Short Episode
(…連絡が来ない)
連絡用の画面に手をかざしたまましかめっ面で睨むフィスウルは、ふと思いついた様子で椅子から立ち上がると部屋を出る。
向かったのは義母の居るキッチンの方だ。
「あら?どうしたの、フィスウル」
「かあさん、ロイドから連絡が来ません
二区まで迎えに行ってもいいですか?
どうせロイドのことだから、また寝坊したんだと思いますけど」
「そう言えばもうそんな時間だったわね……ちょっとまってて」
義母のティオーネは直ぐに義父であるライゲンに通信を入れる。
暫くして義母は通話を切った。
「いいそうよ、ただ遠いからお金はちゃんと持っとくようにね
あと、危ない人にはついて行っちゃダメよ」
「はい、分かりました
それでは行ってきます」
駆け足気味に外へ向かうためキッチンから出るフィスウルを、ティオーネは微笑ましく眺めていた。
[「夢」を抱いた日]
「すみません、Dの二区に向かいたいんですが、1番早い路線ってどこか分かりますか?」
人の行き交うた大型ターミナルで、フィスウルは中心に設置されている路線図の電子版に組み込まれているAIにそう話しかけると、陽気な青年のような声で返事が来る。
入り組んだ路線図の中でDの二区に繋がる線が赤く表示された。
「あぁ、それなら6番から直通が出てるよ
でも今日は調子が悪いのか乗り心地はあまり良くないけどね
どうする?7番はD1区に寄るけど6番より乗り心地いいよ」
「6番で、そこがいちばん早いんですよね?」
「そうだよ……よし、予約をしたからもう向かって構わないよ
良い一日を」
「ありがとうございます、良い一日を」
「返事を返してくれるなんて優しい子だね、ありがとうお嬢ちゃん」
お嬢ちゃん…と反芻するフィスウルの眉根がよる。
「僕は男ですよ」
「なんてこった!それはすまなかった」
「いいえ、そこまで気にしていないので」
「そうかい?あ!!もうすぐ6番から出るよ!早くしないと!」
「え!?あ、分かりました!案内ありがとうございます!」
「いやいや、気をつけるんだよ!」
「はい!」
フィスウルは慌てて6番線に向かうと何とか発車前に乗り込みふぅ、と息をつく。
人は割と多く乗っていて座席はあまり空いていない。
距離が長いからと座席に座り流れていく外の風景を眺めながらため息をつく。
「なんとか…間に合いました…」
(駅員さんには怒られたけど)
案内役のAIが言う通り車内の空調や急ブレーキなどであまり乗り心地は良くない。
普段からきちんと整備されているはずなのに何故こんなにも調子が悪そうなのか、その時のフィスウルには理解できなかった。
いや、理解出来ていてもどうしようも出来なかっただろう。
暫く揺られていると急に照明が落ち、リニアの速度が遅くなっていく。
同じ車両にのっていたほかの乗客もざわざわと困惑した様子を隠していなかった。
「一体何が…」
外から流れてくる生暖かい風にじくりと、胸の中が焼け付くような焦燥感が広がる。
フィスウルは完全に停止したリニアから飛び降り、間近に見えたDの2区のホームへと向って走り出した。
[緊急警報発令!緊急警報発令!D2区にて局地的なダーカーの発生を確認!市民は至急安全区画へと避難してください!繰り返します!緊急警報発令!緊急警報発令!D2区にて………]
「っ!!!!」
走り出したフィスウルの耳に響く警報音と安全のための隔離防壁の上がる音が後ろから聞こえてくる。
ホームのシャッターが閉まりきる前に滑り込んで2区へと入り込んだフィスウルは声を失った。
惨状……と、言えばいいだろうか。
D2区の様子は酷い有様で、車も建物も崩れ、横転し中にはあとかたもなく壊れているものもある。
決まってそこには吐き気が起こりそうなほどの血溜まりができていた。
「…そんな」
むせ返るような血の匂いと肉の焼ける匂いに口を塞ぎながら周囲を警戒しつつ歩き始める。
「ロイド!…ロイド!どこですか?
返事をしてください!ロイド!」
どうか避難所にいて欲しい、と願いを込めて避難所に連絡を入れてみるも、どうやら来ていないらしい。
フィスウルは肩を落として探索を続けた。
いくらロイドがアークスなれる素質を持っていたとしても武器もなしに単身生身で戦うのは危険すぎる。
そう思いながらフィスウルは駆け足で街の中を進んだ。
「ロイドーー!ロイドーーー!返事してくださいってば!ロイド!!」
敵を呼ぶかもしれないとわかっていてもフィスウルは声を張り上げる。
人だったモノに躓きながらも先へ進んでいく
血の匂いが濃くなっていくにつれて人の声も聞こえなくなっていった。
「ひぃぃ、たすけてくれぇ!!!」
「待っててください!今行きます!」
ダーカーに襲われそうになっている住人の前へ庇うように出ると拾った瓦礫を投げつけた。
ガィン!という鈍い音が響いてダーカーはひるみ、後ずさる。
そこに追撃を入れるようにフォトンを纏わせた拳を叩き込み、蹴りあげた。
上手くコアに当たったのか砕け散った音がする、どうやら上手く破壊できたようだ。
煙のように消滅していったダーカーを後目にフィスウルは声を上げる。
「今のうちに逃げてください!
