幻灯花〈Halloween the blood party〉
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ーー1、吸血鬼フィリア
有須沙羅は今年で十五歳になる。
沙羅の高校への進学を控えたこの年を機に、有須家は日本へ帰国した。
キメツ学園へ転校したのはちょうど三年生へ進級するタイミングでのことだ。
時透無一郎と再び巡り合い、紆余曲折を経て交際することになり、夏休みを挟んで二学期を迎えてから更に一ヶ月が経った、十月。
キメツ学園では例年九月に文化祭という行事があるが、今年はそれとは別に、急遽“ハロウィン文化祭”という行事が執り行われることとなった。
学習の成果を発表し、生徒の自主性や協調性、表現力を育むこと、また保護者への学校紹介を目的とした大規模な文化祭に対し、この“ハロウィン文化祭”は教師や生徒同士の懇親を目的とした規模の小さいものだ。
思えばこの頃からだ。
学園を怪異が覆い始めたのはーー
「無一郎ちゃん⋯もうすぐ予鈴がなるから、教室へ戻ったほうがいいわ」
「もう少しだけ」
「もぉ⋯」
現在は昼休憩。さっさと昼食を終えた無一郎は、昼休憩中ずっと沙羅の肩へ凭れて瞳を伏せたまま、動こうとしなかった。
沙羅は小さく溜息をつくと、観念したようにじっとしていた。
「沙羅⋯⋯こっちを見て」
酷く甘い声音で無一郎が囁いた。そちらへ視線を向けると、くっきりとした二重瞼に収まる淡い碧色の瞳が、ひたりと沙羅を見据えていた。
甘く艶っぽい視線が扇情的で、ドキッと心臓が不穏な音を立てる。
カシャン⋯と微かな金属音が耳を掠め、長くしなやかな指が沙羅の背後にあるフェンスを軽く掴む。
無一郎の腕と身体とで半ば閉じ込められるような形になり、苦しいくらい鼓動が加速する。
「待って無一郎ちゃん、ここ学校⋯⋯」
沙羅の控えめな抗議の声を、無一郎は「だから何?」と甘い熱の籠もった声で遮る。
無一郎の放つ雰囲気、視線、声。何もかもが甘くて頭がくらくらする。
端正な顔が間近に迫り、思わずぎゅっと瞳を瞑った時、
キーンコーン、カーンコーン⋯⋯。
そうこしているうちに、とうとう予鈴が鳴ってしまった。
予鈴が鳴るのは本鈴の一分前だ。
屋上から教室まで距離が結構あるが、沙羅と無一郎の足ならぎりぎり間に合う。
「戻らないと。続きは放課後」
「しませんっ」
真っ赤に頬を火照らせながらも今度こそ強めの抗議をすると、無一郎は特に残念がるでなく軽く笑った。
⋯⋯ほんとうに、この人は。心臓に悪いんだからと内心で毒づいて、睨む真似をする。
沙羅はまだ座っていて、無一郎は立ち上がっていたため必然的に上目遣いの目線になる。
「そういう顔も可愛いね、沙羅」
透き通った淡い碧色の瞳が柔らかく笑みの形に細まる。
沙羅のほうへ手が差し出される。
差し出された手に、そっと手を乗せると、無一郎は力強く引っ張りあげて沙羅を立たせてくれた。
「じゃあ、また放課後」
「うん」
そうして昼休憩を終えて、沙羅と無一郎は各々の教室へ帰っていった。
生徒達が去り、誰もいなくなった屋上で、空はまるで取り残されたように静かに
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