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JOJOってGO!‐熊みたいな高校生に絡まれる日々‐

ジョナサン・ジョースターは私の憧れである
彼は優しく紳士的で悪事を見逃さない正義感の強い人だったらしい
でも同時に彼の名前を目にすると、どうしようもなくイライラとした感情がこみあげてくる
羨ましいとかそんなんじゃない、どうしたって追いつけない、彼のようにはなれない
そんなあきらめに似た羨望、嫉妬
元々他人とは距離をとって暮らすことが多かったのもあって
他人に対するそういう感情を持ったことは無かったせいか、最初は酷く驚いた

だって言葉として理解出来ても心では理解したくないと思ってしまうのだ
その黄金の精神は、どうやら私には眩しすぎるらしい
…承太郎に強く当たってしまったりするのもこれが原因だったのかもしれない
反省反省

ジョースターの血
その根っこにある純真な正義感
私には持ちえないもの
羨ましいけど欲しくない
欲しがってはいけないもの

「…なんか寝付けない…」

薄ぼんやりとした月の光に照らされて障子の枠が畳の床に浮かびあがる

あの後ジョセフさんの大冒険活劇に目を輝かせて聞き入り自分の知ってる限りの彼の祖父の活躍を本の内容も混じえて語り尽くした
そしてジョナサンは自分のあこがれであると
こんな大人になりたいのだと恥ずかしながら盛大に語ってしまった
因みに将来考古学者になる夢もある
これは純粋な興味心ってやつだ
そんなこんなで夕食を混じえたあとも和気あいあいと話は続き夜もふけて寝る時間となった

女性だからと部屋をわけてもらう訳にもいかず(というか別に気にしてないので)
こうやって雑魚寝のような形で寝ているものの
周りのいびきも相まって寝付けない寝付けない
因みに花京院はけが人なので別の部屋で寝てます
くっ、こうなるんなら部屋移るんだった…

出ないにしても外の風景を見てれば少しは寝付きも良くなるかもしれないしとそっと起き上がってそろりと部屋から出る

「いたっ…」

広い庭の見える縁側で月を見上げれば
チクチクと自分で傷つけてしまった首が痛んだ

「っ…はぁー…」

急にガタガタと体が震えてしまい驚いて自分の肩を抱えるように腕をまわす
怖かった…ただただ怖かった
本当にひとつ間違えば死んでしまっていたのだ

「っ…う…っ」

自分の中にある今日の出来事への恐怖が再び降り掛かってくる
首にかかったあの圧力も突き飛ばされた時の痛みもジョセフさんに治療してもらった
そのはずなのに、ぶり返すように痛み出したように感じた
止めたいのに涙が止まらなかった
自分でも驚くほどボロボロと涙をこぼす
あぁくそ!とまれ!とまれよもう!

「ひっ…く…ぅう」

「…何泣いてやがんだ」

「空条…」

みっともなく泣きじゃくっている私を見て空条は何を思ったんだろう、馬鹿にされてないといいけど

そんなことを思いながら私はぐすりと鼻をすすった
ほんとにみっともないったらありゃしないな
顔合わせたくねぇよもう

「無理、すんじゃねぇ
怖かっただろ」

「怖かったさ、死ぬかもしれないって思った」

「すげぇな、お前、怖いはずなのに、前向いて戦ったじゃねぇか」

そんなのお前だって同じじゃないのかよ…なんで…なんでそんな平気そうなつらしてんだよ

「空条は怖くなかったの?」

「怖かった、というより腹が立ったな
人質を取って俺と戦おうとする花京院に
どうしようもねぇくれぇ腹が立った」

「そっか、そっか…空条らしい」

ぽつり、ぽつりとお互いから零れる言葉に安心したのか涙はもう流れてこなかった
目元がヒリヒリするがそんなの大して気にならなかった
空条に一言嫌味でも言おうと口を開ける

