Episode1 ずっとこの日を待っていた
あの嫌な一戦を終え、キャンプシップからベースシップに戻ると、どうやら元の時間軸に戻ってきていたらしくアフィンがゲート前でうろついているのが見えた。
どうやら時間は戻ってきてからそこまで進んでいないらしい。
むしろ少し戻っているような気がする。
「アフィン……」
「ふぃー、相棒おつかれー
あの子は?」
「メディカルセンターに預けてきた」
時間遡行をする前にその事を伝えていたはずだが、戻ってきたときの時間にも差があるらしい。
確認すれば出発した時間の10分前だった。
なるほどアフィンが知らないわけだ。
「そっか、なら安心だな
……それにしても、俺たちの終了任務ってどういう結果になっちまったんだろうな
悪い結果じゃないとは思うけどなー」
「大丈夫だろう、そこまできにすることでもない」
「相棒ならそう言うと思ったぜ」
なるほど自然と次元が収束するようになっているとは聞いたがこういうことなのか。
パラドックスが起きないのは嬉しいが、下手に使っていると会話に齟齬がうまれそうだな
気をつけなくては。
「じゃ、俺はこのままロビーぶらついてくるよ
じゃあ、またなー」
「あぁ」
しばらく俺もロビーを散策しようかと思った時、タイミングを見計らったかのように連絡音が鳴り響く。
「フィスウル・ユリスさんですか?
私、メディカルセンター看護官のフィリアと申します。
あなたがナベリウスにて保護した女性がつい先程目を覚ましました、ですが…あの…。
とにかくメディカルセンターへ1度着ていただけませんか?」
「?」
会話の中に妙な歯切れの悪さに疑問を持ちながらもメディカルセンターへと向かうと一人の女性が入口に立っていた。
隣にはナベリウスで発見した少女もいる。
「フィスウル・ユリスさんですね
お待ちしていました」
「あぁ」
少女の方に視線を向けると、少し戸惑いがちにこちらに視線を返す。
フィリアの戸惑った顔に理解が及ばず疑問は増えていくばかりだ。
「それで、保護された子なんですが…ほとんど喋ることも無く……」
「……フィスウル・ユリス」
「ん?」
少女から呟かれた言葉は間違いなく自分の名前だ。
しかし俺自身は彼女に自分の名を苗字込みで伝えた覚えはない、そもそもアークスではフィスウルとしか呼ばれないことの方が多いのだ。
フィリアに話しかけた時も俺の名前が聞こえる位置にはいなかった。
「え?名前教えたんですか?」
「いや……」
「頭の中に……聞こえてきた
……わたしは、マトイ」
マトイ……。
どこか聞き覚えのある懐かしい名前に余計混乱してしまう。
彼女は一体何者なんだ?
渦巻く疑問と共にひとつの可能性が浮かび上がる。
もしかしたら彼女は俺の失った記憶に何らかの形で関わっているんじゃないかと……。
そうでなくても、昔の俺と同じように記憶を失っているなら助けてやらなければ……。
そんなふうに考え込んでいる俺をよそに検索の終わったフィリアが顔を上げる。
「データベースとの一致件数……なし
少なくともアークス内に登録情報はありませんね
……どこかの星の原住民?
でも生体パターンはアークスみたいだったのに……」
フィリアの言葉にかつてライゲンに言われた言葉が蘇る。
生体パターンはアークスのものに近いが……何故あの星にいたんだ?
親はいないのか?故郷のことを覚えていたりはしないか?
あの時は矢継ぎ早に質問された上にほとんど強制的に連れていかれたものだからあまり内容を理解していたとはいえないが。
今思えば純粋に心配してくれていたのだと理解出来る。
とはいえ質問される前のことは全くと言っていいほど覚えていなかったが。
そして、自分と似た状況にいる彼女に親近感が湧くのも仕方ない。
保護者にも似た感覚で俺は、少女……マトイを見つめた。
「ねぇ、マトイちゃん
あなたどこから来たのかしら?
どうしてあの星にいたの?」
「……う……フィスウル・ユリス」
慌てて俺の後ろに隠れたマトイに俺もフィリアも困惑する。
「お、おい……どうした」
「あ、ああっと、怖がらせちゃった?
ごめんなさい、他意はないの
それにしても……あなたに懐いてる感じ……まるで刷り込みみたいですね
彼女に心当たりとかあります?」
「悪いが……面識はないな……」
俺はゆっくり首を横に振る。
フィリアは少し考える様子を見せるとまたデータボードを見ては考え、を繰り返していた。
マトイはその間も俺の後ろに隠れるように立っている。
「悪いな、いきなり色々質問されて驚いただろう
心配をしているだけだから怖がらないでやってくれないか、マトイ」
「……う、うん」
「ふぅむ、知己でもないとなると分からないことだらけですね」
「でも放っておけません!
フィスウル・ユリスさんはアークスとしての活動がありますからずっと此処にはいられませんし。
もし良かったらこのこの世話私に任せてもらってもいいですか?