ホームのすぐ近くに緊急脱出用の出口があります!」
「君はいいのか!まだ子供だろう!」
青年の声にフィスウルが振り向く。
逃げたいのは山々、だがしかし、逃げるわけにはいかないとその目が語っていた。
「友人を、探してるんです
ロイドという名の友人を」
「そうか…無事に戻ってこいよ」
「はい、アナタもどうかご無事で」
青年はフィスウルが逃げる気がないことを理解したのか足早に出口へと向かっていく。
フィスウルは再びロイドを探すために歩を進めた。
「………」
瓦礫の残骸が多くなり血の匂いがさらにましていく中 、一向に見つからないことに不安を覚え始めるフィスウルは声を上げて呼ぶことをやめて必死に音を集めていく。
うめき声や目の前で切り殺されてしまった住民を見てフィスウル自身は気が滅入ってしまいそうになる。
助けられなかった人達の視線が未だに自分を見ているように思えたのかフィスウルはブルりと背筋をふるわせた。
先に進めば進むほど、朧気に感じていた不安が確信にかわるのは時間の問題だった。
ロイドの住んでいる場所へはもう少しだ
しかし、もうその面影はほとんどない。
崩れた街路灯や破壊し尽くされた公園を見てフィスウルは顔を悲痛そうにゆがめる。
そんな廃墟となった街の瓦礫を必死にかき分けていくと、微かに子供の鳴き声が聞こえた。
怪我をしている、と言うよりは悲痛な感情を隠せないと言った声に、心臓締め付けられるような感覚に陥る。
嫌なヴィジョンを見てしまったときような、夢であって欲しいとフィスウルは焦る気持ちを隠せず駆け足で声の元へと向かっていく。
「…君は…」
服が擦り切れ血が滲んでいるが、大きな怪我はないようだ。
周りには誰もいない、その事がフィスウルにとって嫌な予感を確信に変えるには十分すぎた。
「うっ、ぐすっ、ひっぐ…だ…れ?」
「僕は友人を探しに来たんです、ロイドという名前の人を知りませんか?」
「ろいどおにーちゃん…あっち…」
少女が指をさした方向に急いで向かう
場所はそこまで遠くない。
フィスウルは瓦礫が不自然に積み重なっている部分に手をかけた。
祈る思いで瓦礫少しずつどかしていく。
「ロイド…?ロイド…居ますか?返事をしてください…お願いだから…」
震える声で呼びかけながら小さい瓦礫と大きい瓦礫をどかし続け。
手に血が滲み始めた頃に、フィスウルは見覚えのある手袋をした腕を見つけた。
さらに除けていくと肩から上の姿が現れる
ひゅぅ、と呼吸もおぼつかない様子でフィスウルはロイドの名を呼んだ。
「…ろい…ど」
「……あ…ぁ、まぶしーとおもったら…ふぃす…お前…きてたのか
ダメだろう、あぶないから」
「黙ってください、今、手当します」
震える手がロイドの体に触れると、ロイドは緩く首を振る。
「いい…それよ…り、こいつ…いま
うでにかかえてる…やつ…たすけて…やってくれ
おれ、の、おとうと…なんだ、おやじ、も、おふくろも、みんな、うまっちまった、だけど…………こいつ………だけ、は
たのむ……まも…ってやっ…て、くれよ」
「ふざけないでください!アナタも出るんです!兄でしょう!兄は弟を守るんでしょう?こんなところで死んだら守れないじゃないですか!ねぇ!起きてください」
最後の瓦礫に力を入れる。
壁の大半が倒れてしまったその瓦礫を持上げるために自分の体にフォトンを無理やり流した。
「やめろ、ばか、そんなことしたら、おまえ…」
「うるさいっ!これ退けないと、弟君も助けられないでしょうが!」
「…あー
そう、だな」
やけくそ気味にそう吐き捨てると、ロイドがかすかに笑ったように聞こえた。
筋肉が裂けるような激痛がフィスウルの体を襲うが、気にしてもいられない。
叫ぶように声を上げて一気に瓦礫をどかす
何とかどかすことが出来たものの、落ちたガレキでロイドの下半身は見るかげもなくボロボロになってしまっていた。
足も潰れて歩くことは出来ないだろう
片腕は無く瓦礫に潰される前から怪我をおっていたのは明白だった。
主要の内蔵もほぼ機能させられないほどダメージを受けていることはフィスウルにも理解出来る。
