シュガーキャットの憂鬱
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突然、強い力で抱きしめられた。
柔らかな温もりに包まれて、ふわりと花のような甘い香りが鼻腔に触れて、くらくらとした。
「蜜璃様……?」
窺うように名を呼べば、ぎゅうっと更に力を込められて、思考が混乱する。
「私ーー」
肩に手を置いて少しだけ身を離し、蜜璃が微笑む。
「女の子同士の恋はまだよく分からないけれど、これだけはハッキリしてる事があるの」
「……何ですか?」
「音心ちゃんの気持ちはとっても嬉しいし、このままお別れなんて、絶対に嫌」
「…………」
「それにーー」
「それに?」
「私も音心ちゃんが大好きよ」
「…………。それは……」
きっと音心の抱える想いと蜜璃の想いは、ベクトルが違う。
そう言いかけた時だった。
ちゅっ……。
軽いリップノイズと共に蜜璃との距離がゼロになった。
その瞬間は時間が止まったような錯覚を覚えた。
蜜璃の顔が目の前にある。蜜璃の吐息を間近で感じて、それが意識の全てを支配して、周囲の音を消し去った。
一秒とほんの少しくらい。
触れ合う唇の感触に我に返って、
「え……」
距離を取ろうと身を離した瞬間、ぎゅっと手を握られる。
「音心ちゃん、大好きよ」
もう一度同じ事を言って、蜜璃は多幸感に満ちた笑顔を音心に向けた。
音心の瞳に、涙が溢れる。
「私も気付かないうちに、音心ちゃんに恋をしてたみたい。だって、ずっと一緒にいたいもの」
ほんのりとはにかむ蜜璃は目眩がするほど可愛らしかった。
ふいに蜜璃が音心の手を取って走り出した。
「え……、蜜璃様?」
「此処じゃ二人きりになれないわ。逃げちゃえ!」
周囲のじろじろとした視線を振り切るように、二人で駆け出す。
しっかりと繋がれた、蜜璃の手と音心の手。
この手が離れる事のないようにと願いを込めて、音心は蜜璃の手をぎゅっと強く握り返した。