君と結わえるしのびごと
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「あのー……、胡蝶様……。これは?」
ぎっしりと音がしそうなほどきつく繋がれた音心の右手としのぶの左手。
更にその手を覆うように何重にも巻かれ、結ばれた、淡い紫色のリボン。
結局あの後一瞬で追いつかれ、この有様である。
忙しなく行き交う人々は誰も気に留めないとはいえ、やはり気恥ずかしい。
なるべくリボンから視線を逸し、頬を真っ赤に火照らせて俯く音心の前、振り向かないまましのぶがぽつりと言った。
「罰ですよ。私から逃げようとした、これは罰です」
ぎゅつと元々繋がれていた手に、もう少しだけ力を込めて、握りこむ胡蝶しのぶ。
表情こそにこやかだが、どことなく怒っているようにも感じられて。
「逃げようだなんてそんなつもりは……。あの、あまり誂わないで下さい」
縋るように見上げる真っ赤に潤んだ瞳の端に、涙が滲んだ。
すると今度はしのぶが困ったように眉を下げる。
「そんな顔をしないで下さい。私は貴女を苛めたいわけではないです」
「あ………」
「せっかく一緒に出掛けているのですし、仲良くしましょう?」
「胡蝶様………」
「今日は無礼講です。柱だとか隊士だとか、そんな立場は抜きにして、思い切り楽しみましょう」
「………………。はいっ」
「やっと笑ってくれましたね。では、しのぶ、と」
「はい?」
「折角ですので、名前で呼んで下さい」
「えぇっ」
「無礼講ですから」
やんわりと、けれど断る事を赦さない雰囲気でしのぶが微笑む。
「し、……しのぶ様?」
恐る恐る上目遣い気味に伺う音心に、しのぶはどこか複雑そうに僅かに笑みを曇らせた。
「及第点といった処でしょうか」
流石に駄目だったかと焦っていると、しかし次には「まぁ、いいでしょう」といつもの優雅な笑みに戻り、
「さぁ、行きましょう」
音心の手を引いて店の方へと足を進めた。
そこは洒落た雰囲気の二階建て西欧建築の喫茶店で、中は開放的で落ち着いた空間となっていた。
二階のスペースは意外とこぢんまりとしているらしく、一階の半分は吹き抜け。
ダークブラウンの床や梁、壁は白く、シャンデリアの温かみのある光が全てを調和させて居心地の良さを感じさせる。
そうして音心達は二階の席へと案内されたのだった。