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高銀/兵士パロ
2021/05/06 22:12 死角から半狂乱になった敵兵が躍り出てくる。「──高杉さんッ!」仲間の声で振り返り、目視したときには遅かった。手にした剣で相手の脇腹を突き刺す、と同時に自らの左胸に深く沈んだ刃。せめて死ぬるときはテメェらも道連れに──。ふいに脳裏をよぎったのは、戦地に赴く前日の記憶だった。とある男と約束をした。今世で必ずまた逢おうと。走馬灯なんざ信じちゃいなかったが、そうか、これが。今にも息絶えそうな敵兵が、憎悪に満ちた表情でこちらを見ていた。残念だったなァ、テメェには地獄のお供は荷が重いみたいだ。手に力をこめる。喉奥から逆流する熱、視界が白く濁っていく。あの日のことがまるで昨日のことのように思い出せた。『今までだってこの腐れ縁切れなかったんだ。だから、心配するなよ』口付けを交わした。『離れてたって、きっとまた逢えるさ』昔から見慣れたツラだった、おどけて笑うお前の顔が好きだった。約束破っちまうことになるが、それでも俺ァ存外悪い気分じゃねェ。また逢えるとお前が言ったんだ、嘘になんかならねェだろうさ。俺にはもう、それだけで充分だ。