フィスウルはロイドの傷がもう治すことは出来ない事を実感し膝から崩れ落ちた
ぐっと自分の唇をかみ締める。
じわりと鉄の味が広がったが、それがフォトンの使いすぎによるものなのか口の中を切ってしまったからなのかもフィスウルには分からなかった。
「……っ、すみませ…」
「あやまんな…よ」
何とか足に力を入れロイドが庇っていた弟を引きずり出す。
怪我は少ないが気を失っているのか時折呻く程度で動くことは無い。
ほっとしたと同時に、フィスウルは体の激痛に顔をゆがめた。
「そう、そうだ…あとは俺なんかほっといて行ってくれ」
瓦礫の重さが無くなったからかはっきりした声がフィスウルの耳に入ってくる。
「できる限りの事はします」
「やめろ、お前親父さんからフォトン扱うの禁止されてるじゃねぇか
これ以上使ったら体がぶっ壊れちまう!」
「そんなの関係ないです、そのまま何もしないで見捨てることの方が嫌だ…」
無理をして大声を出したロイドの制止も聞かず、フィスウルは回復をかけるためにフォトンを使う。
無駄なことはわかっていても、体にどれだけ負荷がかかったとしても、フィスウルはやめようとしなかった。
肌に焼け付くような痛みは既に感じなくなってしまったのか、ただ無言で治療を続ける。
「…お前…本当に、お人好しだな」
「……うるさいです…………ロイド……
ロイド……寝てはダメですよ!ただでさえ出血が多いんですか……ら
…………ロイド?」
笑ったロイドの表情にフィスウルが文句を言っても返事はない。
心臓の鼓動が早くなっていく。
そうであって欲しくないと…心が拒絶しているかのようだった。
「ロイド……寝てはダメだと言ってるでしょう、起きてください……起きて……喋ってください……目を覚ましてください!ロイド……ロイド!!」
ロイドからの返事はない。
掴まれていた腕から手の感触が解けていく。
「……………っ……ああああああああぁぁぁ!!!!!」
フィスウルは自分の腕を掴んでいた手がゆるりと落ちるのを感じ、流すことの出来ない涙の代わりに雄叫びのように声を張り上げた。
もうロイドは二度と目覚めることは無いのだと、自分自身に刻み込むような慟哭はやがて小さなつぶやきに変わった。
声につられてカツリカツリとダーカーの歩行音が聞こえてくるが、フィスウルは膝をついたまま閉じた人口の空を見上げている。
…なんで、ロイドが死ななきゃならないんでしょうか
ぽつりと、白い布に汚れが落ちるような感覚がフィスウルを襲う。
ロイドは…2週間後にはアークスになるはずだったのに…
汚れは黒く…濁ったものだ、しかしそれはどんどんと広がっていく。
心地よくはない、しかし苦しい訳でも無い、ぐすぐずに腐った果物のように不快で、しかし心の中に入り込んでくる。
「なんで…
ロイドなんです…?
何も悪いことなんてしてないじゃないですか…ただ家族を守っただけじゃないですか…」
キリキリと胃が締め付けられる。
思わず吐き出したものは黒くにごった血溜まりになった。
「3人でアークスになろうって…約束したのに…」
ポタリと、目じりからなにかが流れ出す
涙ではない、血だ。
フォトンの許容量を超えて身体が悲鳴をあげ始めたのだろう、痛覚などとっくの昔に感じなくなってしまっていたフィスウルは、ただそれをじっと見つめている。
「なんでです……なんでなんですか………」
近づいてきたダガンと呼ばれるダーカーの前足が振り下ろされる。
しかしその前足がフィスウルの体に傷をつけることは無かった。
ゆるりとフィスウルの視線がダーカーへと向かう。
「…………お前たちの」
「お前たちのせいで…………ロイドは……」
ダガンの前足はすでに消失しているバランスを崩したダガンはそのまま雷撃の餌食となり消えていく。
ふらりと起き上がったフィスウルの目にいつもの明るさはない。
まもらないと
だれを?
ろいどはしんだ
ろいどのおとうとがいる
おんなのこもいる
でもゆるせない
ころさないと
なにを?
アレをだ
どうやって?