何かあったらすぐ連絡しますから」
「あ、あぁ……そうしてくれると助かる」
酷くやる気に満ち溢れたその声と表情に押され気味になってしまった俺は、流され気味に返事をしてしまった。
……本当にこれでよかったのだろうか。
マトイ本人も嫌がる様子はないのでこれでいいのだと思うが、何故だろう少し腑に落ちない。
そう思っていると後ろで服を引っ張るマトイ
視線をそちらに向けると少し心配そうな表情をしていた。
「あ…フィスウル・ユリス……
…………怖い感じがするの……気を……付けてね」
「あぁ、分かった」
怖い感じか……これからなにか危険なことが起こる可能性があるということなのだろうか。
増えてしまった疑問を心の隅に放り投げて今日は寝ようと俺は思考を放棄するのだった。
どうやら時間は戻ってきてからそこまで進んでいないらしい。
むしろ少し戻っているような気がする。
「アフィン……」
「ふぃー、相棒おつかれー
あの子は?」
「メディカルセンターに預けてきた」
時間遡行をする前にその事を伝えていたはずだが、戻ってきたときの時間にも差があるらしい。
確認すれば出発した時間の10分前だった。
なるほどアフィンが知らないわけだ。
「そっか、なら安心だな
……それにしても、俺たちの終了任務ってどういう結果になっちまったんだろうな
悪い結果じゃないとは思うけどなー」
「大丈夫だろう、そこまできにすることでもない」
「相棒ならそう言うと思ったぜ」
なるほど自然と次元が収束するようになっているとは聞いたがこういうことなのか。
パラドックスが起きないのは嬉しいが、下手に使っていると会話に齟齬がうまれそうだな
気をつけなくては。
「じゃ、俺はこのままロビーぶらついてくるよ
じゃあ、またなー」
「あぁ」
しばらく俺もロビーを散策しようかと思った時、タイミングを見計らったかのように連絡音が鳴り響く。
「フィスウル・ユリスさんですか?
私、メディカルセンター看護官のフィリアと申します。
あなたがナベリウスにて保護した女性がつい先程目を覚ましました、ですが…あの…。
とにかくメディカルセンターへ1度着ていただけませんか?」
「?」
会話の中に妙な歯切れの悪さに疑問を持ちながらもメディカルセンターへと向かうと一人の女性が入口に立っていた。
隣にはナベリウスで発見した少女もいる。
「フィスウル・ユリスさんですね
お待ちしていました」
「あぁ」
少女の方に視線を向けると、少し戸惑いがちにこちらに視線を返す。
フィリアの戸惑った顔に理解が及ばず疑問は増えていくばかりだ。
「それで、保護された子なんですが…ほとんど喋ることも無く……」
「……フィスウル・ユリス」
「ん?」
少女から呟かれた言葉は間違いなく自分の名前だ。
しかし俺自身は彼女に自分の名を苗字込みで伝えた覚えはない、そもそもアークスではフィスウルとしか呼ばれないことの方が多いのだ。
フィリアに話しかけた時も俺の名前が聞こえる位置にはいなかった。
「え?名前教えたんですか?」
「いや……」
「頭の中に……聞こえてきた
……わたしは、マトイ」
マトイ……。
どこか聞き覚えのある懐かしい名前に余計混乱してしまう。
彼女は一体何者なんだ?
渦巻く疑問と共にひとつの可能性が浮かび上がる。
もしかしたら彼女は俺の失った記憶に何らかの形で関わっているんじゃないかと……。
そうでなくても、昔の俺と同じように記憶を失っているなら助けてやらなければ……。
そんなふうに考え込んでいる俺をよそに検索の終わったフィリアが顔を上げる。
「データベースとの一致件数……なし
少なくともアークス内に登録情報はありませんね
……どこかの星の原住民?
でも生体パターンはアークスみたいだったのに……」
フィリアの言葉にかつてライゲンに言われた言葉が蘇る。
生体パターンはアークスのものに近いが……何故あの星にいたんだ?
親はいないのか?故郷のことを覚えていたりはしないか?
あの時は矢継ぎ早に質問された上にほとんど強制的に連れていかれたものだからあまり内容を理解していたとはいえないが。
今思えば純粋に心配してくれていたのだと理解出来る。
とはいえ質問される前のことは全くと言っていいほど覚えていなかったが。
そして、自分と似た状況にいる彼女に親近感が湧くのも仕方ない。
保護者にも似た感覚で俺は、少女……マトイを見つめた。
「ねぇ、マトイちゃん
あなたどこから来たのかしら?
どうしてあの星にいたの?」
「……う……フィスウル・ユリス」
慌てて俺の後ろに隠れたマトイに俺もフィリアも困惑する。
「お、おい……どうした」
「あ、ああっと、怖がらせちゃった?
ごめんなさい、他意はないの
それにしても……あなたに懐いてる感じ……まるで刷り込みみたいですね
彼女に心当たりとかあります?」
「悪いが……面識はないな……」
俺はゆっくり首を横に振る。
フィリアは少し考える様子を見せるとまたデータボードを見ては考え、を繰り返していた。
マトイはその間も俺の後ろに隠れるように立っている。
「悪いな、いきなり色々質問されて驚いただろう
心配をしているだけだから怖がらないでやってくれないか、マトイ」
「……う、うん」
「ふぅむ、知己でもないとなると分からないことだらけですね」
「でも放っておけません!
フィスウル・ユリスさんはアークスとしての活動がありますからずっと此処にはいられませんし。
もし良かったらこのこの世話私に任せてもらってもいいですか?
何かあったらすぐ連絡しますから」
「あ、あぁ……そうしてくれると助かる」
酷くやる気に満ち溢れたその声と表情に押され気味になってしまった俺は、流され気味に返事をしてしまった。
……本当にこれでよかったのだろうか。
マトイ本人も嫌がる様子はないのでこれでいいのだと思うが、何故だろう少し腑に落ちない。
そう思っていると後ろで服を引っ張るマトイ
視線をそちらに向けると少し心配そうな表情をしていた。
「あ…フィスウル・ユリス……
…………怖い感じがするの……気を……付けてね」
「あぁ、分かった」
怖い感じか……これからなにか危険なことが起こる可能性があるということなのだろうか。
増えてしまった疑問を心の隅に放り投げて今日は寝ようと俺は思考を放棄するのだった。