比翼の鳥は碧に恋う
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一方、無一郎の方はといえば、柱合会議を終えても未だ苛立ちを抱えていた。
記憶障害の為いつもならすぐにでも忘れてしまうのだが、何故だか彼女に関する事だけは忘れる事はなかった。
彼女との出会いの記憶こそ曖昧だが、手の甲の傷を心配してハンカチを巻いてくれた事だけは覚えている。
これで大丈夫……と呟いた彼女は、少し寂しそうな笑い方をした。
その儚げな笑顔が、ずっと心に引っ掛かっていたのだ。
後日ハンカチを見て、一瞬「何だっけ、これ……?」と思ったものの、すぐに思い出す事が出来た。
ハンカチを返そうにも血で汚れてしまったので、綺麗なものを新調して、後日彼女へ会いに出掛けた。
心臓の鼓動がいつもよりも速い事に疑問を覚えながら、歩を進めると、彼女の姿を見つけた。
その姿がやけにしょんぼりと、落ち込んでいるように見えてーー思わずすぐさま後を追ったのだった。
「……ときと……」
神社で鬼に襲われそうな彼女を救って、
「と……とうく……」
見合いをすると聞かされて、許せなくてーー
「時透君」
不意に背後から耳元で囁かれ、ハッと意識が引き戻される。
「貴方が気配に気付かないなんて珍しい。何か愁い事ですか?」
声を掛けてきたのは胡蝶しのぶだった。
振り返ると、優しげな笑みを浮かべて静かに佇んでいる。
「別に……考え事をしていただけです。何か用ですか」
「はい。今日この後、何か用事はありますか?」
「特には」
「でしたらお家にお邪魔しても?」
「…………。どうしてですか」
「時透君の検診と……かすみさんの様子も気になります」
「…………」
「時透君」
「何ですか」
「あの方をどうするおつもりですか?」