くってしまおう
そう
ゆるすべきじゃない
ころせ
ころせ
ゆるさない
ゆるさない
けしてしまえ
ぜんぶ
ぜんぶ
全部壊そう、それなら全て解決する
例えるなら街灯も星あかりもない夜道に放り出されたような感覚に体の自由が奪われていく。
ふと後ろから囁かれる言葉は幻聴なのだろう
それでもフィスウルはその言葉をすんなり受け入れてしまう。
不意に力が抜けて片膝をついた。
ここぞとばかりに襲いかかるダーカーはその攻撃を食らわせることなく消滅していく。
下げていた顔を上げたフィスウルの表情には怒りも悲しみもない。
ただただ無心と呼べるだろう。
「…みんなしんでしまえ」
そんなただ無表情のまま言葉を紡ぐフィスウルの声は消え入りそうなほど掠れてしまっていた。
………………ほんの少し前のことを走馬灯のように思い出す
「俺はお前たちより先にアークスになるからおまえらぜったいついてこいよ」
「僕は、追い抜きますよ、覚悟していてくださいね」
「俺はあんまり頑張りたくない、こわいし」
「アフィン、お前ビビるなよ
死んだら元も子もないんだからな」
「大丈夫ですよ危なかったらロイドが守ってくれるんでしょう?」
「俺に任せるなよ!」
「そもそもなれるかな…」
「なれますよ、だから頑張っていきましょう、お姉さんを探すんでしょう?」
「うん!」
「俺たちも手伝ってやるからさ
見つかるといいな!ねぇさん」
アフィンとロイドと僕の3人でした約束…
もう、もう居ないんだ……
約束したのに……
やくそく……したのになぁ………………
「……ル」
「……フ…………ル!!フィスウル!!」
「っ…………ぁ……とおさ……ん」
「目は覚めたか?…………無茶しおって、まったく」
ぼんやりとだが自分が揺すられていることに気づいたフィスウルは、視界に映る赤い機体に酷くほっとする。
抱えられていた腕から力なくずり落ちる体を
義父であるライゲンは苦もなく背負った。
「ろいど……は?」
「遺体は安置室に収納された
見るか?」
「いい、おわかれ、したから」
喉を痛めてしまったのか声が上手く出せず昔のようにカタコトになってしまう。
しかしライゲンはそれを笑うことはせずしっかり聞いていた。
血まみれの両手はもうほとんど感覚など残っていないだろう。
血まみれになって動かない自分の息子の姿を見て、ライゲンはもう無いはずの心臓が潰される思いだった。
「そうか
お前さんのおかげで最危険地区に居た子供が2人生き残った
他にもお前さんが戦っていたおかげで避難所に逃げきれたものたちが多くいる
暫くはこの地区の浄化と住民の遺体の回収でアークスは大わらわだ、全く笑えんよ
念の為このシップは一時使用不可になってしまったからな」
ライゲンは溜息にも似た音と共にそう言葉を連ねていく。
キャスト独特の硬い背に揺られながらフィスウルは声をふるわせた。
「…アークスは…みんなを守るヒーローなんじゃないんですか…?
なんで…助けてくれなかったんですか」
もしアークスの出動がもう少し早ければ、こんな惨事にならなかったかもしれないのに……。
そんな思いを感じとったのか、ライゲンは居心地悪そうに咳払いをした。
「…フィスウル、人というのはな、限界があるものなんだ
助けたくても助けられない命が山ほどある
今回のだってそうだ、本当はあの区画の生き残りはゼロだと言って聞かなかった、外にいるものたちはな
アークスたちも諦めていた、ワシはもちろん諦めてはいなかったが
しかしダーカーの発生から報告が出るまであまりにも時間がかかりすぎていたのだ…」
「……」
「そんな時にお前さんが子供二人をかばってボロボロになりながらダーカーと戦っていたらそれはそれは驚くだろう
同時に、希望も持てる
お前さんがいたから、生存者ゼロにはならなかった
まぁ、褒められたことではないがな」
「すみません…」
「いや、こればかりは怒ることも出来んよ
我々ですら対処が遅れたのだからな
お前さんはゆっくり休むといい
ダーカーに侵食されかけているから暫くは入院生活になるだろうがな」
フィスウルは感覚がなくなった手を思い出してふと表情をかげらせる。
血と煙と死の匂いが脳裏に焼き付いて離れなかった。
蹂躙された死の匂い。
人の悲鳴とそれすらも飲み込むダーカーの存在。
友人の………………
「…僕、絶対にアークスになります
父さん…、僕は、もっと強くなりたい
こんな弱いからだじゃダメだ、もっと強くならないと…みんなを、まもらないと」
「……怪我が治って同じことを言えたなら、考えておこう」
ライゲンの背に揺られ、血と死臭のたまり場になった場所を離れていく。
救護班と消毒液の匂いに顔をしかめる気力もなくフィスウルは運ばれてく。
そうしてフィスウルの、友を失い夢を抱く日は終わった。
―某日某シップDの2区慰霊碑にて
人口のやわらかい風が慰霊碑の前に立つ2人の髪をなびかせていく。
白い花束を慰霊碑に立てかけたフィスウルは独り言のように呟いた。
「……ロイド、アークスになったぞ
お前より…先にな…」
「なぁロイド、俺たちが頑張っていくからさ
どっかで見ていてくれよな
絶対…姉貴を探し出してみせるから」
「俺は…お前の目指したヒーローにはなれない、でもいつかみんなを守れるようなアークスになる」
だからどうか、見守っていてくれ。
Fin
連絡用の画面に手をかざしたまましかめっ面で睨むフィスウルは、ふと思いついた様子で椅子から立ち上がると部屋を出る。
向かったのは義母の居るキッチンの方だ。
「あら?どうしたの、フィスウル」
「かあさん、ロイドから連絡が来ません
二区まで迎えに行ってもいいですか?
