比翼の鳥は碧に恋う
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朝食を済ませると、無一郎は早々に出掛ける身支度を始める。
朝の鍛練パート2だろうか、はたまた柱合会議とやらだろうか。
「休まないの?」
「今から柱合会議だから」
なるほど、会議の方かとひとり納得する。
「分かってると思うけど」
と前置きをして、玄関まで見送りにきたかすみの方を振り返る無一郎。
「屋敷の外には出ないで」
「出たらどうするの?」
「連れ戻すだけだよ」
「どうして連れ戻すの?」
「僕を怒らせたいの?」
「怒る事ないじゃない。いつも言うから、疑問に思っただけ」
「いまいち分かってないようだから、言っておくけど」
淡い碧色の瞳がすうっと細められ、不意に彼の片手が此方へと伸びてきて、かすみの頬に触れた。
その手は思っていたよりも大きく、夏だというのに妙に冷たかった。
「君は僕に拐かされたんだよ」
ひんやりとした手がゆっくりと頬を撫でる。
「そんなの……分かってる」
ぞくりとして、でも動揺を悟られたくなくて(恐らく気付かれてるだろうが)、平静を装って答えるが、
「だったら」
と無一郎は畳み掛けるように冷たく言い放った。
「自分の立場を弁えて行動しなよ」
無一郎が出ていって、かすみは全身から力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
怖かった……。
玄関の扉を閉める音が、ピシャンとやけに響いた気がする。
その音はかすみの耳に冷たく響いた。
それはまるでそのまま心まで閉ざされてしまった音のように感じたのだ。
「何よ……あんなに怒る事、ないじゃない」
不貞腐れたように呟くそれは、完全に寂しさの裏返しであった。
無一郎に連れ去られ、この屋敷へ連れてこられて数ヶ月が経つ。
当初は
しかしそれは
彼はかすみに何もしなかったし、必要なもの全てを買い与えてくれたのだ。
食事もきちんと与えてくれる。それどころか、仕事帰りに土産まで買って来てくれることすらあるのだ。
それらは全てかすみのためで。
無一郎がわからない。
彼は私をどうしたいのだろうか。
私に何を望んでるのだろうーー。