甘い君にプルメリアの花束を
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ーープロローグ
梢から零れて揺れる木漏れ日のように、限りなく純度の高い、透き通った笑みだった。
その笑顔は、今も鮮明に無一郎の目に、心に、灼き付いて離れないでいる。
当時は記憶障害があり、他人の存在は愚か自身の存在さえ心に希薄でただ通り過ぎていくだけの虚しいものであった無一郎の琴線に、それは確かに触れたのだ。
もともと笑顔とはいいものなのだろうが、他者の笑顔に“美しい”という感想を抱いたのは、これが初めての事だったように思う。
「はじめまして。西行寺翠雀と申します」
昔から代々続く公家の生まれである彼女が、実に上品な所作でお辞儀をする。
ゆっくりと身を起こした彼女が、再び微笑う。
長い髪が薄陽をきらきらと反射して、まるで天使の輪を頭に乗せているように見えた。
とても綺麗だった。
思えばこの頃から既に。
無一郎は彼女に心を奪われていたのかもしれない。
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