朝の話
とある朝の話だ。
「ねぇ、シュウ、最近、あんた、弛んでない?」
同じチームのスターリングにちくりと刺された。ここのところ、遅刻が重なっていたのだ。
「別に、朝一番に来いとは言わないけど、ミーティングの時間くらいは守って欲しいのよ」
「あぁ、すまん。俺も、気をつけてるんだが」
赤井は苦悩に満ちた顔で謝罪した。
苦み走った顔は、まぁ、赤井のいつもの顔だ。だが、素直に謝るのは珍しい。
「原因があるの?まさか、体に異変でも…」
「不可抗力なんだ」
「シュウっ!」
スターリングは、最悪の病名をいくつか想定した。
「恋人と暮らし始めたんだ」
赤井は至って真面目に言った。
「は?」
「今日は、彼が遅番でな」
「は?」
「寝ぼけながら、いってらっしゃいと」
「…」
「気付いたら、俺もまたベッドに戻っていた」
何故そんなことになったのか、分からない。つまり、不可抗力なのだ。
グシャ
スターリングの手元で資料の束が握りつぶされた。
「あんた、朝からセックスしてて、遅刻してんの?」
「気付いたら、もう数時間が経っていた。その間の記憶が無いんだ」
だが、恋人の可愛らしさや色っぽさは覚えている。滑らかな脹ら脛に歯を立てながら、恋人の中を侵略した事も、もう無理だとメソメソするのを宥めながら上に乗せて揺さぶった事も。
いや、結構、覚えてる。
時間の感覚だけ飛んだ。
不思議だ。
呆れたスターリングはとっくに居なくなっていたが、気付かずに赤井は語り続けた。
恋人がいかに素晴らしいか。可愛らしいか。妖艶であるか。
もう、早く帰って、彼のベッドに戻りたい。
何かの魔力が働いてるとしか思えない。全くもって不可抗力だ。
様子のおかしな赤井は放っておいて、スターリングは自分のデスクに戻った。
「あの、赤井さんは、大丈夫なんですか?」
同じチームの仲間が不安そうに、そして、少しおっかなそうに赤井の方を見やって言った。
「あぁ、新婚ボケしてるだけだったわ」
「良かった」
「薬物じゃないだけ安心ね。セックスで捕まる奴は居ないわ」
「寧ろ健康ですよ。ただの色ボケで、安心です」
同僚たちが呆れかえるほどに恋に溺れた男は、今度はスマホを確認し始めた。恋人からのメッセージなんぞはないのだろう。明らかにがっかりと肩を落としている。
哀れな男だ。
「ハネムーン休暇を取らせましょ」
あれでは仕事にならない。赤井のチームは、彼に長い休みを取らせることに決めた。
スターリングが書類を用意する頃、赤井の恋人は、ベッドの中でへとへとになっていた。
「腰が…」
体のあちこちが痛む。ほどほどにして欲しいが、必死に求められると、咎める事もできない。
しかし、これでは体がもたない。朝だろうと夜だろうと盛られては、休まる暇がない。
性行為は休みの日だけにしてしてもらおう。
まさか、赤井が長期休暇を貰ってくるとは思いもせずに、降谷は漸くベッドから這い出たのだった。
「ねぇ、シュウ、最近、あんた、弛んでない?」
同じチームのスターリングにちくりと刺された。ここのところ、遅刻が重なっていたのだ。
「別に、朝一番に来いとは言わないけど、ミーティングの時間くらいは守って欲しいのよ」
「あぁ、すまん。俺も、気をつけてるんだが」
赤井は苦悩に満ちた顔で謝罪した。
苦み走った顔は、まぁ、赤井のいつもの顔だ。だが、素直に謝るのは珍しい。
「原因があるの?まさか、体に異変でも…」
「不可抗力なんだ」
「シュウっ!」
スターリングは、最悪の病名をいくつか想定した。
「恋人と暮らし始めたんだ」
赤井は至って真面目に言った。
「は?」
「今日は、彼が遅番でな」
「は?」
「寝ぼけながら、いってらっしゃいと」
「…」
「気付いたら、俺もまたベッドに戻っていた」
何故そんなことになったのか、分からない。つまり、不可抗力なのだ。
グシャ
スターリングの手元で資料の束が握りつぶされた。
「あんた、朝からセックスしてて、遅刻してんの?」
「気付いたら、もう数時間が経っていた。その間の記憶が無いんだ」
だが、恋人の可愛らしさや色っぽさは覚えている。滑らかな脹ら脛に歯を立てながら、恋人の中を侵略した事も、もう無理だとメソメソするのを宥めながら上に乗せて揺さぶった事も。
いや、結構、覚えてる。
時間の感覚だけ飛んだ。
不思議だ。
呆れたスターリングはとっくに居なくなっていたが、気付かずに赤井は語り続けた。
恋人がいかに素晴らしいか。可愛らしいか。妖艶であるか。
もう、早く帰って、彼のベッドに戻りたい。
何かの魔力が働いてるとしか思えない。全くもって不可抗力だ。
様子のおかしな赤井は放っておいて、スターリングは自分のデスクに戻った。
「あの、赤井さんは、大丈夫なんですか?」
同じチームの仲間が不安そうに、そして、少しおっかなそうに赤井の方を見やって言った。
「あぁ、新婚ボケしてるだけだったわ」
「良かった」
「薬物じゃないだけ安心ね。セックスで捕まる奴は居ないわ」
「寧ろ健康ですよ。ただの色ボケで、安心です」
同僚たちが呆れかえるほどに恋に溺れた男は、今度はスマホを確認し始めた。恋人からのメッセージなんぞはないのだろう。明らかにがっかりと肩を落としている。
哀れな男だ。
「ハネムーン休暇を取らせましょ」
あれでは仕事にならない。赤井のチームは、彼に長い休みを取らせることに決めた。
スターリングが書類を用意する頃、赤井の恋人は、ベッドの中でへとへとになっていた。
「腰が…」
体のあちこちが痛む。ほどほどにして欲しいが、必死に求められると、咎める事もできない。
しかし、これでは体がもたない。朝だろうと夜だろうと盛られては、休まる暇がない。
性行為は休みの日だけにしてしてもらおう。
まさか、赤井が長期休暇を貰ってくるとは思いもせずに、降谷は漸くベッドから這い出たのだった。
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