DEAR MY SWEET FOOL
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ーー3、overflowing
毛先に掛けて淡い碧色に透ける黒髪が、綺麗だと思ったの。
無一郎くんの髪は、特別な手入れなんてしていなくても、いつもサラサラで艶々としていて、いい匂い。
羨ましくなるくらい美肌で、中性的な顔立ちをしていて、その中でも長い睫毛が縁取る透き通った淡い碧色の大きな瞳がとっても印象的。
背はそんなに高くないけれど、スタイルがよくて、姿勢もいいから、立ち姿がスッとして美しかった。
お人形さんみたいに綺麗な男の子。それが彼の第一印象だった。
ともすれば無機質な印象を与えかねない美貌。だけど、その顔にはいつも優しい笑顔が乗っていて。
そのギャップがどうしようもなく美猫の心を掴んだのだった。
昔から、初めて出会った時から、美猫は無一郎が好きで、大好きで、どうしようもなかったのだ。
「お前、なんで俺のことが好きなふりをしてるんだ?」
無一郎には双子の兄がいた。名は有一郎。
「意味ないぞ」
無一郎と生き写しの顔を盛大に顰めて、美猫を諌める。
彼は無一郎とは違って厳しいけれど、その厳しさの中にはいつだって優しさが隠れている。
美猫のために言ってくれているのだ。
⋯⋯だけど。
「だって、悔しいじゃない」
助言を素直に受け止めることは、当時の美猫にはできなかった。
「むいくん、私に全然興味ないんだもん」
小さな意地が、美猫の想いの邪魔をする。
ちょっぴり涙目でぶすくれる美猫を、有一郎は呆れたような目で眺めて、やがて小さく溜息をついてこんなことを言った。
「⋯⋯そんなことはないと思うぞ」
「真実とかけ離れた慰めなんて、いらないもん」
「だからって、俺のことを好きなふりをして何の意味があるんだ?」
「ちょっとでも気を引けるかなって」
「俺の身にもなってくれ」
「ごめん⋯でも、もう決めたの」
「何を?」
「絶対、むい君を振り向かせてみせる。私を好きにさせて、むい君のほうから“好きです”って言わせてみせるの!」
ふんす、と気合を漲らせる美猫の横で、少しの沈黙が降りた。
「ゆう君?どうかした?」
美猫が隣に視線を向けると、
「何でもない」
ぐしゃりと強い力で頭を撫でられた。あまりにも強すぎて、前屈みになりなるほど。
髪がぐしゃぐしゃになるー!と抗議するが、有一郎が浮かべる表情に、思わず口を噤んだ。
「ゆう君⋯?」
有一郎は微笑っていた。⋯⋯だけど、その笑顔はどこか寂しげで複雑な感情に揺れているように見えた。
だがそれも一瞬で、次にはいつもの仏頂面に戻って飄々と。
「まぁ頑張れ」
とだけ。
「何よそれー!ヒトゴトだと思ってー!」
有一郎とは、そんなやり取りばかりだった。
