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神楽と万事屋〈400字〉

2020/12/22 19:04
 ひらがなだけじゃなくて漢字も書けるようになった。できることが増えたらできないことも増えた。──お元気ですか。書き出しに迷う。書き損じた便箋はくしゃくしゃに丸まりそこらに散らばっている。私は元気です。銀ちゃんは、寂しくないですか? 宇宙を旅するようになってから、私は──。書く手が止まる。なんだかしっくりこない。手紙を書くのがこんなに難しかったなんて知らなかった。万事屋に思いを募らせる。定春、新八、そして銀ちゃん。ジャンプに顔をうずめて仕事がないと嘆く銀ちゃんを、ぐーたらしないでくださいと叱りつける新八の、隣で大きくあくびをする定春。そんな万事屋の日常が、ひどく遠い過去のように思えた。できることとできないこと。万事屋を再結成することは、いったいどっちなんだろう。素直になりたい。あのころみたいに、万事屋だったときのように。便箋の空白をさらりと撫でる。
 ──私は、万事屋に会えなくて寂しいです。

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