6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ふぅ……なんとか怪我もなく収容所を抜けられたね。でも、またいつオルトやファントムが仕掛けてくるともしれない。くれぐれも、ボクから離れないように。まだブロットに余裕はあるね?」
『はい、どうにか。リドル先輩は……聞くまでもないですね』
どうにかIDカードを見つけて先を進むことが可能となり、リドルが軽く息をつくとアズールとエディシアの様子を伺った。
エディシアは基本後ろに下がっての待機または戦闘だったため、1年生ながらも余力はあった。
リドルに至っては汗ひとつかいていない。
しかしアズールはリドルの問いかけに顔を歪ませ、吐き捨てるように呟いた。
「……さすがは学年首席の優等生。僕のような不出来な生徒のことを庇いながら進んでくださると?お優しいことで」
『あーあ……』
「嫌味な言い方はよせ。キミが不出来なんて一言も言っていないだろう」
『二人とも次のポイントに向かいますよ』
「事実でしょう。なにせ僕は入学以来1度も、リドルさんに成績で勝てていませんから」
アズールの言葉にエディシアは片手で顔を覆った。これで何度目だろうかとウンザリしながら肩を落とす。
一方リドルは慣れたのか軽く注意する程度で返す。その様子も気に食わないのか、アズールは引き続き棘のある言い方をやめない。
エディシアの言葉に2人は返答しないが、止まっていた足を動かし始めたので聞いてはいるらしい。
しかしアズールの言葉に再度リドルは立ち止まり、大きな瞳がこぼれそうなほど見開いた。
「………え?キミ、ボクに勝とうとしていたの?」
「……いけませんか?」
「いや。ただ、思ってもみなかったから少し驚いた」
「これはこれは……」
『誰でもいいから助けて……』
驚くリドルの質問にアズールは不機嫌ながらも答えた。
しかしリドルはアズール本人でなくともいい気がしない返しを続けてしまう。
悪気があるわけではなさそうだが、さらに険悪な状況が続くのかと考えたエディシアはつい弱音がこぼれた。
案の定アズールは「随分と馬鹿にしてくれますね」と苛立ちを露わにする。
「2位から10位の間をフラフラしている僕は、ライバルにすらなりえないと?」
「ああ。だってボクと首席の座を争うつもりなら、キミは気が多すぎる」
「『は?』」
「キミはモストロ・ラウンジの経営だけでなく、積極的に投資なども行っているんだろう?」
アズールは例の”お悩み相談”をポイントカードを埋めればという形で手法を変え、現在も裏で続けている。
そして休みの日には、市場調査と称して学外にもよく出かけていることをクラスメイトのジェイドから聞いていたようだ。
さらに”テスト対策ノート”を寮生から没収したことで目を通す機会もあったようで、自身の時間と能力の多くを他人のテストのために費やしていると指摘されたアズールはポカンとしていた。
「物心ついてからずっと勉学と魔法の研鑽だけに時間を費やしてきたボクに、成績で勝とうだって?”随分と馬鹿にしてくれる”じゃないか」
「……!」
「人を見くびるのも大概におし」
「ば、馬鹿にしたわけでは……。トップを目指す気持ちは誰にだってあるでしょう」
「そうだね。1位を目指すこと自体は素晴らしいことだ。キミも持てる時間の全てを勉学だけに費やせば、常に1位を取り続けられるかもしれないよ。もちろんボクと同着で、だろうけれど」
アズールの努力とリドルの努力は、方向性は違えどそれぞれ正しく評価できるものである。
決してこっちの努力のほうがすごいなどと優劣をつけられるものでもない。
自分と異なる努力は絶対悪だと考えていそうだとエディシアは思っていたが、想定外の意見がリドルから飛んできたことでアズールも面食らった。
間もなくエディシアはなるほどと呟くとアズールの隣に並び耳打ちした。
『リドル先輩なりにアズール先輩をリスペクトしていたんですね』
「あれがリスペクトですって?耳を酷使しすぎておかしくなったんですか?」
『失礼ですね。対策ノートのことも褒めてたでしょう?よかったじゃないですか』
「……そのわりには随分腹の立つ笑顔ですね」
『ふふふ』
「そんなに仕事を倍にしてほしいなら願いを叶えてさしあげなくては。さっそく今から囮になってもらい…」
『無礼をはたらき申し訳ございませんでした』
かなりひねくれた言い方だが、リドルの様子からアズールの姿勢を嫌悪しているわけではないと捉えたエディシアはニタニタと笑みを浮かべる。
なんだかんだエディシアも自身のボスのことを認めていないわけではないので、真っ向から否定しなかったリドルに悪い気はしなかった。
当事者のアズールはそんな後輩の心境を知ってか知らずか、本気かどうかもわからない提案をしようとしたのでエディシアが瞬時に頭を下げた。
自身の後輩の切り替えの早さにアズールは俯きながら小さく口元を緩める。
「ギャギャギャッ!」
『!』
「うわっ!?ファントム……いつの間にこんなに近くに!?」
「アズール、エディシア、ボーッとするな!下がれ!」
『リドル先輩っ…!?』
音も無く突如現れたファントムに3人は驚愕する。
瞬時にリドルがアズールとエディシアの前に立ち塞がりファントムからの攻撃に備えた。