「もう寝ろ、明日早いだろ」

ち、先手打たれた

「おー、そうだな
ありがとう…空条」

「礼を言われるほどじゃねぇ」

「そうかよ、あ
おやすみ」

「おぅ」

…最後に聞こえた言葉が何となくほっとしたように聞こえたのは気の所為だったんだろうか






“ジョジョ…ジョジョ…どこにいるんだ
何故私に応えてくれない
私はお前を待ち続けているというのに
何故…嗚呼何故なのだ”

誰の声だろうか、思わず目を開けてしまったけれど
ここはどこだろう、真っ暗だ
暗がりに青い炎がチラついてる
その青い炎にどこか見覚えがあるようなないような…


そう言えば昔怪我をした時に助けてくれたお兄さんがこんな目の色をしてた気がする…
あぁ待って…もうちょっと見せてくれたっていいじゃないか!
とても綺麗な色なのに!

「貴様私を見ているな…」

え…?

肉声だ、間違いなく響くようなさっきの声じゃない
後ろからひたりと足音が聞こえた気がして振り返る

「私は君を知らない
君は私を知っているのかね」

ひっ!なんで後ろに

「そう怖がらないでくれ」

ビビるに決まってるじゃん!いきなり後ろから話しかけられてんだから!

「……なら、君が私の方を向けばいい」

え、えぇ…

言われた通り後ろを向いたけど後ろには誰もいない

どうなってるんだ?

「どうやら私の姿は君には映らないらしい」

そうですか…まぁいいやー

「呑気だな」

呑気で結構

「そうだ、君…私と友達にならないか」

断固拒否させていただきます
お前絶対やな奴だから

「それは残念だ」

所でここどこよ

「…さぁな」

なぁんだあんたも知らんのか

「……どうやらまだ夢はさめないらしいな、少し自己紹介でもさせてくれないか」

夢かぁ、夢で完全に意思があるのは初めてかもしれない
何時覚めるのかわからないってのはやだけど
まぁ暇つぶしにはなるな
あ、因みに自分は優李って言いますヨロシク

「ユーリ…か」

あんたは?

「私はDIO」

でぃお?神様っていう意味があるディーオから取ったのかな
めちゃくちゃかっこいいじゃん!

「そういう君はユリウス…いや正確に言えばゲオルギウスから取ったんじゃないかね」

ご名答!カッコイイっしょ!
母さんが名前付けてくれたんだ
父さんものすごく名前つけるの下手でさ
あ、でも名前の意味としては農夫って意味なんだってさ
ふふ、母さんもあんま人のこと言えないよな

「嬉しそうだな」

ごめん
話してばかりだったからつまんなかった?

「そんなことは無いただ…ゲオルギウスという名は聖人の名としても有名だ
随分と…そう、随分と」

……?

「“奴”に似ていると思ってな…」

その時はっきり見えた赤い瞳はギラギラと輝いていて
この人はあのお兄さんと正反対だと思った

ふと自分の額に手を触れられたような感覚を覚えて自分の額を触る
別に何があるというわけじゃない
ただこの触れ方に妙に覚えがあったのだ


あ、これは知ってる感じだ
すごい安心するこの感じ…

でも、思い出せないなぁ…

まぁいいか、眠くなってきたし
いや待て夢ん中で眠くなるってどういうことじゃい…



鳥のさえずりがここまで近く聞こえるなんて初めてだぁ…なんて呑気なことを考えながら起き抜けのぼんやりした頭を覚醒させる

「おはようございます…」

「眠れたか」

「…んー、まぁまぁ
なんか…変な夢見たような…見てないような」

「そうか」

「空条は?」

「ぐっすりだぜ」

「そりゃ何より、あー水もらってきていいかな」

「おう、台所はそこの奥だぜ」

「ありがとう」

「あ、ホリィさんおはようございます」

「ふふ、おはようユーリちゃん」

あれ?なんだろう、ホリィさんなんか調子悪そうだ…

「ホリィさん、ちょっと顔色悪いですよ?大丈夫ですか」

「え?そう?そうかしら?今日はいつになく元気なのよ!」

ニコニコとピースサインまでくれるホリィさんにほっこりとした心情になりながらも
心配せずにはいられず声をかけてしまう

「…でも無理は良くないと思います
今日はゆっくり休んだ方がいいと思いますよ」

「…もうっ、ユーリちゃんに心配かけちゃうなんてお母さん失格だわ」

困ったような笑顔を向けるホリィさんが間違いなく無理していると確信できた
だからとはいえ無理矢理に休ませる訳にもいかないし
とりあえず期をみてもう一度言い出してみよう

