レールが繋がる場所

 宮川は無事、大学に合格し、雪が溶ける前に町を出ていくことになった。
 見送ったのは、保科、桂、松本の三人である。母親の姿はなかった。
 これから電車をいくつか乗り継いで、大学のある都会へ出ていく。電車が来るまで、毎朝勉強していたベンチに座っていた。
「保科さん」
「なんだ」
「廃線の話、あれから何か進みました?」
「そんなすぐには進まんよ。けど、数ヶ月もしたら何かが動き出すと思う」
「あの、無理を言うんですけど。せめて、三年間。三年間は、この駅、守っていてくれませんか。絶対、一度、帰ってくるので。約束します」
「……わかった。それは約束しよう」
 行ってらっしゃい。あの時と同じように、背中を叩いて見送った。
 電車はいつものように静かに発車し、小さくなっていった。その車体が見えなくなったところで、桂がマイクを向けてきた。
「今のお気持ちは」
「そうだなあ……。めでたいなってのと。やっぱりさみしいなってのと。どうしようかな、と」
 違うな、と、発言を取り消すように、顔の前で手を横に振った。
「どうしたらいいかな、だな」
 廃線の話は必ず進む。課題は、駅をどのようにして残すかである。宮川との約束は、必ず守りたい。
 自分ももうこの立場に留まる必要はないのかもしれない。
 宮川の門出は、自分の門出のように思えた。
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