Short Episode
龍族は不思議な存在だ。
固い鱗と鋭い爪を持つ手先を器用に扱い武器をたずさえる。
その身は頑丈でなかなか傷はつかない。
だが、同時に龍族にとってもアークスと呼ばれる存在は不思議な存在なのだろう。
現に隣で俺を凝視する龍族がいい例だ。
「……何をそんなに凝視しているんだコ・リウ」
「すまない 気に障ったか?」
「いや、気になっただけだ」
表情が読み取りにくいぶん言葉の音で感情を読み取る。
どうやらコ・リウは申し訳ないと思っていたらしい。
凝視されているのが気になっていただけだった俺は言わない方が良かったかと頭をかいた。
「お前たちの手は 鱗がないな」
「手?あぁ…そうだな」
武器を置いたコ・リウは自分の手のひらを広げて俺の手と見比べる。
手袋をしている俺の手から、ちらりと手甲の光が反射する。
「爪も ないのか」
「爪はあるぞ、ほら」
手袋をしているため爪があると気づかなかったのか俺が手袋を外すとおぉ、と謎の感嘆の声をはいた。
「…………? お前は 手が傷だらけだ
手を保護しているのは そのせいか?」
「そうだな……あまり見栄えのする傷じゃない」
手袋を外した自分の手を見る。
切り傷や手術痕だらけでボロボロの……挙句指先は壊死しかけてさらに変色してしまっている手を見て俺はため息をついた。
昔無理をしたがゆえの代償
薄ぼんやりと感覚を掴める程度の触覚しかなく、痛覚すら薄い。
きっと指を切り落とされても気づきなどしないだろう。
そんなことをコ・リウにボヤくと「何故そこまでして戦うのだ」と言われた。
「理由……理由は必要なのか?」
「貴様…… それを本気で 言っているのか? だとしたら 相当な変わり者だ」
俺の言葉に酷く驚くコ・リウの様子に首を傾げる。
「変わり者?」
「我々は 一族の誇りを胸に 戦っている それは 戦う理由にもなる」
コ・リウは自分の胸部に手を当てる
誇り……俺にはよくわからない感情だ。
命令があるからそれに従っているだけではないのか……。
俺にも戦う理由ならあるにはある……。
だがそれがそこまでして戦う理由なのか……となると正直よくはわからない。
「……」
「貴様には それがない まるで 物のようだ」
「物……」
確かに今の俺は物のようなものだろう……。
命令通りに任務をこなし、マターボードの導きに沿って動くだけなのだから……。
どれだけ自分の意思とはいえ、そこには必ず誰かの意思がある……。
自分の意思で決めていることなんて片手で数えられるほどしかないような気がした。
そう考えるとコ・リウの言葉は心の中にストンと落ちていく。
1人物思いに耽ける俺にコ・リウは慌てたような声を出した。
「……! すまない 今のは失言だった」
「……いや、俺もきっと
今のあり方に疑問を持っていたのかもしれない
コ・リウ、お前のおかげだ
おかげで突っかかっていたものが取れた気がする」
「そうか それならいい」
ゆっくり頷くコ・リウ。
俺は軽く息を吐くと、地面におろしていた武器を持ち上げる。
「フィスウル・ユリス
お前という戦士を 私は誇りに思う!」
任務をこなすために踏み出した足とともに軽快な音が後ろから聞こえた。
「俺もお前のような戦士を誇りに思う!
また暇があったら話でもしよう!」
俺もまた声をはりあげる。
アキの呼ぶ声とコ・リウの嫌そうな声を聞きながら、俺は空に浮く大地を進んだ
fin
固い鱗と鋭い爪を持つ手先を器用に扱い武器をたずさえる。
その身は頑丈でなかなか傷はつかない。
だが、同時に龍族にとってもアークスと呼ばれる存在は不思議な存在なのだろう。
現に隣で俺を凝視する龍族がいい例だ。
「……何をそんなに凝視しているんだコ・リウ」
「すまない 気に障ったか?」
「いや、気になっただけだ」
表情が読み取りにくいぶん言葉の音で感情を読み取る。
どうやらコ・リウは申し訳ないと思っていたらしい。
凝視されているのが気になっていただけだった俺は言わない方が良かったかと頭をかいた。
「お前たちの手は 鱗がないな」
「手?あぁ…そうだな」
武器を置いたコ・リウは自分の手のひらを広げて俺の手と見比べる。
手袋をしている俺の手から、ちらりと手甲の光が反射する。
「爪も ないのか」
「爪はあるぞ、ほら」
手袋をしているため爪があると気づかなかったのか俺が手袋を外すとおぉ、と謎の感嘆の声をはいた。
「…………? お前は 手が傷だらけだ
手を保護しているのは そのせいか?」
「そうだな……あまり見栄えのする傷じゃない」
手袋を外した自分の手を見る。
切り傷や手術痕だらけでボロボロの……挙句指先は壊死しかけてさらに変色してしまっている手を見て俺はため息をついた。
昔無理をしたがゆえの代償
薄ぼんやりと感覚を掴める程度の触覚しかなく、痛覚すら薄い。
きっと指を切り落とされても気づきなどしないだろう。
そんなことをコ・リウにボヤくと「何故そこまでして戦うのだ」と言われた。
「理由……理由は必要なのか?」
「貴様…… それを本気で 言っているのか? だとしたら 相当な変わり者だ」
俺の言葉に酷く驚くコ・リウの様子に首を傾げる。
「変わり者?」
「我々は 一族の誇りを胸に 戦っている それは 戦う理由にもなる」
コ・リウは自分の胸部に手を当てる
誇り……俺にはよくわからない感情だ。
命令があるからそれに従っているだけではないのか……。
俺にも戦う理由ならあるにはある……。
だがそれがそこまでして戦う理由なのか……となると正直よくはわからない。
「……」
「貴様には それがない まるで 物のようだ」
「物……」
確かに今の俺は物のようなものだろう……。
命令通りに任務をこなし、マターボードの導きに沿って動くだけなのだから……。
どれだけ自分の意思とはいえ、そこには必ず誰かの意思がある……。
自分の意思で決めていることなんて片手で数えられるほどしかないような気がした。
そう考えるとコ・リウの言葉は心の中にストンと落ちていく。
1人物思いに耽ける俺にコ・リウは慌てたような声を出した。
「……! すまない 今のは失言だった」
「……いや、俺もきっと
今のあり方に疑問を持っていたのかもしれない
コ・リウ、お前のおかげだ
おかげで突っかかっていたものが取れた気がする」
「そうか それならいい」
ゆっくり頷くコ・リウ。
俺は軽く息を吐くと、地面におろしていた武器を持ち上げる。
「フィスウル・ユリス
お前という戦士を 私は誇りに思う!」
任務をこなすために踏み出した足とともに軽快な音が後ろから聞こえた。
「俺もお前のような戦士を誇りに思う!
また暇があったら話でもしよう!」
俺もまた声をはりあげる。
アキの呼ぶ声とコ・リウの嫌そうな声を聞きながら、俺は空に浮く大地を進んだ
fin