どうせロイドのことだから、また寝坊したんだと思いますけど」
「そう言えばもうそんな時間だったわね……ちょっとまってて」
義母のティオーネは直ぐに義父であるライゲンに通信を入れる。
暫くして義母は通話を切った。
「いいそうよ、ただ遠いからお金はちゃんと持っとくようにね
あと、危ない人にはついて行っちゃダメよ」
「はい、分かりました
それでは行ってきます」
駆け足気味に外へ向かうためキッチンから出るフィスウルを、ティオーネは微笑ましく眺めていた。
[「夢」を抱いた日]
「すみません、Dの二区に向かいたいんですが、1番早い路線ってどこか分かりますか?」
人の行き交うた大型ターミナルで、フィスウルは中心に設置されている路線図の電子版に組み込まれているAIにそう話しかけると、陽気な青年のような声で返事が来る。
入り組んだ路線図の中でDの二区に繋がる線が赤く表示された。
「あぁ、それなら6番から直通が出てるよ
でも今日は調子が悪いのか乗り心地はあまり良くないけどね
どうする?7番はD1区に寄るけど6番より乗り心地いいよ」
「6番で、そこがいちばん早いんですよね?」
「そうだよ……よし、予約をしたからもう向かって構わないよ
良い一日を」
「ありがとうございます、良い一日を」
「返事を返してくれるなんて優しい子だね、ありがとうお嬢ちゃん」
お嬢ちゃん…と反芻するフィスウルの眉根がよる。
「僕は男ですよ」
「なんてこった!それはすまなかった」
「いいえ、そこまで気にしていないので」
「そうかい?あ!!もうすぐ6番から出るよ!早くしないと!」
「え!?あ、分かりました!案内ありがとうございます!」
「いやいや、気をつけるんだよ!」
「はい!」
フィスウルは慌てて6番線に向かうと何とか発車前に乗り込みふぅ、と息をつく。
人は割と多く乗っていて座席はあまり空いていない。
距離が長いからと座席に座り流れていく外の風景を眺めながらため息をつく。
「なんとか…間に合いました…」
(駅員さんには怒られたけど)
案内役のAIが言う通り車内の空調や急ブレーキなどであまり乗り心地は良くない。
普段からきちんと整備されているはずなのに何故こんなにも調子が悪そうなのか、その時のフィスウルには理解できなかった。
いや、理解出来ていてもどうしようも出来なかっただろう。
暫く揺られていると急に照明が落ち、リニアの速度が遅くなっていく。
同じ車両にのっていたほかの乗客もざわざわと困惑した様子を隠していなかった。
「一体何が…」
外から流れてくる生暖かい風にじくりと、胸の中が焼け付くような焦燥感が広がる。
フィスウルは完全に停止したリニアから飛び降り、間近に見えたDの2区のホームへと向って走り出した。
[緊急警報発令!緊急警報発令!D2区にて局地的なダーカーの発生を確認!市民は至急安全区画へと避難してください!繰り返します!緊急警報発令!緊急警報発令!D2区にて………]
「っ!!!!」
走り出したフィスウルの耳に響く警報音と安全のための隔離防壁の上がる音が後ろから聞こえてくる。
ホームのシャッターが閉まりきる前に滑り込んで2区へと入り込んだフィスウルは声を失った。
惨状……と、言えばいいだろうか。
D2区の様子は酷い有様で、車も建物も崩れ、横転し中にはあとかたもなく壊れているものもある。
決まってそこには吐き気が起こりそうなほどの血溜まりができていた。
「…そんな」
むせ返るような血の匂いと肉の焼ける匂いに口を塞ぎながら周囲を警戒しつつ歩き始める。
「ロイド!…ロイド!どこですか?
返事をしてください!ロイド!」
どうか避難所にいて欲しい、と願いを込めて避難所に連絡を入れてみるも、どうやら来ていないらしい。
フィスウルは肩を落として探索を続けた。
いくらロイドがアークスなれる素質を持っていたとしても武器もなしに単身生身で戦うのは危険すぎる。
そう思いながらフィスウルは駆け足で街の中を進んだ。
「ロイドーー!ロイドーーー!返事してくださいってば!ロイド!!」
敵を呼ぶかもしれないとわかっていてもフィスウルは声を張り上げる。
人だったモノに躓きながらも先へ進んでいく
血の匂いが濃くなっていくにつれて人の声も聞こえなくなっていった。
「ひぃぃ、たすけてくれぇ!!!」
「待っててください!今行きます!」
ダーカーに襲われそうになっている住人の前へ庇うように出ると拾った瓦礫を投げつけた。
ガィン!という鈍い音が響いてダーカーはひるみ、後ずさる。
そこに追撃を入れるようにフォトンを纏わせた拳を叩き込み、蹴りあげた。
上手くコアに当たったのか砕け散った音がする、どうやら上手く破壊できたようだ。
煙のように消滅していったダーカーを後目にフィスウルは声を上げる。
「今のうちに逃げてください!