「そんな事ないです、自分は結構心配性なもので
ご迷惑だったらすみません」

「そんなことないわ!心配してくれてありがと、Thank you」

「あ、水貰ってもいいですか?」

「えぇどうぞ」

ホリィさん…やっぱ、すごく調子悪そうな感じだ…みんななんで気づかないんだろう
私だけなんだろうか、気づいてるのは
てか空条!お前息子なんだからホリィさんの異常に気づけよ!!
くそ全然気づいてない…
嫌な予感がする…心の底からざわざわするって言うか
何かヤバいことが起こるっ言う感じ
朝食の時も誰一人ホリィさんの異常に気づいてなかった

いやいやいやいや、呑気すぎか!?

「ホリィさん、食器の片付け手伝います!
空条、お前はちゃんと学校行く準備しろよ、今度こそは学校に連行してやる」

「ちっ、それなら拘置所の方がまだマシだぜ」

「文句言っとらんではよ支度しろや」

「やれやれ」

空条がぶつくさ何か言いながら支度に戻って行くのを目にしながら
もうちょい親孝行しろよな
とか柄にもないことを考えてしまったのも全部このどう見てもやばい状況に誰も気づかないせいだちくしょう


「ユーリちゃん、ありがとう」

「はい?」

ふと物思いにふけりすぎてたせいでホリィさんの言葉がちゃんと理解できてなかったぞ…
まずいまずい

「ふふ、承太郎と仲良くしてくれて嬉しいの
あの子あんまり友達作ろうとしないから」

あー、何となく言いたいことは察しがつく

「まぁ、あの顔とあのガタイですから
友人ってより子分みたいなのが多いですしね」

「だから友達になってくれたユーリにはとても感謝してるの」

「…そう…え?」

友達になった覚えなんてないのですけども!!!??
そういえばホリィさんに友達じゃないって言ってない…
いやもしかしてこれは空条が勝手に友達とか言い出してるやつか?

「ふふふ、承太郎も嬉しそうに言ってたのよ
口は悪いけどとても勇ましくてかっこいいやつだーって
あと無理に教室から引っ張ってきてるのに文句は言っても着いてきてくれるから優しいって
会ってみたら承太郎の言う通りで私もユーリちゃんにメロメロよ」

Kuaaaaー!知らん間に友達認定されてたし、あいつホリィさんアマ扱いしてるわりにはよく話してんじゃねぇかこんちくしょう恥ずかしいぞこのやろー
でもホリィさんに好かれるのは嬉しいのでそこはよくやってくれたなって感じだ

「そ、そんなことは無いです…はは…」

「それでね…っ!」

「ホリィさん!?」

ぐらりと体制を崩してしまったホリィさんを慌てて抱きとめる
でも食器は助けられなかったすまんそ食器…

いやそれよりもホリィさん!

「ホリィさん!しっかり!」

「う…っ」

やっぱり無理してたんだ、まぁ分かってたけど
手のひらから感じる熱があまりに高い
このままホリィさんが死んでしまうんじゃないかと思ってゾッとしてしまった

「だれか!アブドゥルさん!空条!ジョセフさん!!誰か来てください!」

出そうと思えば大声なんて出るもんよ
なるべく響くように腹に力を入れて叫びましたともえぇ

「どうしたんだユーリ!
なっ!これは!!」

「ホリィさんが急に倒れたんです
ひどい高熱だし、すぐ病院に連れていかないと!」

「あぁ、その前に失敬」

「アブドゥルさん!?」

いや待て失敬じゃないだろ何服めくってんだよ!?

