DEAR MY SWEET FOOL
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ーー2、foolish bargaining
美猫が無一郎の部屋へ転がり込んできて、二日が過ぎた頃。
無一郎は自室でパソコンに向き合っていた。
ハイレベルな将棋AI(人工知能)を搭載したソフトウェアを活用して、定跡研究や新たな戦法の開発に役立てているのだ。
休日は大体こうして過ごしている。
ふいに背後の扉が音もなく開いた。振り向かなくても分かる。美猫だ。
一応気配を消しているつもりなのだろう、そろそろと近づいて来る。
「ばあっ」
ぴょこんと顔を出すが、当然無一郎は驚かない。
「やっぱり驚かないか」
美猫はたいして残念でもなさそうに軽く笑って、無一郎の肩に顎を乗せるとパソコンの画面を覗き込んだ。
「何してるの?」
思わぬ至近距離。美猫の髪からシャンプーの香りがふわりと漂う。
それは無一郎と同じ香り。同じシャンプーを使っているのだから当然だが、少しだけドキリとした。
「見ればわかるでしょ」
「見たってわからん。将棋の研究ってことしか伝わってこない」
「そんなところだよ」
「ふぅん」
美猫は無一郎から離れると、ベッドへ腰掛けて無一郎が枕代わりに使っている羽根クッションを抱きしめた。
「えへへ。ふかふか」
気持ちよさそうに頬ずりをして、ふにゃりと微笑う美猫。
彼女ときたら何故こうもいちいち心臓に悪いのか。
「やめてくれない?」
無一郎は平静を装って、敢えてポーカーフェイスで素っ気なく言い放つ。
「何よぅ。ケチ」
美猫はむくれて、それでも素直にクッションを脇に置いた。
距離感こそおかしいが、意外に引き際はあっさりしているのが彼女の良い所だ。
「ねぇねぇ、無一郎」
「何?」
「それが終わったら、少し出掛けない?デートしようよ」
無一郎がちらりとそちらへ視線を向けると、澄んだ瞳がきらきらと期待に満ちて無一郎を見つめていた。
「今日はこれからジムへ行く予定だったんだけど」
「えー」
長時間の対局に耐えうる集中力と体力を維持するために、トレーニングも大事なのだ。
無一郎の返事に美猫はあからさまに残念そうにショボンと俯いて、子供っぽく唇を尖らせる。
本当に昔から感情表現が素直だな⋯⋯無一郎はクスッと軽やかに笑って、
「いいよ」
そう言うと。
「ほんとう!?」
美猫の表情がぱあっと華やいだ。
「ありがとう、時間作ってくれて。嬉しい」
先程の悲しそうな顔から一変して、無邪気に満面の笑顔で美猫は言った。
