シュガーキャットの憂鬱
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その夜蜜璃は気合を入れて次の日の準備をしていた。
明日は音心の時間を一日貰い、お出掛けに誘ってみたのだ。
最初は断られたが、どうしても先日の礼がしたいと食い下がったところ、漸く首を縦に振ってくれたのである。
目標は二つ。
一つは名前で呼んでもらう事。そしてもう一つは、継子になってもらう事だ。
明日は音心の誕生日だと、人伝に聞いた。
是非ともお祝いしたいと思った。
明日はあのお店で朝ご飯を食べて、あのお店で洋服や髪飾りを見て、あのお店でお茶をして……素敵な贈り物もしたいな。
明日は何着て行こう?
音心ちゃんはどんな格好で来るかしら?
明日はーー
素敵な日に、なるといいな。
明日に思いを馳せながら、蜜璃は静かに眠りについた。
翌日音心は精一杯お洒落をして出掛けた。
だがそれも、蜜璃を前には霞んでしまった(気のせい)。
蜜璃は程よい艶を帯びた白い綸子の着物を着ていて、鞠と組紐、桜の柄が美しい。
小花柄の伊達衿と薄紅色の半衿でアクセントを持たせている。
薄鶸色の帯に萌黄色の帯揚げ、丸組の華やかな正絹帯締めで締めている。
髪型は平生通りであったが、真珠や菫の花飾りが美しい銀製の簪が、綺麗な髪に映えていた。
美しい……。あまりの眩しさに目を眇める。
「今日の音心ちゃん、とっても可愛いわ!」
「え……?」
思い掛けず褒められて、音心は目を丸くする。
「その着物、とっても似合ってるわ!それに帯に猫の刺繍のワンポイントがあるのね。羽織ととっても合ってるわ!」
「有り難う……ございます」
「猫が好きなのね、素敵だわ!」
きらきらと澄んだ瞳で絶賛されて、照れくさくなる。
ほんのりとはにかんだ笑顔を見せる音心に、蜜璃はキュンとしたようで、
「行きましょ、今日はたくさんご馳走しちゃう!」
「え……」
「音心ちゃんのお誕生日だものね」
「どうして、知って……」
「行きましょ、行きましょ」
音心の手を引いて歩き出す蜜璃は、本当に楽しそうで、可愛らしくて。
揺らぎそうになる決意を、瞳を伏せて押さえ込んだ。