6章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「アズール!!止まれ!止まらないと首をはねてしまうよ!」
『もういいですよリドル先輩、はねちゃってください』
ファントムの撃退には成功したが、攻撃を庇われたことが気に食わなかったアズールは再びリドルと衝突し、ついにリドルとエディシアを置いて次のファントム収容所までアズール1人で進んでしまった。
リドルとエディシアが追い付くと、そこではすでにオルトが姿を現していた。
リドルの制止にエディシアは溜め息交じりに賛成したが、アズールからは品のいい靴音を響かせ足先の向きを変えたと思えば強気の返答が飛んできた。
「ふん、やれるものならやってみればいい!たとえ魔法が封じられても、あなた方と違って腕力には自信がありますから」
「なっ……ボクが非力だと言いたいのか!?」
「事実でしょう。ああ、でも中身が詰まりすぎてダイヤより固くなったその石頭で頭突きされたら……さすがの僕も一発K.Oかもしれませんねぇ!」
「ウギイイイイィィィ!!」
『今あの双子がいてくれればなぁ…………いや、悪ノリしてさらに状況悪化するか……』
煽り耐性の低いリドルは案の定反応し、それによりエンジンのかかったアズールは意気揚々と嫌味をぶつけてみせた。
再度始まった2人の衝突にエディシアは、せめて自身の寮長を制御してほしさにあのウツボの人魚2人が脳裏に浮かんだ。が、すぐにろくでもない未来しか想定できなかったため力なく頭を横に振った。
「ありゃ~。最初より仲間割れが深刻化しちゃってる。僕はいいんだけど……そんなに大声で喧嘩してると、大事なヒントを聞き逃しちゃうかもよ」
『………』
「ヒント?」
「……すけて……たすけて……!」
「「『!!!』」」
オルトが3人の状況を見て一度は眉尻を下げたが、すぐにイタズラっぽい笑顔を浮かべて見せた。
ハッとしたエディシアの耳がピクリとしたのと同時にアズールが聞き返すと、オルトは黙ったまま耳を澄ますようなジェスチャーをする。
それにより一瞬空間がシン…となると、か細く助けを求める女性の声が控えめに響いた。
「フフフ。助けたNPCが先に進むためのアイテムをくれるのは、ゲームのセオリーだよね。ほらほら、仲間割れしてる場合じゃないんじゃない?……このままじゃ彼女が大変なことになっちゃうかもしれないよ」
「出して……誰かぁ……!」
「まさか、ここにあるケージのどれかに閉じ込められているのか?」
『大丈夫ですよ先輩たち。僕がすぐ見つけますから』
リドルが改めて周囲を見渡す。そこは先ほどの収容所と同じ環境整備をしているようで、いくつもの中身が見えない重厚なケージがそこかしこに点在している。
しかし今回は女性の声を聞き分けて探せばいい。そこで猫の獣人であるエディシアが得意げに前に出ると、オルトが「あーだめだめ!」と両手を伸ばし手のひらを左右に振った。
オルトの表情は決して焦りからのものではなく、待ってましたとばかりに楽しげな笑顔を浮かべている。こうなることはあらかじめわかっていたようだ。
「ここでIDカードが見つかるまでの間、エディシア・ファミーユさんは答えに繋がる言動は一切禁止!もちろんペナルティ付きだから下手に動かないことをオススメするよ」
「「『は?』」」
『答えを知っても動くな話すなって?』
「だってチートでらくらく突破なんてつまらないじゃない」
『こっちは遊びじゃないんだけど』
「なんてことを……!」
3人は目を見開いた。さらに続いたオルトの言葉にエディシアは眉間に皺を寄せる。
今回は人数を減らし、尚且つ人間を人質にとることで難易度を上げているらしい。
これ以上何かを言って不利になるわけにもいかないため、エディシアは不満はあるものの口を閉じることにした。
エディシアの寮長であるアズールもオルトのことをキッと睨んだ。
「すぐに助け出します。ケージを叩いて居場所を教えて下さい!」
「む、無理よ……く、暗くてよく見えないけど、同じケージにファントムが……っ!」
「「『なっ!?』」」
「まだ凍っているけど、大きな音を出してファントムが目覚めたら、私……っ!」
「わかりました。できるだけファントムを刺激しないように、じっとしていてください」
『(閉じ込めるだけじゃなくて、本格的な人質だなんて悪ふざけの範疇を越えてる……)』
女性の声はか細く、そして不安げに震えている。
普通の人間がファントムに対抗する術は現状では皆無だろうから無理もない。
まだ凍結は終わっていないようだが、それも時間の問題だ。
「冒険者、大ピーンチ!2人はこの危機的状況を乗り越えられるのか?それでは諸君、検討を祈る!」
「待てっ!グギギ……ッ!ふざけたまねを!!!」
『…………』
「リドルさん、エディシアさん。今は腹を立てている場合ではなさそうです」
「ああ。一刻も早く彼女を助け出そう!」
「エディシアさんは何気ない行動もペナルティ判定されては困るので、私たちから離れて休息に集中してください」
『こんなファントムだらけの空間と固い床で全く休まる気がしませんけどね』
煽るように言って姿を消したオルトに、リドルは行き場を失った手で拳を作り震わせ、エディシアは彼のいた箇所を睨みながら白い尾を床に叩きつけるように揺らした。