明日もどこかで誰かが

 本棚を見ると、毎回、ある思い出が蘇る。
 ハードカバーのファンタジー。アメリカで出版されたもので、全5巻あるシリーズもの。不思議な力を持つ少年が、自分の力の由来を探しに旅に出る話らしい。この本、実は未読で、ネットにある情報しか私は知らない。それに、本棚には1巻しかない。
 なぜなら、クリスマスにサンタが持ってきたものだったからだ。

 中学生にもなれば、サンタは自分の親であることは知っている。なんなら、小学生の頃から知っていた。狸寝入りをして、サンタの正体を暴いていたからだ。でも、何ももらえなくなるのを恐れ、ずっとサンタはいると信じているようなふりをしていた。
 中学生にもなれば、もうプレゼントは来ないだろう――と思いながらも、でも、期待もしていた。さすがにもう玩具はないだろうから、何かおしゃれなものでも来るんじゃないかと。例えば、アクセサリーとか、化粧品とか。百均で安いコスメを買い漁っていたような子供だったから、親は興味があることは知っているはずだった。
 だが、実際に届いたのは、1冊の本。私が読まないタイプの、分厚いファンタジー。それも海外の。
 これがまだ恋愛小説だったらよかった。ネットで大バズりして書籍化したものが学校で流行っていたからだ。友人に試し読みさせてもらって、とてもおもしろかったから、もし本ならそれがよかった。本屋さんに行ったのなら、それが今売れているものだとわかるはずだ。なのに、なぜ、これ?
 しばらく机の上に置いておき、読んだようなフリをしたが、数日もすれば邪魔になって本棚に入れた。

 悪い意味で、とても強く記憶に残った、最後のサンタからのプレゼントである。
 今となってはわかるのだ。親は悩みに悩んで、これにしたのだと。
 私も、実の娘に何を送ろうか悩んでいる。中1になったから、これが最後のプレゼントにしようと思っている。娘も、昨夜、リビングで「もう来ないだろうな〜」と私のほうを見ながらぼやいていた。
 服? アクセサリー? いや、私のセンスで選ぶのはよくない。
 コスメ? 思春期に入って肌が敏感な娘には与えたくない。それが無駄な抵抗であることは分かっていても。
 だったら、本にしようか。
 でももう、児童書は読まないだろう。恋愛ものも、種類がたくさんあるから悩ましい。ミステリーは娘が読んでいるところを見たことがない。
 じゃあ、ファンタジーだ。
 でも、昔からある、いわゆる「名作」を選ぶのはよそう。最近の、真新しいファンタジーで、日本人が書いた日本人好みのもので、かつ読み切りにすることにした。幸いにも、アニメ映画となった作品があり、それにすることにした。映像作品の原作ならば、読んでくれるかもしれない。

 本棚に手を伸ばした際、ふと、見覚えのある背表紙が目についた。
 自分の本棚に入っているものだ。あの、サンタがくれた本。まったく読まず、本棚で眠っているファンタジー。ここにあるのは1巻だけではない。全巻揃っている。
 迷うことはなかった。
 私は娘に送る本と合わせて、追加で4冊、レジに持っていった。
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