ホームのすぐ近くに緊急脱出用の出口があります!」
「君はいいのか!まだ子供だろう!」
青年の声にフィスウルが振り向く。
逃げたいのは山々、だがしかし、逃げるわけにはいかないとその目が語っていた。
「友人を、探してるんです
ロイドという名の友人を」
「そうか…無事に戻ってこいよ」
「はい、アナタもどうかご無事で」
青年はフィスウルが逃げる気がないことを理解したのか足早に出口へと向かっていく。
フィスウルは再びロイドを探すために歩を進めた。
「………」
瓦礫の残骸が多くなり血の匂いがさらにましていく中 、一向に見つからないことに不安を覚え始めるフィスウルは声を上げて呼ぶことをやめて必死に音を集めていく。
うめき声や目の前で切り殺されてしまった住民を見てフィスウル自身は気が滅入ってしまいそうになる。
助けられなかった人達の視線が未だに自分を見ているように思えたのかフィスウルはブルりと背筋をふるわせた。
先に進めば進むほど、朧気に感じていた不安が確信にかわるのは時間の問題だった。
ロイドの住んでいる場所へはもう少しだ
しかし、もうその面影はほとんどない。
崩れた街路灯や破壊し尽くされた公園を見てフィスウルは顔を悲痛そうにゆがめる。
そんな廃墟となった街の瓦礫を必死にかき分けていくと、微かに子供の鳴き声が聞こえた。
怪我をしている、と言うよりは悲痛な感情を隠せないと言った声に、心臓締め付けられるような感覚に陥る。
嫌なヴィジョンを見てしまったときような、夢であって欲しいとフィスウルは焦る気持ちを隠せず駆け足で声の元へと向かっていく。
「…君は…」
服が擦り切れ血が滲んでいるが、大きな怪我はないようだ。
周りには誰もいない、その事がフィスウルにとって嫌な予感を確信に変えるには十分すぎた。
「うっ、ぐすっ、ひっぐ…だ…れ?」
「僕は友人を探しに来たんです、ロイドという名前の人を知りませんか?」
「ろいどおにーちゃん…あっち…」
少女が指をさした方向に急いで向かう
場所はそこまで遠くない。
フィスウルは瓦礫が不自然に積み重なっている部分に手をかけた。
祈る思いで瓦礫少しずつどかしていく。
「ロイド…?ロイド…居ますか?返事をしてください…お願いだから…」
震える声で呼びかけながら小さい瓦礫と大きい瓦礫をどかし続け。
手に血が滲み始めた頃に、フィスウルは見覚えのある手袋をした腕を見つけた。
さらに除けていくと肩から上の姿が現れる
ひゅぅ、と呼吸もおぼつかない様子でフィスウルはロイドの名を呼んだ。
「…ろい…ど」
「……あ…ぁ、まぶしーとおもったら…ふぃす…お前…きてたのか
ダメだろう、あぶないから」
「黙ってください、今、手当します」
震える手がロイドの体に触れると、ロイドは緩く首を振る。
「いい…それよ…り、こいつ…いま
うでにかかえてる…やつ…たすけて…やってくれ
おれ、の、おとうと…なんだ、おやじ、も、おふくろも、みんな、うまっちまった、だけど…………こいつ………だけ、は
たのむ……まも…ってやっ…て、くれよ」
「ふざけないでください!アナタも出るんです!兄でしょう!兄は弟を守るんでしょう?こんなところで死んだら守れないじゃないですか!ねぇ!起きてください」
最後の瓦礫に力を入れる。
壁の大半が倒れてしまったその瓦礫を持上げるために自分の体にフォトンを無理やり流した。
「やめろ、ばか、そんなことしたら、おまえ…」
「うるさいっ!これ退けないと、弟君も助けられないでしょうが!」
「…あー
そう、だな」
やけくそ気味にそう吐き捨てると、ロイドがかすかに笑ったように聞こえた。
筋肉が裂けるような激痛がフィスウルの体を襲うが、気にしてもいられない。
叫ぶように声を上げて一気に瓦礫をどかす
何とかどかすことが出来たものの、落ちたガレキでロイドの下半身は見るかげもなくボロボロになってしまっていた。
足も潰れて歩くことは出来ないだろう
片腕は無く瓦礫に潰される前から怪我をおっていたのは明白だった。
主要の内蔵もほぼ機能させられないほどダメージを受けていることはフィスウルにも理解出来る。
