子猫のふりして虎は笑む
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『無一郎くんの匂いがする…
それに無一郎くんが着てたから…温かいな。』
「温かいならいい…」
『昔はよくお泊まりで無一郎くんの寝巻き借りたりして』
「兄さんと僕どっちのを借すかとか、ね」
昔話に花が咲くなんで言うものだが、冷静に明るく楽しげに話してる様に見せて
実は少し余裕がない無一郎。
それに反して無自覚、無邪気な那由朶。
何故こんなに逸るのか、胸の奥辺りに渦巻く何か。
真正面の位置が悪いのかと隣へ距離を置き座った無一郎。
そんな彼の気持ちを知らずに那由朶は近い場所へ腰を下ろした。
『だけど良かった、無一郎くんが昔を思い出してくれて。
こうやって小さい頃の話をまたできるなんて思わなかったな。』
「そうだね、でも…」
『あ、何?話逸らそうとして』
「そんな事…」
『そうかなぁ…何か誤魔化してない?』
トンっと肩に頭を預けて上目遣いで見てくる那由朶。
その振動は胸の奥まで届いて来た、また渦巻く感情を感じてはいけない気がして目を逸らした先は…伸ばされた足。
また胸へ響く振動、目を瞑ろうとした時こともあろうか膝を立てて抱えた那由朶。
「…那由朶の…馬鹿…」
『いきなりなぁに、馬鹿とは酷い』
「酷いのはどっちなの?
…無防備すぎるよ、〝那由朶〟」
肩を押してから那由朶をいとも簡単に床へと沈めた無一郎。
頬に流れてきた髪に自分が押した倒されたんだと分かった。
透明な薄浅葱の瞳が色を変えて、瓶覗き色…
目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、この瞳は…
やっと危機感を感じる那由朶。
「僕なら大丈夫だって思ってた?」
『大丈夫って…、どう言う意味、の』
「幼馴染だから、危機感が無いのかな。
小さい頃と今は…違うでしょ。」
手を伸ばし頬に触れればピクンと肩を揺らした那由朶。
じわじわ追い詰めていく感覚に少しの高揚感と優越感に似たこれは加虐心なのか。
「…可愛いなぁ、那由朶は…」
『…無一郎、くん』
「僕はいつまでも小さな男の子じゃないんだよ。
以前と変わらない優しいだけの幼馴染でもないし…」
『……ッ、』
頬をなぞって見れば小さく声を出して、身じろぎ耐える姿が可愛くも愛おしく。
柱である那由朶がこんな風に屈託なく笑い、健気で柔らかな性格である事は自分しか知らない。
「そう言う顔も、無邪気な所も
疑う事を知らない所も…
好きだよ」
交わした瞳が近付いて唇を無一郎が奪う。
『ん。っふ…』
始めて襲う感覚。滑り混む舌の熱。
奪われてゆく酸素。
伸ばし手のひらに押し倒迫る無一郎の広い胸。
全ての感覚に頭がショートして、おかしくなりそうだ。
この感覚前にも…
『ふ…ぁ。』
「…那由朶」
ただされるがままに身を任せながら、熱とともに体が宙に浮く様な感じを覚えて無一郎の声が段々遠くなる。
相手はやっぱり、柱と言う理由だけではなく。
いつの間に、彼は…
自分を呼ぶ無一郎の声を聴きながら、酸欠で眩暈を起こし、遂には意識を手放した那由朶。
「那由朶…?」
理性を暴走させた事での結果である。
予想外でいて、まさかの失敗。
けれど、組み敷いた下呆れる程に無防備な顔。
「絶えるしかない、の。」
気を失って寝てしまった那由朶を腕に抱えながら無一郎は言う。
彼女を包み込んで、冷めやらぬ熱にただただ耐えるしか無かった。
『ん…?
…、あ…れ?』
ドサッと言う音で目を開けてみれば、見慣れない天井が飛び込む。
そして頭の下にある腕。
辿った先に…自分を見つめる無一郎の顔が飛び込んできた。
抱き抱え覗き込む淡い薄浅葱の瞳。
『…!?』
「やっと起きた?」
『無一郎くん…』
「僕よりおねむだなんて…那由朶らしいけどね。」
そう言って身を起こした無一郎は隊服の上をちゃんと着てボタンもしっかり留めてある。
瞬時に那由朶は自分を見ると、自身も隊服を着ていた。
『ゆ…め?』
『夢か現実か…解んないの那由朶は。」
だって服着てる…と服を引っ張りながら訳が解らずにいる那由朶。
「乾いたから僕が着せた。」
『えっ、無一郎くんが?』
「...なに恥ずかしがってるの。
昔は一緒にお風呂に入ったでしょ。」
『6.7歳の頃じゃ無いの』
「…なんて、本当は理性が続かないから...
着せたんだけど。」
『……む、いち…』
那由朶の口を塞ぐ。自身の唇で。
「おあずけくらって…僕は凄く不機嫌。
昨日は失敗したけど。次はないから」
分かってるとばかりに覗き込むティールブルー。
離れていく無一郎くんの顔は…知っている様で知らない顔。
「次こそはくれるよね?
那由朶の全てを僕に…」
整った顔で笑う顔は、知っている。
幼馴染以前の無邪気な笑顔だった。
→お礼