もう一度そうぞうを始めよう
一人っ子だったから、妄想するのは得意だった。
玩具があれば、いくらでも遊びを広げられた。玩具が足りなければ、工作で作っていたこともあった。電車の中で見たような、ハリボテの街も作ったことがある。時間が有り余る、ある夏休みのことだ。
宿題のなかには工作があった。自由に作っていいということだったので、大きな模造紙の上に、紙で作った建物や植物を貼り、ペンで道を敷いた。
健太郎が理想とする大きな街を作ったのだ。
作ったあとになって、人がいないことに気づいた。かなり現代的な街ではあるが、ここにはいろんな時代の動物や人間が住んでいることにした。
なかなかカオスな街ではあったが、どんどん満たされていくことに興奮した。
玩具も好きだが、自分はつくるのが好きだった。だから、玩具をつくろうという発想に至ったのだ。
想像することも、創造することも、健太郎は得意だった。だが、働き始めると、その「そうぞう」からかなり離れてしまっていた。もう感覚も鈍っているだろう。
「ケンタがつくりたいと思ったことは、なんでもできるんだよ」
あんの声にはっとした。
「なんでも?」
「うん」
あんは背中にある大きな剣を健太郎に差し出した。
「海の底から、これを持ってきた。ケンタにしか使えない、大事な道具」
「剣ではなく?」
「ケンタが望むものだよ」
受け取ると、剣は大きなドライバーになった。見覚えがある。滑りどめのゴムがついている、健太郎が愛用していたドライバーだ。
「道具は武器だ。そうぞうするために必要な」
ハサミにも、ペンにも、ナイフにも、なんだってなる。健太郎が望めば、剣はたちまち姿を変えた。
まるで、トランスフォームする玩具のように。
「良かった、そうぞうは忘れてなかったみたい」
「そうかな」
「だって、ケンタはずっとそうぞうしてた。そう簡単には忘れないよ」
あんは大きくジャンプし、健太郎の肩に乗った。
「行こう。怪獣の弱点はぼくが知ってる。まめが助けてくれる。今のぼくたちなら、絶対勝てる」
突然、まめは機械的な声を発し、大きく身震いした。
戦隊ヒーローが乗っているような犬型ロボになっている。小型ではあるが。
そうしているうちに、大きな影が、クレヨンで描いたような太陽を隠した。
黒い巨体がそびえ立っている。
たくさんの鋭い歯が並んだ口を大きく開け、健太郎たちを飲み込もうとした。
玩具があれば、いくらでも遊びを広げられた。玩具が足りなければ、工作で作っていたこともあった。電車の中で見たような、ハリボテの街も作ったことがある。時間が有り余る、ある夏休みのことだ。
宿題のなかには工作があった。自由に作っていいということだったので、大きな模造紙の上に、紙で作った建物や植物を貼り、ペンで道を敷いた。
健太郎が理想とする大きな街を作ったのだ。
作ったあとになって、人がいないことに気づいた。かなり現代的な街ではあるが、ここにはいろんな時代の動物や人間が住んでいることにした。
なかなかカオスな街ではあったが、どんどん満たされていくことに興奮した。
玩具も好きだが、自分はつくるのが好きだった。だから、玩具をつくろうという発想に至ったのだ。
想像することも、創造することも、健太郎は得意だった。だが、働き始めると、その「そうぞう」からかなり離れてしまっていた。もう感覚も鈍っているだろう。
「ケンタがつくりたいと思ったことは、なんでもできるんだよ」
あんの声にはっとした。
「なんでも?」
「うん」
あんは背中にある大きな剣を健太郎に差し出した。
「海の底から、これを持ってきた。ケンタにしか使えない、大事な道具」
「剣ではなく?」
「ケンタが望むものだよ」
受け取ると、剣は大きなドライバーになった。見覚えがある。滑りどめのゴムがついている、健太郎が愛用していたドライバーだ。
「道具は武器だ。そうぞうするために必要な」
ハサミにも、ペンにも、ナイフにも、なんだってなる。健太郎が望めば、剣はたちまち姿を変えた。
まるで、トランスフォームする玩具のように。
「良かった、そうぞうは忘れてなかったみたい」
「そうかな」
「だって、ケンタはずっとそうぞうしてた。そう簡単には忘れないよ」
あんは大きくジャンプし、健太郎の肩に乗った。
「行こう。怪獣の弱点はぼくが知ってる。まめが助けてくれる。今のぼくたちなら、絶対勝てる」
突然、まめは機械的な声を発し、大きく身震いした。
戦隊ヒーローが乗っているような犬型ロボになっている。小型ではあるが。
そうしているうちに、大きな影が、クレヨンで描いたような太陽を隠した。
黒い巨体がそびえ立っている。
たくさんの鋭い歯が並んだ口を大きく開け、健太郎たちを飲み込もうとした。