シュガーキャットの憂鬱
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喫茶店でケーキと紅茶をご馳走になっての帰り道、伊黒と偶然遭遇した。
「音心ちゃん、ちょっとごめんね」
そう言って伊黒と二人、少し離れた所で会話を楽しんでんでいる。
ああ、と思う。
蜜璃が好き。この想い自体は、誰が何と言おうと悪い事だとは思わない。
人を好きになる想いに、女性も男性も年齢も立場も関係がない。
……けれど、蜜璃は違う。
彼女は同じ柱である伊黒に想いを寄せている。
それは多幸感に満ちた笑顔や、親愛に満ちた視線が物語っている。
だからこの想いは間違っている。
ーー身を引くべきだ。
程なくして戻って来た蜜璃に、音心は俯いたまま別れを告げた。
「継子の件ですが」
「!、うん」
「貴女様の継子にはなれません」
「え……」
「私の事は、忘れて下さい。今日は、本当に有り難うございました。……本当に、楽しかったです」
堪えていた涙が溢れそうになり、音心は踵を返して駆け出した。
「待って、音心ちゃん……!」
何も考えないようにした。たった今自身が言った言葉も、蜜璃の声も、周囲の視線も頭から追い払って、必死に走った。
「音心ちゃん!」
背後から手を掴まれて、足が止まった。
少し考えれば分かる事だった。一介の隊士が、柱から逃げ切れるはずがない。
「音心ちゃん、どうしたの?」
「……何でもありません」
「じゃあ、どうしてーー」
蜜璃が困惑の視線を向けるのが肩越しにも分かったが、どうしても振り向けなかった。
「どうして泣いてるの?」
涙が溢れて止まらなくて。
「蜜璃様……」
「!、何かしら?」
「私ーー、蜜璃様の事が好きなんです」
「え……」
だったら壊してしまおう。何もかも。
「おかしいですよね。女性同士なのに、こんな……」
自分自身の言葉なのに、言葉にしているのが嘘みたいで、どこか現実味が沸かなかった。
蜜璃は何も言わない。ただ目を瞠って絶句していた。
……当然だろう。
「ご迷惑なのは承知しています。二度と貴女様には接触しません。だからーー私の事は、忘れて下さい」
想いを伝えてしまったからには、それは蜜璃との決別を意味する。
現実味が沸かないまま、空っぽの笑顔を浮かべて音心は言った。
「蛇柱様とお幸せに」