「…ほ、ホリィ」

後ろから聞こえた悲痛な声にそんなツッコミは飲み込むしか無かった

今日はなんて日だろうか、きっと厄日なんだと思いたい

どうやらアブドゥルさんが言うにはホリィさんは今スタンドというものが強制的に発現してしまい
心優しいホリィさんはその発現したスタンドを御しきれてないらしい

なにそれ超能力より厄介じゃん
やば何それ怖

でも私にはアブドゥルさん達に見えているようなものは見えない

とてもとても無力だ
悔しくてたまらない
なんか後ろで勝手に会話が進んでハブられていることよりも
ホリィさんの苦しみを今の状態を理解できないことの方が悲しかった

「…ホリィさん…っ痛!」

急に首を一周するようにズキンと激しい痛みに襲われ蹲る

びっくりした…なんだったんだろう今の…
まるで自分の首が切り離されたかと思った…

「どうした優李」

「…い、いや…なんか急に首が
多分昨日ついた傷口が引っ張られて痛たみがでたんだと思う」

にしては随分鈍くて強い痛みだったけど…
まぁ気にしてもしょうがないか

「ところで空条、これからお前はどうすんだ」

「どうするって…」

「ホリィさんを助けるためにはなんか倒さなきゃ行けない奴がいるんだろ
えっとーで、でぃ、…そうDIO!DIOだ
そいつを倒しに行くんだろ」

「あぁそうだな、場所も…分かってるぜ…ってまて
なんでてめぇがDIOを知ってやがる」

「おいおい、後ろで話進めといてそりゃないぞ、ちゃんと聞こえてっからな」

「あ」

「うっかりさんめ、関係者以外は締め出しとくもんだぜ」

「まさかてめーに言われるとはな」

全く何も無いところに空条は目配せをする
きっとこいつのスタンドがそこにいるんだろう
見えないもののスタンドがいるである方向に顔を向ける
するとふわっと用紙を投げ渡される形で渡された

真っ黒背景にぼんやり浮かぶ虫と人
あれ?この人どっかで…

「…?」

「いや、この人なんか見た事あるなって」

「なんじゃと!?
い、一体どこでじゃ!」

「うわっ!」

いきなり胸ぐら掴まれて危うく転びそうになるも、壁もないのに何かにゴツンと当たって私が転ぶことは無かった、後頭部を壁(?)に強か打った私は悶絶しながらうずくまる

待ってめちゃくちゃ痛い

「おいジジイ!」

「っ…す、すまん
つい我を忘れてしまった」

少しクラクラする頭にムチを入れて見た夢を思い出す

「ぼんやりとしか思い出せないけど夢で…今日の夢だった
最初は真っ暗で姿も見えなかったんだけど目が覚める前顔みた気がする
ぼんやりだけど額にハートマークの飾り付けてた…ような
あと…目がとても綺麗だったのを覚えてる
血の紅、でも濁った色じゃない
すごく澄んだ目をしてた怖いくらいに
まるで…まるであの本に書かれてる吸血鬼みたいに
あ!そういえばあいつも同じ名前を…」

なんで気づかなかったんだ!私バカか!馬鹿だな!

「話した内容は?」

「あー、えっと、名前の話、こいつが私の名前がゲオルギウスっていう北欧の聖人から取られた名前だって言い当てて私がはしゃいでた記憶はあるよ」

「そうじゃったのか」

「ゲオルギウスとちっとも掠ってねぇぞ?どういうことだ」

「ゲオルギウスのロシア表記がユリウスなんだよ
そこから取ってる
ちゃんとその手の知識ある人じゃないと分かんないんだよ
私も親に聞くまで全然知らんかった」

「なるほどそれなら言い当ててもらったら嬉しいだろうな
相手が悲しいことに悪のカリスマだった訳だが」

「まぁテメーはなんともなくて少し安心したぜ」

なんともないんだろうか…?
思わず触られた額に手を当てる
まぁ別に何があるというわけでもなく
ただほんの少しだけツキリと傷んだ気がした
まぁそれは勘違いであることはわかり切っているので早々に頭の隅に追いやることにしとく

