DEAR MY SWEET FOOL
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無一郎はあれから酒のつまみに数品作った。特に細めに焼いたオムレツに生ハムを巻いて一口大に切り分け、バジルソースを掛けたつまみは、彼女の口に合ったようだ。
「美味しい。何かお洒落な味がする」
「それはよかった」
無一郎はブルーチーズに青リンゴジャムを添えたものをつまみに、白ワインを傾けた。
これはスワリングといって、ワインを空気に触れさせて酸化させ、香りを引き出し、味わいをまろやかにするのが目的だ。
クイッと一気に飲み干せば、キリッとした酸味が舌の上に広がり、果実や花やハーブの豊かな香りが鼻に抜けた。
「無一郎、呑みすぎじゃない?」
美猫の指摘通り、無一郎はアルコール度数の高い辛口のワインをハイペースで呑み続けていた。
羽目を外した美猫を嗜めるつもりだったが、逆に美猫を心配させてしまっている。
ローテーブルの前に座っていた美猫が膝立ちになりソファへ寄ってくる。
困った顔で可愛らしく眉を下げる美猫を見つめていると、やがて心地良い睡魔が押し寄せ、うとうと瞳を伏せる。
思いがけず好きな子と再会した喜びは、どうやら思いのほか無一郎を浮かれさせていたらしい。
ふと、間近に気配を感じて無一郎は目を覚ました。
吐息が触れるような至近距離、美猫の顔がある。
「⋯⋯顔が同じだったらいいってこと?」
「何のこと?」
「顔が同じなら、僕でも兄さんでもいいってこと?」
酷く投げやりな気分で問う。いつの間にか電気は消され、微かな窓灯りに部屋全体が蒼昏く沈んでいた。
「⋯⋯いじわる」
吐息は未だ近く、どちらかが動けば唇が触れ合いそうな距離。
美猫は悲しげに呟いた。
「女に恥かかせるなんて、最低」
美猫の声色が僅かに揺らぐ。半ば伏せられた瞳に涙の粒が浮かんで、それが微かな光を反射して綺麗に見えた。
抱きしめたい衝動をぐっと堪えて、離れようとする美猫の腕を冷静に掴んだ。
「どこ行く気?」
「もういい。帰る」
「こんな時間に帰せない」
「何よぅ。私のことなんか、どうでもいいくせに⋯っ」
ついにはぽろぽろと泣きだした美猫の後頭部に手を掛けて、無一郎は慎重に、そっと自身の肩口に引き寄せた。
「どうでもいいわけないだろ。君は⋯⋯」
本音を心の奥底へ押し隠して、ごく静かな声音で告げた。
「大切な幼馴染みだから」
