5章 浅葱智哉

 紺野さんの荷物はある程度うちに残っていたから、そのまま東京に帰ることになった。
 東京に戻ってきて、家に着いた時には、日付が変わっていた。
 玄関の鍵を開けて、僕が先に入る。
「おかえり、紺野さん」
「ただいま」
 紺野さんの目を見て、おかえりが言えた。
 この時、紺野さんが微笑んでいるのを見た。こんなに穏やかな表情ができる紺野さんを、僕ははじめて知った。
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