『青服の日常』より
「まーた冴えない顔してサボりッスか、アンノウン刑事」
「んな……お前はバイヤー!」
「毎回反応が面白いッスね~これだからやめられないッス」
「今回は何が目的なんだよ……」
「はーい今回は黄金邸の勇者像をいただきます♡ 一週間後♡」
「あっそう……」
「せっかく教えてあげたのにつれないッスねアンノウンさん」
「アンノウンさんって呼ぶな」
「上司にチクらなくていいんスか?」
「知らん。どうでもいい。今休憩時間だし」
「サボってるだけでしょ。ほんとは勤務時間中なんじゃないスか~?」
「ぐ」
「フ、ハハ! 面白い顔! じゃ、確かに伝えたッスからね~」
「バイヤー!」
振り返らずに空を去ってゆくバイヤーをアンノウンはしばらく睨みつけていたが、ふうと息を吐くと短くなった煙草をまたくわえた。
「警部になんて説明しよう……」
◆
「何、バイヤーが現れた!?」
「黄金邸周辺で目撃情報があったらしいです!」
「次のターゲットは黄金邸ということか……しかし黄金邸には古今東西あらゆる地方の骨董品美術品が集められていて黄金邸というだけでは何を狙っているのか……」
「あ、警部」
「何だアンノウン、今日もしけた面しやがって」
「はいはいすいませんね」
「で、何だ? 今は報告中だ、手短に頼む」
「バイヤーの次の獲物、勇者像です」
「何ィ? なんでわかる」
「なんかバイヤーが言ってました」
「会ったのか!?」
「なんか予告みたいな感じで。ちなみに今日です」
「早く言わんか! 総員! 黄金邸へ! アンノウンはこの件が終わったらたっぷり話を聞かせてもらう!」
にわかに騒がしくなる捜査本部。アンノウンははーとため息をついて一人屋上に向かいかけたが数秒考えるとジャケットを羽織り外に出た。
◆
「ぐぬぬバイヤーまたしても……!」
勇者像を抱え気球で消えて行くバイヤーをぎりりと見上げる警部。
アンノウンもつられて上を見る。
白いスーツにモノクルのバイヤー。その顔がふと冴えない刑事の方を向き、ウィンクしたような気がした。
俺に? いや、まさかね。
◆
「何の用だァ、アンノウン。俺は今ちょうどいい眠気がきたところだったんだがなァ」
「いやあ、警部に屋上禁止令出されちゃいまして」
「それで医務室でサボりってか? いいご身分だなァ」
「たはは……」
「ほどほどにしろよ。俺は寝る」
「あ、はい、おやすみなさいドクター」
ドクターは返事を返さず空いているベッドの一つに身を投げた。
ほどなくして聞こえる寝息。
アンノウンは煙草を吸おうと胸ポケットに手を入れかけ、
『禁煙』
貼り紙を見て引っ込めたが、
「?」
ふと感じた違和感にもう一度手をやる。胸ポケットから出した手に握られていたのは一枚のカード。
『ファンサ』
「はあ!?」
「うるせェぞアンノウン……」
身じろぎするドクター。
「すっ……すんません」
返事はなく、規則正しい寝息が聞こえてくる。
アンノウンはドクターに目をやり、瞬き一つすると隣のベッドから毛布を取ってその上にかけた。
そしてもう一度カードを見る。
「意味わかんねえ……」
アンノウンは深くため息をつくとカードを持った手を額に当て天井を見上げた。
「紫電すぎるでしょう……」
今回はそんな話。
「んな……お前はバイヤー!」
「毎回反応が面白いッスね~これだからやめられないッス」
「今回は何が目的なんだよ……」
「はーい今回は黄金邸の勇者像をいただきます♡ 一週間後♡」
「あっそう……」
「せっかく教えてあげたのにつれないッスねアンノウンさん」
「アンノウンさんって呼ぶな」
「上司にチクらなくていいんスか?」
「知らん。どうでもいい。今休憩時間だし」
「サボってるだけでしょ。ほんとは勤務時間中なんじゃないスか~?」
「ぐ」
「フ、ハハ! 面白い顔! じゃ、確かに伝えたッスからね~」
「バイヤー!」
振り返らずに空を去ってゆくバイヤーをアンノウンはしばらく睨みつけていたが、ふうと息を吐くと短くなった煙草をまたくわえた。
「警部になんて説明しよう……」
◆
「何、バイヤーが現れた!?」
「黄金邸周辺で目撃情報があったらしいです!」
「次のターゲットは黄金邸ということか……しかし黄金邸には古今東西あらゆる地方の骨董品美術品が集められていて黄金邸というだけでは何を狙っているのか……」
「あ、警部」
「何だアンノウン、今日もしけた面しやがって」
「はいはいすいませんね」
「で、何だ? 今は報告中だ、手短に頼む」
「バイヤーの次の獲物、勇者像です」
「何ィ? なんでわかる」
「なんかバイヤーが言ってました」
「会ったのか!?」
「なんか予告みたいな感じで。ちなみに今日です」
「早く言わんか! 総員! 黄金邸へ! アンノウンはこの件が終わったらたっぷり話を聞かせてもらう!」
にわかに騒がしくなる捜査本部。アンノウンははーとため息をついて一人屋上に向かいかけたが数秒考えるとジャケットを羽織り外に出た。
◆
「ぐぬぬバイヤーまたしても……!」
勇者像を抱え気球で消えて行くバイヤーをぎりりと見上げる警部。
アンノウンもつられて上を見る。
白いスーツにモノクルのバイヤー。その顔がふと冴えない刑事の方を向き、ウィンクしたような気がした。
俺に? いや、まさかね。
◆
「何の用だァ、アンノウン。俺は今ちょうどいい眠気がきたところだったんだがなァ」
「いやあ、警部に屋上禁止令出されちゃいまして」
「それで医務室でサボりってか? いいご身分だなァ」
「たはは……」
「ほどほどにしろよ。俺は寝る」
「あ、はい、おやすみなさいドクター」
ドクターは返事を返さず空いているベッドの一つに身を投げた。
ほどなくして聞こえる寝息。
アンノウンは煙草を吸おうと胸ポケットに手を入れかけ、
『禁煙』
貼り紙を見て引っ込めたが、
「?」
ふと感じた違和感にもう一度手をやる。胸ポケットから出した手に握られていたのは一枚のカード。
『ファンサ』
「はあ!?」
「うるせェぞアンノウン……」
身じろぎするドクター。
「すっ……すんません」
返事はなく、規則正しい寝息が聞こえてくる。
アンノウンはドクターに目をやり、瞬き一つすると隣のベッドから毛布を取ってその上にかけた。
そしてもう一度カードを見る。
「意味わかんねえ……」
アンノウンは深くため息をつくとカードを持った手を額に当て天井を見上げた。
「紫電すぎるでしょう……」
今回はそんな話。