「で、結局行くのか」

「あぁ」

「やはりエジプトか
この花京院も同行させてもらおう」

「待機させて悪いな花京院」

「いえ、お気になさらず」

いやほんと扉の後ろにいたの気づいてたんだけど本人が出てくるタイミングが分からないしちょうどいい所で話切り上げといてよかった
たぶん花京院くん話初めからスタンバってたし…

「花京院…てめぇ」

「私の脳に肉の芽を埋め込まれたのは3ヶ月前、家族でエジプトを旅行している時にDIOに出会った
やつは何故かエジプトから動きたくないらしい」

「エジプト…肉の芽…?よくわかんないな
でも2人の話で何となくわかったことはある
多分DIOはまだジョナサンの肉体を御しきれてないんだ
体に振り回されてる形になってるんだよ
だから空条やジョセフさんホリィさんにスタンドという形でSOSあるいは啓示をしたんじゃないかい、今ならまだ間に合うって」

「もしかしたらそうなのかもしれんな」

「でもホリィさんにはスタンドの存在が返って悪影響を与えてしまった
そんな感じがする」

全くの勘でしかない、でもこの勘…信じられそうな気がした

「優李…」

空条が視線をこちらに向けてくる
さりげなく下の名前で呼んでんじゃねぇよ
てめぇに許可した覚えはねぇぞ
という言葉はとりあえず飲み込んだ

「私は足でまといになるだろうからついて行かないけどみんなが無事帰って来れることをいの…」

祈っている…そう言葉にしようとした時
後ろから鈍器で殴られたような激痛に見舞われ思わず頭を抱えて膝をつく

でぇーーー!?
なんだよいきなり!

「ゔぁ…ぐぅぅ」

「どうした!優李!」

「優李さん!?」

嗚呼痛い!痛い!!頭がえぐられているみたいだ
みんなの声がどんどん遠くなっていく

見慣れない風景や景色に見知ったヤツらが見える
これは旅の風景か!
そうして最後にちらりと見えたあるビジョンに驚いて目を見開いた
死体だ…知ってるヤツらの…
アブドゥルさんやジョセフさん…花京院くんや空条まで倒れていた
そしてその暗闇にいたのは間違いなくDIO!
まさか
みんな…みんなこの度で死ぬって言うのか?

「はぁ…はぁ…嘘だろ…そんな…」

「大丈夫なのか!お前もスタンドが発現したって言うんじゃないだろうな!優李!」

「な、何があったんじゃ!」

「ちがう…と、思いたい…けど」

慌てたようなジョセフさんと空条の声に軋んだブリキの玩具のように視線を向けることしか出来ない

まだ頭がガンガンする
笑顔を見せて安心させようと思ったが頬がひきつってしまう

あんなえげつない死亡現場見せられて笑顔でいられる方がおかしい訳だけど
特に花京院くん

「…花京院…くん、君は行かない方がいい…って言っても…はは…行くんだろうな」

「あぁ、誰になんと言われようとこの旅には絶対ついて行く」

うわぁ、こいつも空条タイプかぁ…笑えねぇ
どうしろってんだよもぅ

「…そうか…」

「お前もこい」

「は!?」

何言ってんだこいつ馬鹿なの?

「な!何を言っとるんじゃ!承太郎!
彼女はスタンドも持っていないのじゃぞ!」

ジョセフさんの言葉に空条は帽子の唾をまゆより下に下げる
ちょっと申し訳なく思ってる時の仕草だ

「でもなんか見たんだろ
さっき花京院を見る顔があんまりにも酷かったんでな
もし最悪の未来ってのを見ちまったんなら
きっとこれからの旅で役に立つ
それに、お前には“特技”があったじゃねーか」

察しが良すぎます空条くん
さては貴様死に戻りでもしたな
そんなふざけたこと言ってられないけど

「と、特技?」

「知らねぇふりしたって無駄だぜ
俺とお前はガキの頃に一回会ってる
そんときお前摘み取った蕾の花を咲かせてたじゃねぇか」

え?え?こんなガタイのいい奴いたっけ?
ンーン?思い出せないぞ?

「……覚えてないな、いつだろう
お前みたいな派手な学生、嫌でも覚えるはずなんだけど」

「犬」

犬…犬…あ!

