかつきを覚えるけれど……でも、許してあげようと思ったの。
 両親が亡くなった今、姉妹が支え合って生きるべきだと思うから。
 私はシングルマザーで二人の子どもを育てているし、妹は何を考えているのか今も独り身で誰かと付き合っている様子はないのだから、丁度いいと思うの。だって、血の繋がった姉妹なのだから。

 妹は昔からのんびり屋で何を考えているのか分からなくて、そんな妹が少しだけ不気味だった。だから私が『普通の妹』というものを教えてあげた。妹もそんなに嫌がっているようには見えなかったし、私が教えたおしゃれも楽しんでいたと思う。私は姉として妹に『普通』を教えてあげた。そのおかげで妹は普通になれたのだから。私に感謝してほしい。
 何でパパとママは妹に何か言ったりしなかったんだろう。昔から何かと妹には甘かったけれども、一人マイペースに過ごすのは恥ずかしいことなのにそれをちゃんと教えてあげないのは毒親だと思う。私との買い物も楽しそうに笑ってくれるようになったしね。妹の世界を広げたのは私だと確信している。それなのに、その恩は報われることはなかった。今の投げかけられた言葉で嫌でも理解してしまった。妹は私のことなんて何も考えてくれないんだって。

 私と妹が疎遠になったときも、パパとママは何も言わなかったみたいだ。私が妹の愚痴を言っても色んな価値観があるからね、で終わらせられるだけだった。だから実家を出てからはあまり顔を出さないようになった。妹はたまに帰っているみたいだけど、やっぱり会う気にならなくて今日まで会わないままだった。
 せっかく私が今までの過去のことを水に流して歩み寄ってあげたのに、冷たく私を突き落としてくれた。

 頼らせてほしかった。支えてほしかっただけなのに。家族として当然のことを私は求めているだけなのにあの子はどこまでも冷たかった。ひどい、かなしい。

(いやなはなしだわ)

 それでも、私はいつか妹とまた笑って話せることを願う。
 だって、たったふたりの姉妹で、唯一の妹だもの。きっと分かり合える。今すぐは無理でも、時間が経てばきっと。そう、わたしは信じてる。その場に張り付くように座り込んで訴えた。足が重くて仕方がない。涙が零しているせいで
 私の涙ながらの訴えに叔母さんが微妙な顔をしていたことには気付けなかった。
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