フィスウルはロイドの傷がもう治すことは出来ない事を実感し膝から崩れ落ちた
ぐっと自分の唇をかみ締める。
じわりと鉄の味が広がったが、それがフォトンの使いすぎによるものなのか口の中を切ってしまったからなのかもフィスウルには分からなかった。
「……っ、すみませ…」
「あやまんな…よ」
何とか足に力を入れロイドが庇っていた弟を引きずり出す。
怪我は少ないが気を失っているのか時折呻く程度で動くことは無い。
ほっとしたと同時に、フィスウルは体の激痛に顔をゆがめた。
「そう、そうだ…あとは俺なんかほっといて行ってくれ」
瓦礫の重さが無くなったからかはっきりした声がフィスウルの耳に入ってくる。
「できる限りの事はします」
「やめろ、お前親父さんからフォトン扱うの禁止されてるじゃねぇか
これ以上使ったら体がぶっ壊れちまう!」
「そんなの関係ないです、そのまま何もしないで見捨てることの方が嫌だ…」
無理をして大声を出したロイドの制止も聞かず、フィスウルは回復をかけるためにフォトンを使う。
無駄なことはわかっていても、体にどれだけ負荷がかかったとしても、フィスウルはやめようとしなかった。
肌に焼け付くような痛みは既に感じなくなってしまったのか、ただ無言で治療を続ける。
「…お前…本当に、お人好しだな」
「……うるさいです…………ロイド……
ロイド……寝てはダメですよ!ただでさえ出血が多いんですか……ら
…………ロイド?」
笑ったロイドの表情にフィスウルが文句を言っても返事はない。
心臓の鼓動が早くなっていく。
そうであって欲しくないと…心が拒絶しているかのようだった。
「ロイド……寝てはダメだと言ってるでしょう、起きてください……起きて……喋ってください……目を覚ましてください!ロイド……ロイド!!」
ロイドからの返事はない。
掴まれていた腕から手の感触が解けていく。
「……………っ……ああああああああぁぁぁ!!!!!」
フィスウルは自分の腕を掴んでいた手がゆるりと落ちるのを感じ、流すことの出来ない涙の代わりに雄叫びのように声を張り上げた。
もうロイドは二度と目覚めることは無いのだと、自分自身に刻み込むような慟哭はやがて小さなつぶやきに変わった。
声につられてカツリカツリとダーカーの歩行音が聞こえてくるが、フィスウルは膝をついたまま閉じた人口の空を見上げている。
…なんで、ロイドが死ななきゃならないんでしょうか
ぽつりと、白い布に汚れが落ちるような感覚がフィスウルを襲う。
ロイドは…2週間後にはアークスになるはずだったのに…
汚れは黒く…濁ったものだ、しかしそれはどんどんと広がっていく。
心地よくはない、しかし苦しい訳でも無い、ぐすぐずに腐った果物のように不快で、しかし心の中に入り込んでくる。
「なんで…
ロイドなんです…?
何も悪いことなんてしてないじゃないですか…ただ家族を守っただけじゃないですか…」
キリキリと胃が締め付けられる。
思わず吐き出したものは黒くにごった血溜まりになった。
「3人でアークスになろうって…約束したのに…」
ポタリと、目じりからなにかが流れ出す
涙ではない、血だ。
フォトンの許容量を超えて身体が悲鳴をあげ始めたのだろう、痛覚などとっくの昔に感じなくなってしまっていたフィスウルは、ただそれをじっと見つめている。
「なんでです……なんでなんですか………」
近づいてきたダガンと呼ばれるダーカーの前足が振り下ろされる。
しかしその前足がフィスウルの体に傷をつけることは無かった。
ゆるりとフィスウルの視線がダーカーへと向かう。
「…………お前たちの」
「お前たちのせいで…………ロイドは……」
ダガンの前足はすでに消失しているバランスを崩したダガンはそのまま雷撃の餌食となり消えていく。
ふらりと起き上がったフィスウルの目にいつもの明るさはない。
まもらないと
だれを?
ろいどはしんだ
ろいどのおとうとがいる
おんなのこもいる
でもゆるせない
ころさないと
なにを?
アレをだ
どうやって?
