DEAR MY SWEET FOOL
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照明の落とされたシアタールームの中は、人気の映画だけあって少々混んでいた。
無一郎達は指定した座席に腰掛けて、映画の始まりを待つ。
そうして数分が経った頃、無一郎はふと視覚的な違和感を捉えた。
何がおかしいのか一瞬分からず、視線のみ左右に走らせて、その違和感の正体を確信する。
無一郎の左隣にいる美猫のさらに隣にいる男が、先程から美猫の胸元をチラチラと覗き見ていたのだ。
とうの美猫はいっさい気づかず、呑気にポップコーンを摘んでいる。
「んー、キャラメルポップコーンおいしい」
「美猫」
「なぁにぃ?」
「席代わって」
「えー、どぉして?」
「いいから」
ワントーン低い声で告げると、美猫は渋々ながら席を移動した。
美猫を見ていた男は罰が悪そうに視線を泳がせている。
「無一郎」
「何?」
「もしかして妬いちゃった?」
無一郎の右隣で、ふいに美猫が囁いた。
上目遣いに此方を見上げ、ぷるんとした淡いピンク色の唇が小悪魔的に弧を描く。
「⋯⋯気付いてたなら言いなよ」
「平気。もう慣れちゃった。昔からだもん」
「⋯⋯⋯⋯」
確かに美猫は昔から発育がよく、中学生の時には既にそのスタイルは完成されていた。
むっちりと肉感的で、豊かな胸と程よく括れた腰、大きめの丸い尻から伸びる肉付きのいい脚がひどく扇情的で、男子学生の注目を引いていた。
だが、昔の彼女はそれを嫌がり、恥ずかしそうにしていた記憶がある。
「君⋯⋯少し変わったね」
「こんな私はイヤ?」
斜め下から無一郎を掬い見る美猫は色っぽく、魅惑的な顔をしていた。
この時の無一郎はこの問に答えられなかった。
映画を楽しんだ後はカフェで少し遅めのランチをし、予定通りそのままショピングをする事となった。
無一郎は美猫が楽しいのなら、一方的な買い物だっていくらでも付き合える。
だけどーー
「あ、これ無一郎に似合いそう」
とか、
「たまにはこういうのも着てみたら?似合いそうだよ」
とか言って、無一郎への気遣いも忘れないのだ。
美猫のそういうところは好きだ。だけど気になる事が一つ。
「買ってあげる」
満面の笑顔でそう言って、美猫は無一郎へ有名ブランドの腕時計とレザーコートを贈ってくれた。
さらには自分用のものもしっかり購入している。
「どうしてそんなにお金持ってるの?」
美猫は無一郎の自宅へ転がり込んでから働いている様子はない。
それでも“居候代”と称して初日に五万円を強引に押し付けられている。
美猫の年齢的に、普通に働いて毎月貯金に勤しんだとしても、そこまで貯金があるとは思えない。
「んー⋯言わなきゃダメ?」
美猫の言葉は歯切れが悪く、困ったように眉を下げて微笑う。
勘のいい無一郎は美猫の職種について、だいたい分かってしまった。
⋯⋯できれば気づきたくなかったが。無言で歩き出した無一郎に、美猫は小走りでついてきて、横に並んだ。
「こんな私は嫌い?」
そう問い掛ける美猫は微笑ってはいるが、瞳の奥はどこか必死な光が宿っている。
微笑っているのに、今にも泣き出しそうな表情が、無一郎の胸を締め付ける。
無一郎とて美猫にそんな顔をさせたいわけではない。
「そんな訳ないだろ」
心の奥底で複雑に渦巻く感情を押し殺して低い声で言うと、無一郎は隣を歩く美猫の手を強く握った。
