6章

 王政は崩壊した。
 夜の女王の侵攻により、宮は壊滅し、王族の者は散り散りとなった。
 目を潰された香花はどうなったのか知らないが、きっと兄弟が連れ出したのだろう。だが、それも少数だ。他の兄弟たちは別の人生を歩むことを決めたらしい。
 夜鷹のいる夜廻に入ることを望んだ兄弟もいた。夜廻もまた被害を受けていたことから、牛目は彼らを迎え入れた。
 国は混乱の時代を迎えることとなった。だが、人々は変わらずここで生活する。人々がここで生活する限り、夜廻は決してなくならないのである。
 夕暮れ、夜廻はいつものように自分の持ち場を確認していた。夜鷹も名札の場所を確認する。
 地図は古いものを使っている。新しいものを用意するほど、落ち着いてはいなかった。
 破壊された宮も地図の中では昔の形のままだった。いつかは変えなければいけないが、それがいつになるかはまだ分からないと寧子は言う。
「あ」
 自分の名札を見て、声が出た。
「なんで」
「先生が夜鷹に渡したいものがあるって」
 夜鷹は寧子の言う通り、ドロシーの研究室に向かった。相変わらずこの部屋は草と花でいっぱいで、香りが複雑に混ざっている。
 ドロシーに渡されたのは、様々な花が入っていた籠だった。乾燥した花は、海向こうから運ばれた花だろうか。
「ちょっと重たいでしょうか」
「いえ。大丈夫です。もう少しもらっていいですか。たぶん足りない」
 夜鷹が頼むと、ドロシーはすぐに追加の花を籠の中にいれてくれた。この国には咲いていない珍しいものが多い。世界の広さを知ることがなく、地下で死んでしまった兄弟たちは、これを見て喜んでくれるだろうか。
「カンテラは必要ですか?」
「大丈夫です。どんな闇の中でも、俺の目は見えてますから」
 弓と刀、それから籠を持った夜鷹は、夜の街に出て行った。
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