7月 ある年の夏~冒険の前夜
「明日、ついにサマーキャンプか」
ぼくは、部屋の壁にかけているカレンダーをぼんやりと眺めていた。今日は1999年の7月31日。現在、夏休み真っ最中で、ぼくは宿題を効率的にこなしつつも、趣味であるパソコンに向かいっぱなし。世界中にいるメール友達と連絡を取り合っていた。
パソコンやインターネット、メール交換。そんなインドアな趣味を持っているぼく。でも、こんなぼくも学校ではサッカークラブに入っている。
学校の決まりごとだから仕方なしだったけど、ぼくが正課クラブにサッカーを選択しなければ、彼と出会うことも無かったのだと思うと、縁というのは不思議だなと感じる。
ぼくはこの春4年生になって、学校の正課クラブの活動に参加出来るようになった。ところが、ぼくの通うお台場小学校は、運動系のクラブを選択しなくてはいけなかったから、ぼくは野球よりも人間関係が密ではなさそうなサッカークラブを選択した。
そこで出会った、背番号10のひと。
加入前の見学の時に、一目見て、なんとなく気になってから、ぼくは彼を目で追うようになっていた。
彼は常にみんなの中心で笑っている、太陽のような人だ。ぼくは、彼みたいな人は、ぼくのような何でもない人間なんかとは関わりなくいくのだろうなと思っていた。
ところがある日。
「クラブには慣れたか?」
その「彼」に声をかけられ、ぼくは緊張して思わず固まった。
「分からないことがあったら、なんでも聞いてくれ。ボールの蹴り方とか、そういうのでもいいぞ」
そう言って、彼は笑った。
それから彼は、時々声をかけてくれるようになり、ぼくにサッカーのことを優しく、丁寧に教えてくれた。
もちろん、彼がぼくだけに優しかった、というわけではなかったけれど、それでもチームの司令塔で、チームメイトに好かれていて、監督にも信頼されて。
なのに、ぼくのような上手いわけでも目立つわけでもない部員にも平等に接し、優しくしてくれる彼の器量に、ぼくは徐々に惹かれていった。
そのうち、何かのきっかけで、彼とぼくはお互いの家へお邪魔する仲になっていた。
「なあ、光子郎は行く? 子供会のサマーキャンプ」
7月の初めの頃。学校からの帰り道でふと、彼にそう聞かれた。
半月ほど前に、帰りの会でサマーキャンプのチラシが配られたけど、行っても仕方がないかなと思ってスルーしていた。だけど何故かそのチラシをぼくは無意識にとっておいた。
ぼくはクラスに友達もいないし、クラスメイトもそれなりに行く人もいたけど、行っても楽しくないんじゃないかと思っていた。だから、迷っています、と彼に言った。
「だったら、行こうぜ」
「えっ?」
ぼくは驚いた。
「なんだかオレ、光子郎が一緒なら、面白いキャンプになりそうな気がするんだ。だからさ」
行こうぜ、と彼は言った。
正直、そこまで気乗りはしない。
だけど、彼が行くのなら行こうと、不思議とぼくはそう思った。
彼の言った、面白いこと。それが起きそうな気がしてきたのだ。
次の日、ぼくは早速、サマーキャンプの参加申込書を先生に提出した。
サマーキャンプ中ずっと、彼と一緒にいられるわけではないから、時間潰しのため、パソコンや周辺機器は持って行こうと思った。
そして今日、ぼくはパソコンやデジカメの充電をしっかりやって、明日に備えて眠りについた。
ぼくはまだ知らなかった。このサマーキャンプが、彼とぼくの未来が変わる引き金となることを。
ぼくは、部屋の壁にかけているカレンダーをぼんやりと眺めていた。今日は1999年の7月31日。現在、夏休み真っ最中で、ぼくは宿題を効率的にこなしつつも、趣味であるパソコンに向かいっぱなし。世界中にいるメール友達と連絡を取り合っていた。
パソコンやインターネット、メール交換。そんなインドアな趣味を持っているぼく。でも、こんなぼくも学校ではサッカークラブに入っている。
学校の決まりごとだから仕方なしだったけど、ぼくが正課クラブにサッカーを選択しなければ、彼と出会うことも無かったのだと思うと、縁というのは不思議だなと感じる。
ぼくはこの春4年生になって、学校の正課クラブの活動に参加出来るようになった。ところが、ぼくの通うお台場小学校は、運動系のクラブを選択しなくてはいけなかったから、ぼくは野球よりも人間関係が密ではなさそうなサッカークラブを選択した。
そこで出会った、背番号10のひと。
加入前の見学の時に、一目見て、なんとなく気になってから、ぼくは彼を目で追うようになっていた。
彼は常にみんなの中心で笑っている、太陽のような人だ。ぼくは、彼みたいな人は、ぼくのような何でもない人間なんかとは関わりなくいくのだろうなと思っていた。
ところがある日。
「クラブには慣れたか?」
その「彼」に声をかけられ、ぼくは緊張して思わず固まった。
「分からないことがあったら、なんでも聞いてくれ。ボールの蹴り方とか、そういうのでもいいぞ」
そう言って、彼は笑った。
それから彼は、時々声をかけてくれるようになり、ぼくにサッカーのことを優しく、丁寧に教えてくれた。
もちろん、彼がぼくだけに優しかった、というわけではなかったけれど、それでもチームの司令塔で、チームメイトに好かれていて、監督にも信頼されて。
なのに、ぼくのような上手いわけでも目立つわけでもない部員にも平等に接し、優しくしてくれる彼の器量に、ぼくは徐々に惹かれていった。
そのうち、何かのきっかけで、彼とぼくはお互いの家へお邪魔する仲になっていた。
「なあ、光子郎は行く? 子供会のサマーキャンプ」
7月の初めの頃。学校からの帰り道でふと、彼にそう聞かれた。
半月ほど前に、帰りの会でサマーキャンプのチラシが配られたけど、行っても仕方がないかなと思ってスルーしていた。だけど何故かそのチラシをぼくは無意識にとっておいた。
ぼくはクラスに友達もいないし、クラスメイトもそれなりに行く人もいたけど、行っても楽しくないんじゃないかと思っていた。だから、迷っています、と彼に言った。
「だったら、行こうぜ」
「えっ?」
ぼくは驚いた。
「なんだかオレ、光子郎が一緒なら、面白いキャンプになりそうな気がするんだ。だからさ」
行こうぜ、と彼は言った。
正直、そこまで気乗りはしない。
だけど、彼が行くのなら行こうと、不思議とぼくはそう思った。
彼の言った、面白いこと。それが起きそうな気がしてきたのだ。
次の日、ぼくは早速、サマーキャンプの参加申込書を先生に提出した。
サマーキャンプ中ずっと、彼と一緒にいられるわけではないから、時間潰しのため、パソコンや周辺機器は持って行こうと思った。
そして今日、ぼくはパソコンやデジカメの充電をしっかりやって、明日に備えて眠りについた。
ぼくはまだ知らなかった。このサマーキャンプが、彼とぼくの未来が変わる引き金となることを。
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