「……あぁ、そうか、あの時の生真面目そうな……ってあれお前だったのかよ!!
変わりすぎだろ!?」

「ふん、テメーは変わらなすぎて笑っちまうけどな」

うわぁーあの高身長細身系真面目美形くんがこんなにむさ苦しい不良系ハンサムに生まれ変わるとは…世も末だァ
一体あの数年で何があったんだよ…

「うるせーうるせー
でも、あれはもう使えない
使い方だって忘れた」

「体は覚えてるもんじゃねぇのか」

そういうもんでもないだろうに…
まぁダメ元でやって見るか

「わかんないけど、今やってみても?」

「あぁ」

「うぅー、あの時なんて言われたっけ
呼吸…そう呼吸が鍵だって言ってた
……コォーーーって感じの音が出てたな…」

少し気を緩めて力を抜く
あとは薄ぼんやりと覚えている部分を繋げればいい
すぅと息を吸うと体は自然と“あの呼吸”をする体制になった

自分の口からは独特の懐かしい音が発せられる
昔これが成功した時ほんと嬉しそうにしていたな、あのお兄さん

「な!なんと!!」

「これは、一体
優李さんのからだからとてつもない生命エネルギーが溢れだしている!!?」

「これは!波紋じゃ!!
この子は波紋を使えるんじゃ!」

そこまで驚くもんなんだろうか
…体質にもよるとか言ってたし、天性の才能とかそういうのが必要だったんかね

「…すげえもんだな
圧倒されちまったぜ」

「げほっ、でもこれ出来るだけじゃ意味ないんだよ承太郎
こんなんじゃせいぜい自分かけが人の回復しか出来ないし
それだったらジョセフさんに任せた方が使い方もしっかりマスターしてるわけだから安心できるだろ?」

こっちなんて1回呼吸しただけでむせこんでるわ、ブランク何年あると思ってんだよ

「君はそれを波紋だと知っていたのかい?」

ふとアブドゥルさんが不思議そうにこっちを見てくる

「いいや、全く
“身を守るため自分の傷を癒すためそして誰かを救うためにその力を使ってくれ”って私にこれを教えてくれた人は言った
戦うことは望んでなかったみたいだったな
ちょっとした超能力みたいなもんだろうと思ってたんだ
でも使ったりすると気味悪がられるから、いつしかそれを忘れようとして…
あーそうそう、前それが原因でいじめられてさ
教えてくれた人の顔すらもう覚えてない
…でも、とても優しい人だったのは覚えてる」

「…そうだったのか」

「無理をさせてすまんな、しかし波紋使いはもういないと思っていたがこんな所で出会うとはな」

「波紋使い見習いですよ
意識すれば呼吸が出来るだけで戦えないですから」

「それでも人数は多い方がいい」

「まだ言うか空条、いい加減にしろよ」

「それともうひとつ聞いてねぇ事があった」

「なんだよぅ」

「てめぇ、なんで花京院のスタンドに触れられたんだ?
てめぇ自身はスタンド使いじゃねぇだろうが」

言われてみれば…アブドゥルさんの手はホリィさんのスタンドに触れられなかった
それに対して私は…
やだーガッツリホリィさんのスタンドに触れてたじゃないですかー!なんで忘れてたんだよほんと
ハイエロくんの時といい何気に当たり前超越し始めて本人ごとだけどめっちゃ怖い

「うわ言われて見りゃやばいな、見えないのに触れるとか」

「もしかしたら見えていないだけでスタンド自体は発現しているのでは…?」

「てめぇみたいな攻撃神の塊ならきっとお袋みたいにはならんだろうよ」

「おいてめぇそりゃどういう意味だゴラ」

「そのままの意味だぜ、しっかりその頭で理解しな」

「こんっっの腹立つ言い方しおってからに!」

「まぁまぁ二人とも落ち着いてください」

そうこうしてるうちに言いくるめられて旅にどうこうさせられたのは言うまでもない

とりあえず…親になんて誤魔化そうか…

……To be continued
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