黄昏恋々
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木のてっぺんにしがみついたまま、実紅の頬が真っ赤に染まる。
「だって……!それは、錆兎兄様が……あんな事を………するから………」
木の幹に寄り添って顔を隠すようにしながら「どんな顔をしていいか、分からないんだもの……」と呟く実紅は、耳まで真っ赤で。
その様が酷く愛らしくて愛おしくて、錆兎はふわりと表情を和らげた。
「実紅」
出来る限り優しく、穏やかな声音でその名を呼べば、木の幹から少しだけ顔をずらして此方を伺う彼女。
「昨夜は悪かった。酷い事をした………怖かっただろう?」
「………っ、凄く怖かった……!」
「本当にすまなかった。もうしない。お前の嫌がるような事は、二度としないと誓う。だから………」
「錆兎兄様は………」
涙声に顔を上げると、実紅は泣いていた。
その様にズキンと胸の奥が鈍い痛みを訴える。
「錆兎兄様は、私の事………ちゃんと好き?」
問い掛けに錆兎はいったん瞳を伏せた。そうして八年越しの想いを胸に、慎重に口を開く。
「愛している。ずっと前からーー気が遠くなるほどの間、お前だけをずっと想っていた」
実紅に向かって、スッと両腕を広げ、
「来い、実紅。もしお前に、俺の想いを受け入れる覚悟があるのなら」
真剣な眼差しで、真摯な態度で訴える。
実紅の瞳が涙で潤み、溢れてそれはぽろぽろと零れだす。
………泣いてる場合じゃない。きゅっと寝間着の袖で涙を拭い、実紅は錆兎の胸へと飛び込んだ。
「錆兎兄様……!」
腕の中へ飛び込んで来た愛しい彼女を、錆兎は力強く受け止め抱きしめた。
暫くはそのまま。やがて少しだけ身を離すと、お互いに鼻先が触れる至近距離で秘密を共有するみたいに囁き合う。
「錆兎兄様……」
「兄様はよせ」
「はい……。錆兎様」
「何だ」
「愛しています」
「ああ。俺もだ」
二人微笑みを交わし、実紅が瞳を伏せたのを合図に、錆兎の唇がゆっくりと実紅のそれに重なった。
一方、帰宅した冨岡義勇は遠巻きにそれを目撃(決してわざとではない)。
「他所でやってくれ……」
この後、人の家の庭で何をしている、そういう事は自分達の家でしろと、錆兎と実紅二人揃って義勇に説教されるのは、また別のお話。