DEAR MY SWEET FOOL
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ーー4、sweet vanilla
ーー美猫⋯⋯好きだよ、好き。
数十分ほど前の話だ。帰宅した無一郎は、自身のベッドで眠りこける美猫の姿を目の当たりにして、その無防備さに呆れた。
小さく溜息をついて、ベッドへ腰掛け、その寝顔を静かに見下ろす。
人形のように綺麗に揃った長く豊かな睫毛、細い鼻梁、兎の舌を思わせる淡いピンク色の唇は、夜中だからかグロスは塗っていない。
それでも潤った自然な艶を帯びていて、無一郎をドキリとさせた。
微かに開いた唇からは、すぅすぅと規則正しい寝息が漏れている。
風呂上がりなのか、いつもは透けるように白い肌が全体的に仄かな血色を帯びている。
次第に見ているだけでは我慢できなくなって、そっと手を伸ばす。
まずは髪に触れてみた。柔らかい質感。手入れのいき届いた髪は艷やかで、とても綺麗だ。
彼女は美しい。しかし手放しで美しいのではない。
その美貌もスタイルも、日々の弛まぬ努力の賜物なのだ。
一緒に暮らしてみて判明した事だが、美猫はスタイル維持のために朝のヨガと入眠前の軽いストレッチは毎日欠かさない。
さらには週に2回、ジムに通って筋トレをしている。
肌や髪はもちろん毎日の手入れにも余念がない。
毎日の入念なスキンケア、髪に至っては洗い方や乾かし方に至るまで拘り抜いている。
美猫はこっそりやっているつもりなのだろうが、無一郎にしてみればバレバレだった。
そんな所も可愛くて、微笑ましくて⋯⋯。
だけど、それらの努力の全ては有一郎のためのもの。
「⋯⋯っ」
無一郎はギリっと奥歯を噛み締めて、美猫の頬を撫でていた手を止めた。
「美猫、風邪引くよ」
平静を装った声でそう言って、軽く美猫の頬を叩く。
ーータイミングが悪かった。
これは、そうとしか言いようがない。
「ん⋯、ゆう君?」
今無一郎が美猫の口からは一番聞きたくない名前を、美猫は何の気なしといった様子で呟いた。
「間違えちゃった⋯⋯さっきまで有一郎くんの夢見てたから」
寝起きの顔でふにゃりと微笑う姿が憎らしいほど可愛らしくて、しかしその唇から零れた名前は無一郎のものではなくて。
その瞬間、ドス黒い嫉妬が、今までギリギリのところで繋いでいた理性を灼き切ってしまった。
そうして気が付けば、彼女を力ずくで捻じ伏せて、蹂躙していた。
彼女の意志など無視して、力ずくで、無理やりーーにも関わらず、彼女は言ったのだ。
「顔が見たい⋯っ!顔を見せて⋯⋯、無一郎くん!!」