くってしまおう
そう
ゆるすべきじゃない
ころせ
ころせ
ゆるさない
ゆるさない
けしてしまえ
ぜんぶ
ぜんぶ
全部壊そう、それなら全て解決する
例えるなら街灯も星あかりもない夜道に放り出されたような感覚に体の自由が奪われていく。
ふと後ろから囁かれる言葉は幻聴なのだろう
それでもフィスウルはその言葉をすんなり受け入れてしまう。
不意に力が抜けて片膝をついた。
ここぞとばかりに襲いかかるダーカーはその攻撃を食らわせることなく消滅していく。
下げていた顔を上げたフィスウルの表情には怒りも悲しみもない。
ただただ無心と呼べるだろう。
「…みんなしんでしまえ」
そんなただ無表情のまま言葉を紡ぐフィスウルの声は消え入りそうなほど掠れてしまっていた。
………………ほんの少し前のことを走馬灯のように思い出す
「俺はお前たちより先にアークスになるからおまえらぜったいついてこいよ」
「僕は、追い抜きますよ、覚悟していてくださいね」
「俺はあんまり頑張りたくない、こわいし」
「アフィン、お前ビビるなよ
死んだら元も子もないんだからな」
「大丈夫ですよ危なかったらロイドが守ってくれるんでしょう?」
「俺に任せるなよ!」
「そもそもなれるかな…」
「なれますよ、だから頑張っていきましょう、お姉さんを探すんでしょう?」
「うん!」
「俺たちも手伝ってやるからさ
見つかるといいな!ねぇさん」
アフィンとロイドと僕の3人でした約束…
もう、もう居ないんだ……
約束したのに……
やくそく……したのになぁ………………
「……ル」
「……フ…………ル!!フィスウル!!」
「っ…………ぁ……とおさ……ん」
「目は覚めたか?…………無茶しおって、まったく」
ぼんやりとだが自分が揺すられていることに気づいたフィスウルは、視界に映る赤い機体に酷くほっとする。
抱えられていた腕から力なくずり落ちる体を
義父であるライゲンは苦もなく背負った。
「ろいど……は?」
「遺体は安置室に収納された
見るか?」
「いい、おわかれ、したから」
喉を痛めてしまったのか声が上手く出せず昔のようにカタコトになってしまう。
しかしライゲンはそれを笑うことはせずしっかり聞いていた。
血まみれの両手はもうほとんど感覚など残っていないだろう。
血まみれになって動かない自分の息子の姿を見て、ライゲンはもう無いはずの心臓が潰される思いだった。
「そうか
お前さんのおかげで最危険地区に居た子供が2人生き残った
他にもお前さんが戦っていたおかげで避難所に逃げきれたものたちが多くいる
暫くはこの地区の浄化と住民の遺体の回収でアークスは大わらわだ、全く笑えんよ
念の為このシップは一時使用不可になってしまったからな」
ライゲンは溜息にも似た音と共にそう言葉を連ねていく。
キャスト独特の硬い背に揺られながらフィスウルは声をふるわせた。
「…アークスは…みんなを守るヒーローなんじゃないんですか…?
なんで…助けてくれなかったんですか」
もしアークスの出動がもう少し早ければ、こんな惨事にならなかったかもしれないのに……。
そんな思いを感じとったのか、ライゲンは居心地悪そうに咳払いをした。
「…フィスウル、人というのはな、限界があるものなんだ
助けたくても助けられない命が山ほどある
今回のだってそうだ、本当はあの区画の生き残りはゼロだと言って聞かなかった、外にいるものたちはな
アークスたちも諦めていた、ワシはもちろん諦めてはいなかったが
しかしダーカーの発生から報告が出るまであまりにも時間がかかりすぎていたのだ…」
「……」
「そんな時にお前さんが子供二人をかばってボロボロになりながらダーカーと戦っていたらそれはそれは驚くだろう
同時に、希望も持てる
お前さんがいたから、生存者ゼロにはならなかった
まぁ、褒められたことではないがな」
「すみません…」
「いや、こればかりは怒ることも出来んよ
我々ですら対処が遅れたのだからな
お前さんはゆっくり休むといい
ダーカーに侵食されかけているから暫くは入院生活になるだろうがな」
フィスウルは感覚がなくなった手を思い出してふと表情をかげらせる。
血と煙と死の匂いが脳裏に焼き付いて離れなかった。
蹂躙された死の匂い。
人の悲鳴とそれすらも飲み込むダーカーの存在。
友人の………………
「…僕、絶対にアークスになります
父さん…、僕は、もっと強くなりたい
こんな弱いからだじゃダメだ、もっと強くならないと…みんなを、まもらないと」
「……怪我が治って同じことを言えたなら、考えておこう」
ライゲンの背に揺られ、血と死臭のたまり場になった場所を離れていく。
救護班と消毒液の匂いに顔をしかめる気力もなくフィスウルは運ばれてく。
そうしてフィスウルの、友を失い夢を抱く日は終わった。
―某日某シップDの2区慰霊碑にて
人口のやわらかい風が慰霊碑の前に立つ2人の髪をなびかせていく。
白い花束を慰霊碑に立てかけたフィスウルは独り言のように呟いた。
「……ロイド、アークスになったぞ
お前より…先にな…」
「なぁロイド、俺たちが頑張っていくからさ
どっかで見ていてくれよな
絶対…姉貴を探し出してみせるから」
「俺は…お前の目指したヒーローにはなれない、でもいつかみんなを守れるようなアークスになる」
だからどうか、見守っていてくれ。
Fin