比翼の鳥は碧に恋う
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーー2、逃げ出す小鳥
すっかり陽が傾き静寂に包まれた部屋の中で、かすみは無一郎に見下ろされる形で見つめ合っていた。
「僕は忠告したよね?」
「無一郎、放し……」
「外に出るなって。何度も、何度も」
「無一郎……」
此方を見据える淡い碧色の瞳は昏く沈み、奥底に強い怒りが揺らめいていた。
何とか手首の拘束を外そうともがいてみるが、ギリと骨張った指に力が籠もり、余計に外れなくなるだけだった。
「出ていくなら閉じ込めるし、逃げるなら僕から逃げられなくするだけだよ」
「貴方はそんな事しない。信じてるもの」
「バカだな。僕が今まで、どれだけ我慢してきたと思ってるの」
「我慢……?」
「ずっと君が好きだった」
「!」
不意に端正な顔が近付き、首筋に埋められる。
毛先が淡い碧色に透ける長い黒髪が纏わり、澄んだ香りが鼻腔を擽る。
「ずっと……思ってたんだ……」
囁く声音が、熱い吐息と共に首筋を擽り、かすみは思わず身を竦める。
「君のこと……滅茶苦茶にしてやりたいたいって。僕の腕の中で……思う様乱してやりたいって。……ずっと……」
かすみの両の手首が、無一郎の片手で難なく一括に纏め上げられ、もう片方の手が、鎖骨へ伸びる。
骨張った指が、愛でるようにゆっくりと鎖骨をなぞっていく。
「……いいよ」
鎖骨を滑っていた指先が、ピタリと止まる。
「無一郎の好きにして」
天井を眺めながらはっきりと言い放つと、身を起こした無一郎がかすみをじっと見つめる。
「…………。脅しで言ってるわけじゃないんだけど」
淡い碧色の瞳に明らかな怒りの色が浮かんでいた。
「私だって本気よ」
ちょっとした怒りが湧いて、挑むような瞳で答えるかすみ。
次の瞬間ーー
無一郎の唇が、かすみのそれにそっと重なった。