比翼の鳥は碧に恋う
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無一郎が女性を連れて帰ってきた。
とても綺麗な人だった。
紫色に艶めく少し癖を帯びた黒髪を、蝶の髪飾りで後ろですっきりと纏め上げた髪型。
キメの細かい白い肌、長い睫毛が縁取る菫色の大きな瞳が印象的な美貌。
華やかな羽織の下には無一郎とお揃いの黒い隊服を、完璧なスタイルで着こなしている。
上背の具合も、美形同士、無一郎と並べばまるで一枚の完成された絵画のようでーー
かすみの目には、二人は似合いの夫婦のように見えた。
ドクンーー心臓が厭な音を立てる。
「ただいま、かすみ」
「……おかえりなさい」
声は震えていないだろうか。笑顔は引き攣っていないだろうか。
心臓は相変わらず厭な音を立てている。
「…………。今朝はごめん」
「ううん。私も悪いから」
「これはお詫び」
「いいのに……」
「胡蝶さんにお茶を淹れてくれる?」
「分かった」
女性の方を見ると、にっこりと優しげな微笑みを向けられる。
居心地の悪さを感じながらも、かすみはぺこりと会釈をした。
「はじめまして。胡蝶しのぶと申します」
「はじめまして。かすみと申します」
互いに軽く自己紹介をしあった後、無一郎がしのぶを連れて客間へと入っていった。
台所でかすみは茶請けとして無一郎が買ってきた菓子の箱を開けた。
「あ……」
箱の中には美味しそうな練切が詰まっていた。
「前に好きって言ったの、覚えててくれたのかな……」
まさかね。色々な事すぐ忘れるって言っていたし。
苦笑して盆に茶と練切ののった皿を乗せ、かすみは客間を目指した。
「失礼します」
客間に入ると二人は和やかに会話を楽しんでいるようだった。
しのぶは勿論、無一郎の表情もどこか穏やかだ。
距離感も、何となく近いように見受けられる。……少なくとも自分たちよりは。
かすみといる時の無一郎は、いつもどこか気を張っているように見えた。
距離も彼は意識的にあまり此方に近付こうとしない。
……つまりは、そういう事なのだろう。
今にも溢れそうな感情に蓋をするように、かすみはゆっくりと瞳を伏せた。