君と結わえるしのびごと
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二階は一階に比べ人が疎らで、特に音心達の通された席の周囲は
時間帯のせいもあるのだろうが……。
西洋風の内装と、ソファの柔らかな座り心地が落ち着かず、そわそわとしていると(因みにリボンは解いて貰った)、
「どうぞ」
白面に柔和な笑みを乗せて、胡蝶しのぶがメニューを手渡してきた。
手慣れた様子に内心で感嘆しながらそれを受け取り、目を通すが……。
「しのぶ様……分かりません」
何しろメニューの品の殆んどが西洋の料理と菓子と飲み物ばかり。
建物の外観と内装は伊達ではなかったようだ。
ぐるぐると目を回しながら音心が助けを求めると、胡蝶しのぶはクスッと笑って。
「そうですね……今日は貴女はお誕生日のようですから……“ショートケーキ”がお勧めですよ」
「しょーとけぇき……?」
どんな食べ物か、まるで想像できない。
「ええ。飲み物は温かい紅茶……でしょうか」
「………じゃあ、それにします」
了解とばかり胡蝶しのぶはにっこり微笑むと、店員を呼んで注文を済ませた。
待ち時間は特に会話もなく、胡蝶しのぶは窓の外を、音心は何となく胡蝶しのぶの髪飾りをぼんやりと眺めて過ごした。
そうして程なくして注文の品が運ばれてきた。
甘い香りと見たこともない可愛らしい見た目に胸が高鳴る。
「しのぶ様は何になさったんですか?」
「私はプリンアラモードを。飲み物は貴女と一緒です」
「そうなんですね……。素敵な香り……私、紅茶と洋菓子初めてです!」
「私もです」
「えっ、そうなんですか?」
「はい」
「………そうなんだ」
「同じですね」
「はいっ」
良い香りのするお茶だった。カップの中で陽射しに透けて紅く輝くそれは、花の香りのような、芳しさの中に甘さもある、そんな香りがした。
そしてーー
ショートケーキ。しっとりとした生地で苺とクリームをサンドし、表面を真っ白なクリームでデコレーションして大きな苺を乗せた見た目が、何とも可愛らしくてどきどきした。
「どうぞ」
胡蝶しのぶに促され、まずはお茶を口に含む。
ふわりと華やかな香りが口の中に広がり、程よい渋さが舌の上を通り過ぎると、後から仄かな甘みを感じられた。
「おいしい」
思わず口に出して、微笑んだ。
「それは良かったです」
胡蝶しのぶが微笑み返す。
次に音心はショートケーキにフォークを通した。
思った以上に柔らかい。一口分掬い上げて、口に運ぶと、次の瞬間音心は瞳を見開いた。
「すごい……美味しい……。しのぶ様、私こんなに美味しいもの、初めて食べました」
あまりの衝撃に半ば放心状態の音心。
すると、そんな彼女の前に、スッと一口分のプリンが乗ったスプーンが差し出される。
「………?」
意味が分からず、目の前の胡蝶しのぶを見やる音心に、胡蝶しのぶは、
「此方もどうぞ。さぁ、口を開けて下さい?」
なんてにこやかにのたまった。